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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
    無断転載禁止。

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    二人は人前で仕事のこと以外喋っているのか問題。
    二人きりの時にしか喋らないのか案外そうでもないのか…。
    ちょっとすけべです。
    800文字チャレンジ5日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ありがとう(おしゃべりはベッドの中で)「あなたたちって、本当に何も喋らないのね。あ、私とじゃなくて、あなたたち二人きりの時の話」
     花城はそう言うと、出島のカフェテリアの中でレモンティーを傾けた。もう底に甘ったるい砂糖が残っているだけで、後はほとんどが水だ。俺はそんな上司の言葉を受けて、彼女の買い物に付き合ったことにやや後悔した。狡噛も同じだっただろう。仕事があるからと来なかった須郷だけが、このややこしい状況から逃れられたのだから羨ましい。
    「女の買い物に言葉は必要か?」
    「違うわよ、あなたたちが二人きりで何も喋らないのが問題ってこと! 良いカップルカウンセラーを紹介しましょうか? 解決するかも」
     狡噛はそんなやりとりを花城として、苦い顔になってコーヒーを飲み干した。ここでは大分時間を潰した。そろそろ官舎に戻る時間だ。まぁ、そんなわけで、俺たちは部屋に戻った、のだが。

    (……確かに、こう長いこと付き合っていると話すこともない)
     今日も夕食を共にとって、そこでもあまり喋らなくて、風呂に入ってセックスをして、そこではあれーー驚くほど喋っている。そこがいいとか、駄目だとか、今日はこれをしようだとか、痛い、気持ちいい、それから愛しているとか。だがそれらは全部夜の帳に消えて、花城には見えないのだ。残念ながら。
     そんなことを考えて、俺は無言で狡噛を見た。彼はやはり無言でテイクアウトしたエビのチリソース炒めを食べていて、この夜初めて「辛いな」と言葉を発した。これは珍しい言葉だ。花城と共にいたカフェテリア以来だ。俺はそんないつもとは違う彼の言葉が嬉しくて、狡噛もきっと二人の間に言葉がないと言われたことを気にしているのだと思って、笑ってしまった。狡噛も彼女の気まぐれな助言を気にすることもあるのかと、あの女傑が怖いこともあるのかと。
    「確かに。今日お前のを咥えたら痛いかもしれないな」
     俺はそんなことを言って、「喋ることがないからってそれはないだろう……」と頭を抱える狡噛を見た。そして視線が合ってキスをして、確かに唇がぴりぴりすると考え、それから紙パックや箸も狡噛の分もゴミ箱に入れ礼を言われた。
     花城の言葉は少しも気にしていない。こうやって言葉以上のことはしているから。けれどセラピーを受けるのもいいかもしれない。彼女の言葉一つでいつもよりキスが一つ増えたんだから、専門家の力を得れば、もっと彼に触れられるかもしれないから。俺はそんなことを思って、もう一度ダイニングに戻り狡噛にキスをした。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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