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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    着飾った花城さんと狡噛さんのお話。
    800文字チャレンジ63日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    彼のネクタイ彼女のルージュ 狡噛と花城がパーティーに潜入捜査した。いつもは俺と須郷や、俺と狡噛の組み合わせなのに、どうしても男女カップルでないといけない集まりだったので司令塔の花城が手を挙げたのだが、仕事が終わってバンに戻って来た二人は、どうしても他人同士には見えなかった。狡噛は太い首を花城が見立てたネクタイで締めていて、花城はいつもより濃い色をした赤いルージュを唇に引いていた。まつ毛も長く伸びて、胸元には何重にも重ねられたネックレスがある。腕には宝石の埋め込まれた(実は盗聴器である)ブレスレットがあり、狡噛のカフスも盗聴器になっている。二人が側に立っていることで干渉しはしないか心配だったがそうはならなかった。今はただ、顔のいい男と女が狭苦しい空間にいる。
    「空振りだったわね。いつもより着飾ったのに馬鹿みたい。ヒールも窮屈」
     花城は須郷に手渡されたミネラルウォーターを開けて、唇をすぼめてそれを飲んだ。マットなルージュにしずくが散る。それは美しく、だが次にミネラルウォーターを投げられた狡噛も勝るとも劣らず美しかった。野生的な筋肉が、美しく仕立てられたスーツをまとっているから、ハーレクインの表紙のワイルドな王子のようだった。
    「このまま帰る? それとも須郷と宜野座も着替えてどこか店に行く? あー、全然飲み足りないわ。次の作戦を考えましょうよ。とびきりに綺麗な夜景を見ながら」
     花城はヒールを脱いでそんなことを言った。狡噛は何も言わない。俺も須郷も。すると彼女はそれを否定と受け取ったのか、どこでもちゃんと仕事はするわよと、そんなふうにすねてみせた。あんまり恋人がかっこよかったから見惚れていたとは言えない。あんまり上司が美しかったから見惚れていたとは言えない。そんな二人が並んで、少し興奮したとは言えない。言えないことだらけだが、俺はどうにかして三人で潜入操作ができたら良かったのに、と思った。きらめくシャンデリアの下で二人をみたいだななんて、ちょっと都合が良すぎるだろうか。
     その時、狡噛が俺に耳打ちをした。
    「俺に見惚れるのもそこそこにしといてくれよ。これからまだ仕事なんだからさ」
     ふざけた言葉だったが、俺は見通された気がして何も言えなかった。そして彼を飾り立てた花城に少しの嫉妬と感謝をして、自分の恋人が美しく着飾っているのを眺めた。仕事が空振りになって悔しいはずなのに、俺は彼が美しくて何も言えなかった。絶対に誰にも言えないけれど、絶対に自分の記憶にも残したくはないけれど。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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