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    20210801 因習村破壊RTAギャグ まずランガが捕まった場合秒で助けに来る男を用意します
    二人に暗さはないけど村民が終わっているので微妙です

    ##微妙
    ##全年齢

    どうせ会うなら、会いに来る神様 引き戸が倒された。横ではなく前へと、それはもう呆気なく。床に伏せたそれを躊躇無く踏みつけ舞い上がる埃をものともせず入ってくる人影がひとつ。青い夜に照らされる、ここに居るはずのない男。
    「外れに農村があるのは知っていたがそこに君が居るまでは予想外だ。しかも邪魔な付き添い共は無しだなんて、これは偶然?いや運命!やはり僕達は繋がっている!」
    「…………」
    「驚きのあまり見開かれたその瞳……実にラブリーだよ僕のランガくん。けれどあまり見つめないで。特に首から下」
     確かに普段通りの髪型仮面でも服は別に赤くない。肩の鋭いのも無くて、何というか普通の人に見える。
    「流石に用意が間に合わなくてね……君の目に映る僕はいかなる時だろうと完璧でなければいけないのに……」
     広くもない蔵の中を大股で突き進んだ男はこちらをひょいと担ぎ、さあ行こうと高らかに。
    「こんな暗くてカビ臭い所は君に相応しくない。今宵は二人きり、特別なひとときを過ごそうじゃないか」
    「……あ、愛抱夢」
    「なんだい?」
    「駄目だ。一緒には行けない」
    「……いつ聞いても君の同行拒否は本当に心臓に悪いがそれはそれとして。何故?」
    「分かんない」
     けれど自分はここに居なければいけないらしかった。呼ばれる時までじっと待ち、その間は誰とも話さず触れ合わず飲み食いも無し。そうしてきれいな身になったと判断されたら。
    「神様に会いに行かなきゃなんだって」
     村の人達が言うには、神が自分を選んだそうだ。自分が社に入った時大きく鳴った鈴の音。あれは神の呼ぶ声で会いに行かないとすごく怒って天気をめちゃくちゃにするとかなんとか、よく覚えていないけどとにかく大変なことになるらしい。
    「そういうわけだから行けない。ごめん」
    「鈴ねえ……」
     愛抱夢のポケットからレコーダーのような物が取り出される。数秒後、蔵に響いた涼やかな。
    「聞こえた音とは、これのこと?」
    「あ、うん」
    「……馬鹿馬鹿しい」
     答えれば何故か長い溜め息を吐き、あっさり外へ歩き出す。こちらを担いだまま。
    「愛抱夢、駄目だって」
    「駄目なわけがあるものか。君はこんな所さっさと抜け出して僕と夜会をするんだよ」
    「でもバイト代が」
    「ああなるほど、まったくやり口が汚ならしいな。連中はいくら払うと?」
     頭に浮かべただけで少し緊張するような金額を口に出せば、それだけかと愛抱夢はただ呆れ鼻を鳴らした。
    「倍額出すから僕に雇われると良い」
    「え」
    「そうしよう。決まり。決定」
     あまりに魅力的で意図が掴めない誘い。思わず固まっているうちに、二人の身体は扉のあった場所を抜けついに蔵の外へ出てしまっていた。
    月が出ているとはいえやけに明るい。見れば少し離れた家々にもちらほら電気が、そして人の声らしきものも聞こえてくる。村の人達なら挨拶くらいして行きたいと愛抱夢に頼んだところ既にスネークが行っているのだとか。速い。
    「いいのかな」
    「いいんだよ。何をどう使うつもりだったか知らないが君をあんな端金で釣り、騙し、あまつさえ捧げる真似なんて。連中は少々痛い目を見るべきだ」
    「良い人達だったけど」
     ご飯を沢山よそってくれた。向こうに行ってもお腹が減らないように、と。いくらおかわりしても追加されるおかずは自分としては感動ものだったのだが、愛抱夢はそう思わないらしい。明らかに引いている。
    「まさか……本気だったのか?本気で君を?」
    「愛抱夢?うわっ」
     ぐんぐん村が遠退いていく。自分一人担いでこの速度、やっぱりすごい。
    「許しがたい!」
     大きく開いた口が闇に吠えた。
    「絶……ッ対に有り得ない。ああ最悪だ、最悪……こんなチンケな村の土地神風情が横取りだと?調子に乗るなよ……ランガくん!」
    「は、はい」
    「ここを去る前に宣言しておこう!自分はSの神の物なので他の神様はお呼びじゃありませんと、さあ!」
     さようなら優しかった村の人達。もう二度と会うことはないだろう。そんな気がする。
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