Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ナンナル

    @nannru122

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 💜 💛 🌸
    POIPOI 76

    ナンナル

    ☆quiet follow

    メイテイの落書きを元に書いてる小話。
    本編ではないです。本編に入れられないだろうなぁ、と思ったので小話形式で。

    メインディッシュは俳優さん以外テイクアウト不可能です!× 小話(類side)

    天馬くんと正式にお付き合いを始めて数ヶ月。彼の卒業も間近となってきた。無事志望していた専門学校に合格出来た天馬くんは、あのお店のシフトを増やして日々頑張っている。以前と変わらず、週に一回彼に会いにあのお店に行くのが、僕の楽しみの一つだ。
    変わったのは、毎週水曜日の“閉店時間に合わせて”行くようになった事くらいだろうね。

    「いらっしゃいませっ!お疲れ様です、神代さん!」
    「お疲れ様、天馬くん」
    「少しだけ待っていてください!すぐ片付けるので」
    「ゆっくりで大丈夫だよ」

    僕を見つけると、嬉しそうに顔を綻ばせる天馬くんが可愛らしい。相変わらず元気な声で挨拶をしてくれた彼が、ぱたぱたと店内を駆け回る。そんな様子を見ているのが、毎回楽しくて仕方ないんだ。
    仕事の時間内では長く話せないので、水曜日だけ閉店後に彼を家まで送るのが習慣になった。予め僕の分だけ取り置きで用意してもらったお弁当を買って、天馬くんと夜道を歩きながら話をする。そういう日になった。

    「お待たせしました!」
    「おや、随分早かったね」
    「えむが、あとは大丈夫と言ってくれたので」
    「そう。それじゃぁ、行こうか」
    「はいっ!」

    隣に並ぶ天馬くんの手を握ると、彼の方からも握り返される。まだ少し恥ずかしいのか俯いてしまうけれど、それはそれで愛らしい。人通りの少なくなった道をゆっくり歩きながら、お互いに近況を話し合う。最近見た映画の話や、撮影で言われた指摘で彼の為になりそうな事なんかも話した。そうして、彼の家の前で立ち止まって、ほんの少しだけ恋人らしいことをする。そういう時間。

    「……」
    「天馬くん、今日はなんだかご機嫌だね」
    「んぇ…?! そ、そういうわけではないですが…」

    お互いに沢山話しをして、もうすぐ彼の家に着くだろう距離。バイト先を出た辺りからそわそわとしていたけれど、彼の家が近付くほどそれが分かりやすくなっていく。余程楽しみな事があるのだろうか。天馬くんが楽しそうにしているのは良い事ではあるけれど、僕と一緒に居る時に彼の気がそぞろになるのは頂けない。出来るだけ長く、彼には僕のことを考えてほしい。
    繋いだ手を強く握り返して、彼の手を掬う様に上げる。口元まで運んで、彼の白い指先に口付けると、天馬くんの顔が一気に赤く染まった。

    「何か良いことでもあるのかい?」
    「ぅ、ぇ、……、ぁ、…ぃゃ…」
    「僕には、話したくないこと? 君が嬉しい事は、何でも聞きたいのだけど…」
    「っ、…そ、それは……、…」

    足が止まって、天馬くんが視線をあっちへこっちへとさ迷わせる。指先にほんの少し力が入って、困った様に眉を下げた彼は僕の手を引いた。止まっていた足が動き始めて、彼の家の方へ真っ直ぐ進んでいく。誤魔化されてしまっただろうか、と胸の奥にもやがかかる。耳まで赤くなった天馬くんは、いつもより少し歩く速度が早い。彼との貴重な時間が終わってしまう。そんな寂しさに、思わず顔を顰めた。
    見慣れた彼の家の前まで来ると、天馬くんは漸くそこで足を止める。繋いだ手が離されて、ポケットからスマホを取りだした。

    「……すみません、…オレ、ずっと気になっていた事があって…」
    「………そぅ」
    「…自分でも気付かないうちに、…その、…た、楽しみに、していた、みたいで…」

    きゅ、とスマホを両手で掴んで顔を少し逸らす天馬くんに、胸の奥がつき、と痛む。僕と会うよりも楽しみにしていたということだろうか。それは、とても悔しいかな。僕は、週に一度のこの時間を毎回楽しみにしているのに。嫌な事を言ってしまいそうになって、強く唇を引き結ぶ。天馬くんにだって事情はあるだろう。彼の周りには人が沢山集まるし、大きな行事である卒業だって控えている。僕の事だけを考えていることなんて、難しいだろう。それを強制するわけにもいかない。けれど、彼が僕より楽しみにしていること、というのは、やっぱり気になってしまう。
    じっと彼の言葉を待つと、天馬くんはスマホの画面をそっと僕の方へ向けてくれた。なにやら説明が沢山書かれたサイトのようだ。見出しには、『キスが上手くなる方法』と大きく書かれている。

