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    ゆりお

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    ゆりお

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    バイク屋やってるドラケンとイヌピーです。昔のことを思い出す二人。

    ##東リ

    龍宮寺と乾/東リ「雪だ」
     シャッターを閉めようとガレージの外を除いた乾は、夜空を見上げて呟いた。暗い空から降ってくる雪が、工業用のライトに照らされて形を作り、アスファルトの上に溶けてゆく。都内でこんな大粒の雪を見るのは久しぶりだ。もしかしたら、明日は積もるかもしれない。
    「寒いはずだな」
     様子を見にきた龍宮寺も、その幻想的な景色が気に入ったのか、ブルゾンの前を閉めてそのまま外に出る。そうして、しばらく空を見上げていた。長身で雰囲気のある彼が、雪の降り頻る中に佇んでいる姿はやはり絵になって、乾はそれをぼんやりと見つめた。
     不意に、こちらを向く。
    「帰るのめんどくせーだろ。泊まってけよ」
    「……いいのか?」
     龍宮寺はもちろんだと言うように顎を引き、にっと人好きのする笑みを見せた。
    「こたつで鍋でもやろーぜ」

     二人で営むバイクショップの二階が龍宮寺の家だった。乾は近くに、帰って寝るだけのアパートを借りている。龍宮寺は家に人を招くのが好きだから、乾も第二の家のようによく出入りしていた。
    「味、何がいい?」
    「豆乳」
    「おう、土鍋出しとけ」
     乾は勝手知ったる様子で、棚を開けて年季の入ったそれを取り出す。龍宮寺はまな板の上で、慣れた手つきで食材を切っていた。
    「どうせろくなもん食ってねぇんだろ」 
    「……そんなことねぇよ」
     口では言うものの、乾の答えに力はない。実際、最近はコンビニ弁当ばかりだった。鍋つゆと食材を入れて、カセットコンロと共に、こたつへ運ぶ。最近めっきり冷え込んできたから、この間リサイクルショップで購入し、二人で運んできたものだった。
     テレビをつけてくだらないバラエティを流しながら、適当に缶の酒を開ける。乾が鍋から直接具を摘むと、白菜やつみれなどの一般的な具の他に、ウインナーが出てきた。それを見た龍宮寺が、ぽつりと呟く。
    「鍋っていいよな。冷蔵庫の中が掃除できる」
    「そのために呼んだのかよ」
    「バレたか」
     乾が睨むと、一転、快活な声を上げて笑う。

     腹を満たして体も温まり、酒も入ったせいか。いつのまにか眠っていたらしい。腰から下をこたつに突っ込んで丸くなっていた乾は目を覚ました。ゆっくりと、起き上がる。テレビはすでに消えていた。時刻は日付を跨いだあたり。隣に龍宮寺の姿はなく、見渡すと、ソファの上で寝そべって雑誌を読んでいた。
    「起きたのか」
    「ん……」
     乾に気づいた龍宮寺が声をかけてくる。目をこすりながら頷いて、立ち上がった乾は倒れるようにしてソファに近づいた。
    「おい」
     声を無視して、龍宮寺の上に寝そべるように横たわる。
    「オレがどくから、ちゃんと寝ろって」
     肩を掴まれ身体を揺らされたが、起きる気はなかった。乾はきつくつむったまま、強く抱きつく。龍宮寺の身体はゴツゴツと骨張っていたが、筋肉の弾力と、そこから伝わる体温が心地よかった。
    「おまえ、カラダあったけぇなー」
     すぐに聞こえてきた健やかな寝息に、龍宮寺は笑って観念した。乾の背中をぽんぽんと叩いて、読んでいたバイクの雑誌を放り投げる。
     ソファの背にかけてあった毛布を乾にかけてやり、目を閉じる。懐かしい光景を思い出す。
    「重くねぇの、それ」
     遠い昔、子供の頃。よく友人の上でその妹が寝ていた。尋ねると、あったけぇから——そんな答えが返ってくる。なんだそれ、と呆れたことを思い出していた。

           *

    「寒い、寒い!」
     バタバタと部屋に飛び込んでランドセルを放りなげる。制服姿の姉がストーブのスイッチを入れる。部屋は冷え切っているというのに、これから何分も待たなければいけない。
    「全然つかねぇじゃん。新しいストーブ買ってもらおうよ」
    「ダメだよ。引っ越してきたばかりなんだから、セツヤクしないと」
     姉は母親を真似て、大人ぶった口調でそう言った。けれどもすぐに悪戯を思いついた笑みを浮かべると、後ろから思いきり抱きついてくる。
    「やめろよ」
     抵抗するが、すればするほど姉は力を込める。まだ力では敵わないから、ますます腕の中で動けなくなる。
    「こうするとあったかいでしょ」
    「うぜぇな、離れろよ」
    「青宗はあったかいね。赤ちゃんみたい」
    「やめろって!」
     反抗するほど、姉は楽しそうに声を出して笑った。
    「大好きだよ、青宗」
     姉は、寒さに赤くなった頬をこちらの頭に擦り付けてうっとりと目を閉じた。
     そうされると不思議と何か言う気が失せてしまって、そのままじっと、ストーブがつくのを待っていた。
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    ギギ@coinupippi

    DONEココイヌだけどココは出て来ない。
    またモブが出張ってる。
    パフェに釣られてイヌピーがJKからココの恋愛相談を受ける話。
    逞しく生きる女の子が好き。
    特大パフェはちょっとだけしょっぱい。乾青宗はその日の夕方、ファミレスで大きなパフェを頬張っていた。地域密着型のローカルチェーンファミレスの限定メニュー。マロンとチョコのモンブランパフェは見た目のゴージャス感と、程良い甘さが若者を中心に人気だった。
     そのパフェの特大サイズは3人前程あり、いつかそれを1人で食べるのが小学生からの夢だった。しかし値段も3倍なので、中々簡単には手が出せない。もし青宗がそれを食べたいと口にすれば、幼馴染はポンと頼んでくれたかもしれない。そうなるのが嫌だったから青宗はそれを幼馴染の前では口にしなかった。
     幼馴染の九井一は、青宗が何気なく口にした些細な事も覚えているしそれを叶えてやろうとする。そうされると何だか青宗は微妙な気持ちになった。嬉しく無いわけでは無いのだが、そんなに与えられても返しきれない。積み重なって関係性が対等じゃなくなってしまう。恐らく九井自身はそんな事まるで気にして無いだろうが、一方的な行為は受け取る側をどんどん傲慢に駄目にしてしまうんじゃ無いかと思うのだ。
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