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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    ヤキモチを焼く宜野座さん。
    800文字チャレンジ66日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ヤキモチ(恋人の立場では) 狡噛は無愛想だが女性人気は高い。あんなヤニくさい男の何がいいのか俺には分からないが、外務省に来てからというもの、告白されたりデートの誘いを受けているのを散々目にしたから、きっとここ出島では彼はモテる体質なのだろう。かくいう俺はさっぱりだった。元々モテた試しがないが、誰かから誘いを受けることもない。別に嫉妬はしていない。狡噛はああ見えて繊細で忠実な性格だから、俺以外にその身を許すことはない。心ももちろん許さない。でも俺はやはり彼が告白されているのを見つけてしまうとイライラするし、それは学生時代の青臭い自分のようで嫌だった。告白されるのは狡噛が悪いんじゃない。彼がその、かっこいいからいけないのだ、多分。
     
    「今日も熱烈な誘いを受けてたみたいじゃないか。一人くらい情けをかけてやればいいのに」
     隣の席に座りながら、コンピュータをいじりながら狡噛に話しかける。彼だっていい迷惑だろうに、今日はどうも癇癪を起こしそうというか、虫のいどころが悪かった。一人くらい情けをかけてデートをして、そしてどうなる? 大人の関係に進むのか? 俺って長年のパートナーがいるのに不誠実じゃないか?
    「あれは賭けだぜ、ギノ。誰が珍しい行動課の男を引っ掛けられるかの賭け。お前は標的にされなくて良かったな。多分花城の差金だろうが……」
     俺はその言葉に驚いてしまって、というかここの職員は何でも賭けにつなげるなと笑ってしまって、危うくタイプミスをするところだった。でもなぜそれに狡噛が選ばれたのだろう。一番引っかかりにくそうだったからだろうか? それとも単純に女性人気が高かったからか?
    「そう、か……。お前も災難だな。俺もお前の好物を聞かれて災難だが」
    「煙草って答えといてくれよ。女はすぐに甘いものをプレゼントしたがるから……」
     俺たちはそんなふうに笑って一日を過ごした。過ごそうとしたのだが、狡噛はそこで終わらせなかった。
    「パートナーがいるって言ったら一発で終わるんだろうが興醒めだろう? それに隠れてこういうふうに喋るのも楽しいしな」
     狡噛が俺の腕をさする。熱が上がる。俺はもう何も言えなくなって、やり手の恋人の台詞に愛しさを感じて、もう挑発するのはやめようと思ったのだった。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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