    「………………き、す…?」

    思わず目を瞬くと、彼がこくこくと頭を上下に振って頷いた。ほんのりと赤くなった顔で僕を見あげる彼の瞳は、きらきらと光って見える。

    「その、いつも神代さんと、き、す、する時、苦しくて、長く続かないので、解決法はないかって、調べていて…」
    「え、調べたのかい…?」
    「はいっ…! そしたら、き、きす、する時は、鼻で呼吸するといいって書いてあってっ…!」

    恥ずかしいのか口篭りながらも説明してくれる天馬くんに、脱力してしまう。はぁあ、と長い息を吐いて手で額を抑えると、彼はスマホをしまって僕の方へ一歩分近付いた。
    つまり、彼がずっとそわそわしていたのは、この記事が本当か確かめるため、ということかな? 僕とキスするのを楽しみにしていてくれた、ということ? なにその可愛い理由は。疑った僕が恥ずかしいじゃないか。早歩きでここまで来たのも、あそこで話すのは恥ずかしかったからかな。ずっと、僕とキスをするイメージトレーニングをしてくれていたという事だよね? どうしよう、天馬くんが可愛過ぎて困る。

    (…そこで何故ネットの記事を頼ったのかは、少し気になるけれどね)

    彼がキスが下手な事は知っている。知っていて、言わなかった。必死に息を止めて頑張ってくれる彼が可愛らしくて、言わずにいた。酸欠で苦しくなっても頑張ってくれるし、その後の涙でぼんやりとする彼が可愛くて好きだ。一度のキスでふらふらとしてしまう所も、顔を真っ赤にしてくったりともたれかかってくれるのも、彼とのキスの楽しみでもあるのに。
    ゆっくり彼に教え込んで行くつもりだった事を、こんなにあっさりとネタばらしされてはつまらない。というより、僕以外を彼が頼ったという事実の方が気に入らない。気になるなら、僕に聞いてくれればよかったのに。彼なりに、僕に合わせようとしてくれた結果なのだろうけれど、少し面白くない。

    「…や、やはり、はしたない、ですか…?」
    「いや、すまないね。君が僕の為に考えてくれていて、嬉しかっただけなんだ」
    「……そ、そうか…」

    ホ、とあからさまに安堵した様子の天馬くんに、ぎゅ、と拳を握り込む。嬉しいと同時に感じた悔しい気持ちは、無理やり押し込んだ。天馬くんを前に、そんなみっともない独占欲を出せるわけが無い。
    またそわそわとし始めた天馬くんが、視線をさ迷わせる。きっと、早く試してみたいのだろうね。記事のアドバイスを。イメージトレーニングの成果を。
    自由になった彼の手が、くん、と僕の袖をそっと引いた。おずおずと上目遣いで見上げる天馬くんは、まだ少し恥ずかしいのかしっかりと唇を引き結んでいる。ほんのりと赤くなった耳を見て、そっと息を吐く。こんなにも期待をされていて、更には楽しみにまでしてくれていて、『今日はしません』なんて断れるわけもない。彼がしたいと言ってくれるなら、いくらだって付き合うつもりだ。

    (……けれど、彼のキスが上達するのが、どこの誰とも分からない他人の体験談なのは納得いかないな…)

    ぐらぐらと、頭の中で天秤が揺らぐ。天馬くんの要望通りキスをするのか、この敗北を認めず拒否するか。彼がこの記事を忘れる頃までキスはお預けするか、欲に負けてするべきか。ここで拒んで、悲しそうにする天馬くんは見たくない。お預けにされて、暫く僕の事で頭がいっぱいになる天馬くんは可愛いだろうけど。

    「…神代さん……?」

    黙った僕を、不思議そうに天馬くんが見つめてくれる。ほんの少し下がった眉で、彼を不安にさせてしまったのが分かる。そんな顔をされてしまえば、『しない』という選択肢が自然と消えていく。ここまで望んでくれているならしたい。僕だって、彼に触れられるこの時間を楽しみにしていたのだから。
    と、そこで、はたと思いつく。

    「天馬くん」

    ふわりと笑みを浮かべて、彼の頬に両手を添えた。むにむにと柔らかい頬を掌で軽く堪能して、額を触れ合わせる。きゅ、と唇を引き結んで、天馬くんが強く目を瞑った。そんな彼が愛おしくて、赤く染まった耳へ唇を寄せる。

