誕生日の話「ええっ! 何でいるの?」
仕事を終えて一人暮らしの部屋に帰宅した午後11時30分。リビングに足を踏み入れての第一声がこれである。
ここにいる筈のない相方がバスローブ姿でソファで安らかな寝息を立てているのだから、そう言いたくなるのも当然だろう。
もしかしたら千に会いたい気持ちが募りすぎて、都合のいい幻覚が見えているのだろうか。そう思って近づいてみても、千はやはり消えることもなく目の前に存在している。恐る恐る頬に触れてみると、指先に確かな感触が伝わった。触れても目を醒ます事もなくすよすよと眠る千の首には、良く見れば銀のリボンが結ばれていた。
一緒の仕事でなくても、千のスケジュールなら把握している。今月は映画の長期ロケが入っていて、今日だって遠く離れた土地にいる筈だった。
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