一滴の揺心(未完)***
おやすみなさい、の先にあるものなんか知らなかった。おやすみなさい、を言う相手もいなかったしそれを口にしたところで返してくれる人もいなかったからだ。
だから。
「おやすみなさい」
そう口にした後に、おやすみ、という言葉と共に額に唇が押し当てられることがこんなにも。
ベッド端に座った俺の前に立つブラッドさまのその。額の髪をかき上げる手が。押し当てられた唇が離れてしまうことが。
「・・・物欲しそうな顔をしているな」
唇が離れてブラッドさまが小さく笑うようにそう言うので、顔が熱くなった。
その唇を。唇に欲しいと思う。
なのにブラッドさまの唇は今度は左の頬に触れた。唇の後に頬と頬が重なる。柔らかくしっとりと重なってそのまま手を伸ばしたくなる。
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