大魔道士は追いかけたい オマケ02 カールの城のとある一室にて。二人の大魔道士が将来の王配である先代の勇者に立ち向かう。
「よぉし、アバン約束だ殴らせろ」
「ほい、師匠。おれのブラックロッドMARK-Ⅱ、貸してやるよ」
「ポ、ポップ?」
一度は折れたブラックロッドだが、またポップのところに戻ってきてしかも再生していたらしい。なお、ロン・ベルクには一度折れたことも報告済みである。大魔王の奥義を破るために殴りつけたと伝えたところ大爆笑したそうな。
「ポップ、これいいな。無制限の理力の杖か」
ロッドに魔法力をこめながらマトリフが確認する。
「マトリフ…?ほら、あのこういう勇者とその仲間の殴る分かった的な流れって熱い絆の物語であって命の危険を感じる類ではないですよね?」
壁に追い詰められながらアバンは抗弁する。
「そうなのか、ポップ」
「オレは素手で殴るつもり。バイキルトでブーストするけど」
「だ、そうだ」
ポップはすでに簡易結界を張り、アバンが逃げられないようにしている。
「まってくださいポップ、さすがにマトリフの全魔法力で殴られると私も危ないです」
「先生、おれは師匠と約束したんです。先生を殴りに行くのに付き合う、だから俺がダイを殴りにいくために師匠も付き合ってくれるって」
「なるほど、大魔道士たちがそれぞれの勇者を殴るために同盟を結んだってことですか。ではこうしましょう、私もポップがダイ君を探すために全力でバックアップしましょう!だからマトリフを止めてくださいポップ」
マトリフが動きを止めて問う。
「それはアバン個人としてか?」
「カ、カール王国のバックアップも取り付けるようにしますから!」
「よし、”今は”やめておいてやる」
マトリフは魔法力を消し、ポップにブラックロッドを返してやった。
「わーい、師匠さっすがー!」
マトリフの手をたたいて喜ぶポップを見て、アバンは「最初からそのつもりでしたか」「そもそも私もそのつもりでしたけど」「知っててポップの気を少しでも軽くするために言質をとりにきたんでしょうけど」「甘くなりましたね」とブツブツ呟く。
「なんだアバン?」
「あ、先生。順番が変わるだけで、おれがダイを殴った後は、おれも師匠を止めないから!」
まぁマトリフが長生きする気になったのは良いことですね、と。これは口に出さずにアバンは張り付いた笑顔を浮かべた。