おやすみ、また明日 窓の外は、静かな夜だった。
薄暗い部屋の中に、すうすうと小さな寝息だけが響いている。隣でぐっすりと眠る恋人の頬をそっと撫でて、雨彦は柔らかく微笑んだ。
久しぶりのオフを明日に控えた雨彦は、無事に一日の仕事を終えて夕食をとると、クリスを自宅に連れ帰ってきた。
クリスと恋人という関係に収まってから、それなりに時間が経つ。プライベートな空間にクリスがいることも、そこでクリスと肌を合わせることも、自分のベッドでクリスが眠っていることも、今ではすっかり日常の一部になってしまった。
日頃どこまでも海に夢中なクリスは、自分の色恋よりも魚たちの繁殖行動に興味を示すような男だった。だから雨彦とこういう関係にならなければ、クリスは当面こんな風に過ごす夜を知らないままだったのかもしれない。
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