瞳と独白 狡噛の目は美しい、しかしどう美しいのかについて語る術を俺は持たない。彼は単純に美しい目をしていて、それはDNA上の問題でしかない気がした。例えば猛禽類の瞳の色、狼の瞳の色、そんな狩りをする動物の色と同じだと例えでもすれば伝わるのかもしれないが、彼の目が持つ美しさについて俺はそんな陳腐な言葉を使いたくなかった。狡噛の目は美しい、それでいいのではないか、彼を愛しているから理由が欲しいのかもしれないが、ただ美しい、それだけでいいではないか。俺はそう思ってその美しい瞳を閉じた狡噛のまぶたを撫でる。そのふれた指が彼の瞳の美しさを自分に伝えている気がした。狡噛は笑うかも知れない。けれど彼の目の美しさは、誰にも奪えないものなのだ。と、そこまで考えて、セクシーな女が彼の目を宝石に喩えるなら許せるかもしれない、ふと俺はそう思った。