[大キライ]「おい、起きろって。狛枝」
「ちゃんと聞こえてるか?」
今日も今日とてキミは、ボクを起こすので精一杯。ボクの寝起きは最悪だ。それ故に態度も最悪だ。
だから、つい、悪態が出てしまう。
[うるさいなあ…それより、今日もヘルシーメニューは勘弁してよ?木曜日はトーストって約束してるんだから]
一音づつ紡いで、違和感。同時に、日向クンの表情も心配を孕みつつ安堵したような、あどけない笑みに変わった。
「良かった。聞こえてるんだな」
「はぁ?」
「座って待っててくれ、苗木に報告してくる」
そう言うとすぐさま日向クンは機関支給のケータイを取り出して、いそいそと苗木クンにボクのことを話していた。
同じ空間で進行していく会話に割って入ったりことなんてしなかった。…それは、当たり前のことだけどそうじゃない。
ボクが電話で会話することができないと、話を聞いててわかったから。よかった、耳が聞こえるままで。日向クンが心配そうにボクの様子を伺いながら話してるけど、キミならわかるでしょ?ボクがすぐ気づいちゃうことも。だからここで苗木クンにかけたんでしょ?
ボクの前置きはそろそろ置いといて…結論から言うとボクはどうやら、言葉が発せなくなったらしい。
***
日向クン達の会話を聞きながら気づいたこと。自分が声を発せない状態だと把握した。それから、話し声を聞いてるうちに目が覚めてきたこと。
「しばらくは黙食かあ」
丁寧に手を合わせた、いただきますのポーズ。高校生の頃から、やや渋い癖があるのは変わっていない。