嗚呼、愛しき工房の日々44.
ダンテは抜かりなく、体調が戻るまでのムルソーの休暇を『会長命令』として用意していた。彼が最低限でも起きられるようになればすぐに復帰しようとするのは目に見えていたからだ。
案の定、期日の近いものや自分が窓口の案件があるからとふらつく体で身支度を始めようとしたムルソーをダンテは最大限に手足を突っ張らせた渾身の力で引き戻し、結局のところはダンテを代理としながらも体調の落ち着いている時に説明や引き継ぎをする、という形で妥協することになった。
心配を隠さないムルソーにダンテはにっこりと笑ってみせる。彼しかできなかった仕事を彼以外もできるようにする、どのみちやらなければいけなかったことだ。
毎日細かく家と工房を行き来しながら、彼は甲斐甲斐しく世話を焼いた。
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