告白(君に誓うこと) 彼に思いを告げた時、いったいどんな言葉を使ったのかは覚えてはいない。ただ冷たいエアコンの風や、窓越しに差し込む夏の日差しや、誰もいない理科室に響く水滴や、握った手の熱さだけは今でもきちんと覚えている。
俺がギノに恋をしたのは、多分運命なんだと思う。今まで誰も好きになったことなんてなかったから。誰かに告白されても、全然心は動かなかったから。美しいもの、可愛らしいもの、信頼や、友情のようなもの、それらは全て俺を動かさなかった。そんな尊大な俺を動かしたのは、ギノの涙だった。俺たちが友達だろうと言った時に頬を流れた一筋の涙が、彼を加なしませたのか喜ばせたのか分からないが、あの涙が、俺を変えてしまったのだった。
日本に帰ってすぐ、俺はまた彼に告白することとなった。でもそれはあの頃の純粋さとは違って打算があって、元鞘に戻れやしないかと、彼の心をまた自分のものに出来やしないかとそんな思いがあった。けれど彼はすぐに頷かなかった。その代わりに彼は泣いて、「本当に?」と尋ねたのだった。
俺は何も言えなかった。彼はこと仕事以外において俺を疑わなかったから、今度も文句は言ってもすぐに受け入れてくれると思った。けれど違ったのだ、俺は彼をそんなふうにしてしまった自分を後悔し、そして彼をどうにかしてまた手に入れられないかと強く抱きしめた。
「愛してる、好きなんだ、二度と離れたくない、もう置いていかない、だから俺を受け入れてくれ、ギノ、愛してるんだ」
最初の告白とは全く違ってしまったそれに、しばらくして彼は笑った。俺が弱い男になってしまったことを彼は笑った。熱い手のひらが背中をさする。俺より少しだけ背が高い彼は、優しく腰をかがめてキスをしてくれた。それが彼の答えだった。俺の告白に対する、彼の慈愛に満ちた答えだったのだ。そしてそれを受けた俺は、彼をもう二度と手放さないと、心の内で誓ったのだった。