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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    征陸さんのセーフハウスを出る狡噛さんが、あかねちゃんに書いた手紙のこととか、宜野座さんのこととかを思い出すお話。
    800文字チャレンジ23日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    最後の言い訳(愛してる) ギノに手紙は書かなかった。彼に迷惑はかけられないと思った。これ以上、彼を俺の人生に巻き込んではならないと思った。常守に手紙を書いたのは、彼女が俺に夢を見ているところがあったからだ。俺は刑事ごっこが最後までしたかった。佐々山のようになりたかった。その遊びをするにはギノじゃなく、常守が適任だった。それだけだ。彼女は俺を恨むだろう。秘密を握らされて、それを皆に告白する時俺を恨むに違いない。俺とギノの仲を彼女は察しているから、ギノに伝える時も苦しいだろう。けれど彼女なら耐えられる。俺はそう思って、あのセンチメンタルな手紙を書いた。
     バイクに乗りセーフハウスを出ると、妙に凪いだ気分だった。風は頬を撫でてゆくし、それは冷たいのだけれど、槙島との決着が迫っていることに、俺は終わりを感じていた。この事件が終わったら、きっと俺は処分されてしまうだろう。自分の色相が濁っていることも分かっている。人を殺そうと決めてしまったら、もう元には戻れないことくらい、一般市民でも知っている。でも、俺は槙島を、自分の双子のようなあの男を殺さねばならなかった。
     バイクでハイパーオーツ畑に近づく、狭い道を走る。林の中は薄暗く、少し寒かった。告白してしまうと、ギノには別れの手紙が、全てが終わった数日後に届くようになっている。システムがちゃんと作動するかは分からないが、彼が監視官である限りは、あのメッセージはちゃんと伝わるだろう。ギノには監視官でい続けてもらわなくてはならない。俺に汚されてはならない。厚生省を目指して、学生時代のように野心を持っていて欲しい。そしてこの国で幸せに暮らしてほしい。潜在犯の息子というラベルを剥がして、宜野座伸元として。
     なぁ、ギノ、愛しているよ。俺はお前を愛しているよ。ギノは俺をどう思っているのかはもう分からないけれど、心の通じないセックスばかりしてきたけれど、今ではそれすら愛おしい。なぁギノ、言い訳になるかもしれないけれど言わせてくれ。愛していると、誰よりも、誰よりも愛していると。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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    TRAINING学生時代の狡噛さんと宜野座さんのラブレターにまつわるお話。
    800文字チャレンジ9日目。
    手紙(ラブレター) 狡噛は変にアナクロなところがある男だった。授業はほとんど重ならなかったが、教師の講釈をタブレットにまとめるでなくノートに書き写したり、そして今ではほとんど見ない小説を読んでいたり。だからからなのか、狡噛にかぶれた少女たちは、彼と同じ本を読みたがった。そしてその本に感化された少女たちは、狡噛に手紙を書くのだった。愛しています、好きです、そんな簡単な、けれど想いを込めたラブレターを書くのだった。狡噛の靴箱には、いつだってラブレターが詰まっていた。俺はそれに胸を痛めながら、彼が学生鞄にそれを入れるのをじっと見た。そしてその手紙はどこに行くのだろうかと、俺は思うのだった。
     彼の同級生がいたずらを思いついたのは、狡噛があまりにもラブレターをもらっていたからだろう。ラブレターで狡噛を呼び出して、待ちぼうけさせてやろう、という馬鹿ないじめだった。全国一位の男には敵わないから、せめてそんな男でも手に入れられないものがあることを教えてやる、ということなのだろう。俺は話を聞いても、それを狡噛には伝えなかった。ただ俺は狡噛が傷つくとどうなるのか少し気になった。そんなこと、どうでも良いことなのに。
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    TRAINING美佳ちゃんが煙草の香りに思うこと。
    宜野座さんと狡噛さんはちょろっと出演で気持ち常霜です。
    800文字チャレンジ18日目。
    見かえしてやるんだわ(煙草の香り) 私が公安局に勤め出した時、歳は二十にもならなかった。桜霜学園の教育方針に半ばか逆らうようにして公安局入りした私を守ってくれる人などは誰もいなかった。伝説の事件を解決した先輩とはソリが合わず、かといって移動するわけにもいかず、私は自分が埋もれてゆく気がした。でもそれよりも私を揺さぶったのは、一人の男の存在だった。
     彼の名前は宜野座伸元という。以前は私と同じ監視官をして、先輩が解決した事件で執行官堕ちした人間。ずいぶん優秀だったのよ、とは二係の青柳監視官の言だが、彼女は宜野座さんと同期というから信用はならない。ただ、多くの猟犬を一人でコントロールして、一人も死なせなかったというのは、私の興味を引いた。私はその頃の宜野座伸元の日誌を読むことにした。別に先輩に言う話でもないし、宜野座さんに許可を取るものでもないから、無断で読んだ。そこにはいつもより厳しい、私の前でいつも笑っている彼とは違う、苛烈な男の人生が描かれていた。
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    TRAINING征陸さんのセーフハウスを出る狡噛さんが、あかねちゃんに書いた手紙のこととか、宜野座さんのこととかを思い出すお話。
    800文字チャレンジ23日目。
    最後の言い訳(愛してる) ギノに手紙は書かなかった。彼に迷惑はかけられないと思った。これ以上、彼を俺の人生に巻き込んではならないと思った。常守に手紙を書いたのは、彼女が俺に夢を見ているところがあったからだ。俺は刑事ごっこが最後までしたかった。佐々山のようになりたかった。その遊びをするにはギノじゃなく、常守が適任だった。それだけだ。彼女は俺を恨むだろう。秘密を握らされて、それを皆に告白する時俺を恨むに違いない。俺とギノの仲を彼女は察しているから、ギノに伝える時も苦しいだろう。けれど彼女なら耐えられる。俺はそう思って、あのセンチメンタルな手紙を書いた。
     バイクに乗りセーフハウスを出ると、妙に凪いだ気分だった。風は頬を撫でてゆくし、それは冷たいのだけれど、槙島との決着が迫っていることに、俺は終わりを感じていた。この事件が終わったら、きっと俺は処分されてしまうだろう。自分の色相が濁っていることも分かっている。人を殺そうと決めてしまったら、もう元には戻れないことくらい、一般市民でも知っている。でも、俺は槙島を、自分の双子のようなあの男を殺さねばならなかった。
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