    「今日は、ちょっぴり大人のキスを、しようか」
    「…ふぇ、……、…んっ…」

    いつもより声を低くしてそう囁くと、天馬くんが驚いて目を丸くさせる。それに構わず、唇を重ねた。ふに、と柔らかい唇の感触が愛おしい。彼の手が、僕の袖を掴んだ。体を寄せて、ゆっくりと彼の顔を上へ向けさせる。喉を逸らすように誘導して、唇の角度をそっと変えた。頬に添えた右手をゆっくりと彼の耳の方へ滑らせる。形の良い耳の縁を人差し指の腹で辿ると、彼の肩がぴく、と跳ねた。耳の輪郭を指先でなぞって、耳朶を親指と人差し指で優しく摘む。ふにふにと柔らかい耳朶を指先で楽しんで、そっと付け根をくすぐる。ゆっくり、優しく。かく、と彼がバランスを崩して崩れ落ちそうになるのを僕の膝で支え、壁にもたれさせる。
    唇の角度をもう一度変えて、左手をそっと彼の顎の方へ滑らせた。

    「…んんっ、…ん、……」

    顎を掬うようにもう少し上へ向かせて、指先で軽く擽る。身じろいで逃げようとする彼の後頭部を片手でおさえて、固定した。優しく指先を彼の首元に添える。線を引くように天馬くんの首をゆっくりと指先で辿り下りると、彼の手が縋るように僕の胸元を掴んだ。がくがくと震える彼の膝が、限界を訴えている。それを横目に、もっと深く唇を重ねた。ワイシャツの襟元まで滑らせた指で、ゆっくりと彼のネクタイを緩める。第一ボタンを外して、晒された鎖骨を指先でなぞった。

    「…ん、…んん、……んーっ、………っ、…」

    抗議するような声も、キスのせいで何を言っているかも分からない。もぞもぞと身じろぎする天馬くんを足や腕で抑え込んで、唇を重ね続ける。数秒して、胸元を握る彼の手から力がフッ、と抜けた。彼の体が少し重みを増したのが分かって、そっと唇を離す。バランスを保てなくなった天馬くんが、そのまま僕の方へ、くた、と倒れ込んできた。それを抱き留めて、ふわふわの髪にキスを贈る。

    「おや、もうおしまいかい?」
    「…、……っ、…、…………」

    僕の胸元でぐったりする天馬くんは、肩で息をするように呼吸を整えている。途中噎せるような音がして、少し意地悪をし過ぎたかなぁ、とぼんやり思った。それでも、ぐったりと僕にもたれかかる天馬くんが可愛らしくて、ぎゅぅ、と強く抱き締めてしまう。
    漸く少し落ち着いたらしい天馬くんがもぞもぞと身じろいで、僕の方へ顔を向けた。涙の膜で瞳をキラキラさせて、睨むように僕を見ている。

    「……、…か、みしろさん、の、ばかっ…」
    「ふふ、どうだったんだい? 楽しみにしてくれていた僕とのキスは」
    「も、しらんっ…! しばらく、しないっ…!」
    「それは寂しくて死んでしまうよ。機嫌を治してくれないかい?」

    ぽす、ぽす、と弱々しく胸元を叩く天馬くんに、つい口元が緩んでしまう。目論見通り、息継ぎも出来なかったのだろう。不貞腐れてしまった天馬くんは、眉を釣りあげて僕を睨んでいる。涙目のせいで怖くなければ、さらに意地悪をしたくなる可愛らしさがある。うずうずとしてしまう気持ちを押し込んで、ご機嫌ナナメな恋人の頬にそっと口付けた。

    「許してはくれないかい? 天馬くんとキスが出来なければ、明日からの仕事が頑張れないな」
    「………っ、……」

    ぶくぅ、と膨らんだ柔らかい頬を掌で包んで、小首を傾げてみせる。少ししゃがんで目線を合わせてあげると、彼は顔を顰めたまま僕の肩に手を置いた。もごもごとその小さな口を動かして、じっと僕を見返してくれる。

    「……慣れない、ので、…慣れるまで、…ぉ、とな、の、キスは、……禁止です…」
    「…ふふ、それはすまなかったね。それでは、今度のデートで一緒に練習しようじゃないか」
    「…………します…」

    こくん、と小さく頷いた天馬くんに、胸の奥がきゅぅ、と音を鳴らす。ぎゅ、と優しく抱き締めると、彼がすり、と額を僕の首元に擦り付けてくれる。甘えてくれるのが嬉しくて、先程までのもやもやも消えてしまったようだ。
    そんな彼の顎に手をかけて、そっと上を向かせる。お詫びとばかりに触れるだけのキスをしてあげれば、彼が嬉しそうに、へにゃりと表情を綻ばせた。息継ぎの事など忘れてしまったようで、息を止めて僕のキスに応じてくれる。
    そんな彼が満足するまで、僕らは唇を重ねた。

