ふわふわ、ゆめごごちああ、やっぱりこの時が一番休まるなあ。
お風呂上がりで髪を乾かした愛弟子の頭に顔を埋めて、すう、と息を吸ってみる。あの子の匂いと石鹸の匂い。それと、ほかほかとした暖気が鼻腔をくすぐった。
愛弟子のすっかり乾かされた髪はふわふわで、綿入れのように柔らかかった。
ふわふわの髪に温かい香り、日に干した布団に顔を埋めたようで、俺はこの瞬間をいたく気に入っていた。
「あの、教官。そろそろ…」
後ろから抱きすくめられ顔を埋められた愛弟子は困惑した声を出した。
「もう少しだけ、だめかな」
きみとこうしてる時が、1番心安らぐんだ。
そう言うと、従順で優しい愛弟子は、黙って身を預けてくれた。
いつかの日に、あの子の優しさに甘えすぎないようにね、とアヤメさんは言った。どうやら俺の愛弟子への愛情表現は、やり過ぎに見えるらしい。
もちろんあの子の嫌がることはしたくない。けれど、今この時だけは許して欲しい。ハンターの君とこうして抱き合って、息遣いも匂いも鼓動も近くで感じていられるのは貴重なんだから。
ぎゅう、と抱きしめると、愛弟子はすり、とこちらに身体を擦り寄せた。
「俺も、教官の真似して、いいですか?」
「うん?」
腕の中で見上げてくる愛弟子の意図が分からなくて、俺は首を傾げた。すると、愛弟子はふふ、と笑って俺に向き直ると、胸元に向かって顔を押し付けた。
すんすん、と音が聞こえた。
先にお風呂を頂いているから身体は清めているけれど、愛弟子を待ってる間にちょっぴりお酒を飲んだから身体がほてっている。すこし汗をかいた。変な匂いしてないかな。
「ちょ、ちょっとまって、汗をかいたから、あまりいい匂いじゃないよ」
「仕返しです」
慌てて愛弟子を引き剥がそうとすると、より強く抱きついてきた。愛弟子の目がいたずらっぽく笑っている。
突然匂いを嗅がれるのってこんな気分なのか…。少し反省した俺は、白旗を上げようとした。
「それに、俺は教官の匂い、すきです」
思わぬ愛弟子からの反撃に、俺は別の意味でも白旗を上げたのだった。