バンさんRE:BORN五日目だっけ?バンはとてもご機嫌だった。久方ぶりに彼の大切な仲間たちが揃ったので。ご機嫌なのでエールは樽ごと飲みたいし、団ちょとは勝負したいしキングもいじりたい。今ならディアンヌと腕相撲で、少しはいい勝負ができるかもしれない。
けれども彼はシャスティフォルのクッションの上に寝かされた。豚の帽子亭にいる頃はお世話になった馴染みの感触だ。悪くはない。悪くはないが、何故かヘンドリクセンが手脚を調べたり胸の音を聴いたりして触ってくるものだから、擽ったくて仕方がない。
おいヘンディ、俺は野郎に触られて喜ぶ趣味はねぇぞ?
「ごめんねバン。ちょっとおりこうに大人しくしていてね」
けれどもエレインが側に寄り添ってそう宥めるので、バンはキョロキョロしつつもじっとしていた。
「……診てみましたがなんとも……。こんな症状ははじめて見ますし、聞いたこともない。呪いの気配は感じられませんとしか……」
お役に立てず申し訳ない、とヘンドリクセンは項垂れる。
「私の癒やしの力にも反応がないから、彼の言っていることは正しいと思うわ。病気でもなさそう」
「ありがとうヘンドリクセン、エリザベス」
エレインは二人に礼を述べ「健康なら、まぁ……いいのかしら」と眉をハの字にさせた。
「こうなったことについてエレイン、君に心当たりはない、よね。昨夜は何かいつもと違うことはあった?」
開放されたバンに早速絡まれつつキングが尋ねる。せっかくセットされた髪がぐしゃぐしゃにされていた。
「こらバン、メッ、よ! ……別に特に何も。ご飯食べてお喋りして。……あ」
「『あ』?!」
「そういえば煉獄の話を聞かせてくれて」
その場の一斎の視線を受けたエレインは少しだけたじろぎつつ、昨夜のバンとの会話を回想した。
「と言っても本当にお話していただけで、特別な何かはないのだけれど」
「うんうん」
ずい、とディアンヌが身を乗り出す。そのはずみにキングが胸の下敷きになりメリオダスに突っ込まれた。
「ホークちゃんのお兄さんの事とか、外来種? っていう姿になったお話なんかも聞いて。それで私言ったのよね、『ホークちゃんのお兄さんも気になるし、バンのその姿も見てみたかったなァ』……って」
それだ。
エレインの願いならば全てを叶える覚悟のある男であると、彼の仲間は知っている。ただそれだけの事でも、皆が妙に腑に落ちたのだった。