Happy Birthday 11/11ふと、意識が浮上し、隣に気をつけながら体を起こした。サイドチェストに置かれた電子時計は日付も表示するタイプで、一が四つ並んだ画面を見てそういえば、と他人事のように思い出した。
(誕生日、か)
自分の誕生日なんて、特別な日でもなんでもない。あえて言うなら、明日をもしれない命がまだここにあると少し実感する日、その程度だ。
それでも、静かに寝ている恋人の指通りのいい長い髪に触れた時なんかは、生きていてよかったと思うこともある。
「んん……」
「…わりぃ、起こしたか」
寝ぼけ眼のまま半身を起こしゆったり首を振った先生が、時計に目を向け、こちらを振り向いた。
「誕生日おめでとう、左馬刻くん」
マイクを通し回復を受けた時のように、低く穏やかな優しい響きが耳から脳、そして全身に伝う。しかしバトルの時とは違い、その声が少し掠れて甘さをはらんでいる事に密やかな満足を覚える。
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