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    firesday522

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    firesday522

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    リクエスト頂いたケンカのち仲直り🍑❄の続きです

    ケンカのち仲直りモモユキ続き 万理の言葉に背を押され、百の住むマンションの前までやって来た。電子キーの番号も知っているしディンブルキーも貰っている。だがどうぢても部屋まで行く勇気が出ずに、かれこれ10分ほど千はエレベーターの前で立ち尽くしていた。当然防犯カメラに姿が映っているだろうから、そろそろ管理人か警備員辺りに不審に思われているかもしれない。
     勢い任せでここまで来たはいいが、百が帰宅しているか確認もしていない。先にラビチャを送っておけば良かった、と今更ながらに後悔する。
     とにかく部屋の前まで行ってみて、不在だったらまた考えよう。そう決めてエレベーターのボタンを押すのと同時に、背後から聞き慣れた声がした。
    「あれっ? ユキ?」
    「モモ!」
     振り向くとそこには大きな目を更に見開いた相方の姿があった。
    「もしかして、ここでずっと待ってたの? ラビチャしてくれれば良かったのに」
     表情も声音もいつも通りで、ホッとしたせいか肩から力が抜ける。
    「行ってもいいか、分からなかったから……ここで上に行こうか迷ってた」
    「いいに決まってるよ! こんなとこにずっといて、寒かったんじゃない?」
     温かい手が、そっと千の指を包み込む。
    「ほら、こんなに冷えてる。早く部屋に行こう」
     触れ合ったところから伝わる体温が嬉しくて、ぎゅっと握り返した。指を絡めあったまま、降りて来たエレベータの籠に乗り込んだ。
     久しぶりに百が隣にいる。怒らないで、優しくしてくれる。ただそれだけで、ここ数日ぽっかりと心に開いたままの穴は、すっかり塞がってしまったかのようだ。
    「お邪魔します」
     小さくそう言ってから、靴を脱いだ。繋いだ手は、ドアのカギを開ける時に離れてしまったけれど、部屋に着いたらまた触れてもいいだろうか。そんなことを考えながら、百の後ろについて短い廊下を歩く。
    「座ってて。何かあったかい飲み物持って来るから。あ、それともアルコールの方がいい?」
     キッチンへ向かおうとする百の腕を、咄嗟に掴んでいた。
    「どっちも要らないから、話聞いてくれる?」
    「……うん」
     百は何か言いたげだったが、おとなしくソファに座ってくれた。
    「こないだのことなら」
    「ごめん!」
     少し困ったよう表情で先に口を開いた百の言葉を、千の声が遮る。
    「あれは嘘だから」
    「嘘って……え?」
    「本気でモモが下手だって思ってた訳じゃないから」
    「……本当に?」
    「本当だよ」
     聞き返した百の顔には、疑わしげな表情が浮かんでいる。
    「お前ばっかり余裕あるみたいで、面白くなくて、つい」
    「つい本心が出たとかじゃなく」
    「逆だよ。思ってもいない言葉が出た」
    「はあーっ」
     言葉と一緒に大きく息を吐き出し、百は力が抜けたといった様子で千の肩に凭れかかった。
    「本当は結構傷ついてた?」
    「当たり前だろ! 千は下手なんて言われたことないだろうから、分からないかもしれないけど。男のコはデリケートなんですぞ」
     先刻まで重く感じていた部屋の空気まで和らいだようで、今は二人きりでこの空間にいることが心地よく感じられる。
    「本当にごめん。モモは下手じゃないよ」
    「オレに、その……されるの、嫌じゃない?」
    「モモに触ってもらえるのは、いつでも嬉しいよ」
    「良かったあ」
     ふにゃっと笑った百に愛おしさが込み上げて、隣合って座った無理な体勢でぎゅっと抱きしめる。
    「僕の機嫌を取るのが世界一上手いのはモモだし、僕のこと世界一気持ち良くできるのもモモだよ」
     顔を見られたくなくて百の肩口に顔を伏せたまま、素直な気持ちを口にした。
    「ユキ……」
     感激のあまりか、ぷるぷる震えているのが触れ合った部分から伝わって来て、思わず笑みが零れる。
     (なんだ、素直に気持ちを伝えたら、モモはこんなに喜んでくれるんだ。少し恥ずかしいけど、偶には素直になるのも悪くないかもしれない。)
    「モモとするの、好きだし、ちゃんと気持ちいいから」
     そう伝えた直後、少しサービスが過ぎた言葉に感動を通り越して激情に駆られた百の行動に、千は後悔することになるのだが、それはまた別のお話。
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