嗚呼、愛しき工房の日々(幕間1)そろそろ外勤に出ていたグレゴールが戻る頃あいだ。
雲の隙間からさす陽の暖かさはまだ夏の残り香をまとっている。外階段の踊り場に向かえば、既にコーヒー片手に一服している気怠げな姿。先客はちょうど、並行して探していた人物だった。
<ああユーリ、イシュメールが呼んでいたよ>
「そうでした! ありがとうございます、ダンテさん。グレゴールさんもまた」
「おー」
制服を着た少女が赤い髪を揺らしながらぱたぱたと走り去っていくのを見送り、グレゴールはゆっくりと煙を燻らせる。
彼女もロージャが連れてきた人材の一人だ。ロージャはもちろん、グレゴールも妹のように可愛がっている。
<あっしまった、ユーリにも食べてもらえばよかったなあ>
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