    天馬くんが息継ぎのことを思い出したのは、その後お風呂に入っていた時だった、らしいね。


    ーーー

    読まなくてもいいやつ。↓

    この後、大人のキスに慣れなかったバイトさんが、『大人のキス 対策法』みたいに検索をかけて、『舌をいれるキス』を知って、俳優さんに抗議にいくのも見たい。
    「大人のキスじゃないですかっ…!」って顔を真っ赤にして声を荒らげるバイトさんに、俳優さんがにこりと笑って、「ちょっぴり、と言ったじゃないか」って言い返すやつ。それを聞いて、「確かにっ…!!」って納得しちゃう素直なバイトさんは可愛いと思う( ˇωˇ )
    その後、大人のキスはまだ早いって断られて、いつされるのかと悶々とするバイトさんも良いし、耐えきれずにお願いしにいくのも良いな。
    出来れば大人のキスは高校卒業してからにしてください( ˇωˇ )耐えてね、俳優さん。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💘💘💘👏👏👏💖💜💛☺❤💕💖❤😍❤☺💯😍😭👏👏👍👍👍💖💞💖💞💖💞💘💘👏💯💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ナンナル

    CAN’T MAKE銀楼の聖女

    急に思い付いたから、とりあえず書いてみた。
    ※セーフと言い張る。直接表現ないから、セーフと言い張る。
    ※🎈君ほぼ居ません。
    ※モブと☆くんの描写の方が多い。
    ※突然始まり、突然終わります。

    びっくりするほど変なとこで終わってます。なんか急に書き始めたので、一時休憩も兼ねて投げる。続くか分からないけど、やる気があれば一話分だけは書き切りたい( ˇωˇ )
    銀楼の聖女『類っ、ダメだ、待ってくれっ、嫌だ、やッ…』

    赤い瞳も、その首元に付いた赤い痕も、全て夢なら良いと思った。
    掴まれた腕の痛みに顔を顰めて、縋る様に声を上げる。甘い匂いで体の力が全く入らず、抵抗もままならない状態でベンチに押し倒された。オレの知っている類とは違う、優しさの欠片もない怖い顔が近付き、乱暴に唇が塞がれる。髪を隠す頭巾が床に落ちて、髪を結わえていたリボンが解かれた。

    『っ、ん…ふ、……んんっ…』

    キスのせいで、声が出せない。震える手で類の胸元を必死に叩くも、止まる気配がなくて戸惑った。するりと服の裾から手が差し入れられ、長い爪が布を裂く。視界の隅に、避けた布が床へ落ちていく様が映る。漸くキスから解放され、慌てて息を吸い込んだ。苦しかった肺に酸素を一気に流し込んだせいで咳き込むオレを横目に、類がオレの体へ視線を向ける。裂いた服の隙間から晒された肌に、類の表情が更に険しくなるのが見えた。
    6221

    ナンナル

    DOODLE魔王様夫婦の周りを巻き込む大喧嘩、というのを書きたくて書いてたけど、ここで終わってもいいのでは無いか、と思い始めた。残りはご想像にお任せします、か…。
    喧嘩の理由がどーでもいい内容なのに、周りが最大限振り回されるの理不尽よな。
    魔王様夫婦の家出騒動「はぁあ、可愛い…」
    「ふふん、当然です! 母様の子どもですから!」
    「性格までつかさくんそっくりで、本当に姫は可愛いね」

    どこかで見たことのあるふわふわのドレスを着た娘の姿に、つい、顔を顰めてしまう。数日前に、オレも類から似たような服を贈られた気がするが、気の所為だろうか。さすがに似合わないので、着ずにクローゼットへしまったが、まさか同じ服を姫にも贈ったのか? オレが着ないから? オレに良く似た姫に着せて楽しんでいるのか?

    (……デレデレしおって…)

    むっすぅ、と顔を顰めて、仕事もせずに娘に構い倒しの夫を睨む。
    産まれたばかりの双子は、先程漸く眠った所だ。こちらは夜中に起きなければならなくて寝不足だというのに、呑気に娘を可愛がる夫が腹立たしい。というより、寝不足の原因は類にもあるのだ。双子を寝かし付けた後に『次は僕の番だよ』と毎度襲ってくるのだから。どれだけ疲れたからと拒んでも、最終的に流されてしまう。お陰で、腰が痛くて部屋から出るのも億劫だというに。
    6142

    recommended works