その夜、バンは寝ながら考えていた。
―― 俺、バカじゃね? 何だよ、作戦会議て。つい勢いで言っちまったけど、一体キングと何するってんだ。だいいち豚の帽子亭ではエレインも一緒なんだぜ、どうやって内緒話するってんだ……。
だが、そんな心配は杞憂だった。
「え? 休むって具合でも悪ぃのか?」
豚の帽子亭コック監視員であるエレインが休むと言い出した。バンにとっては一大事である。そもそもエレインが蘇って以来、二人は常に一緒なのだから。
いや、この間姫さんらとの買い物に送り出したけど。
「ううん、違うの。とても元気よ。ええと、何ていうのかな、秘密?」
「秘密?」
「という事ではなくて内緒! じゃなくって、ううん、内緒だけど悪い内緒じゃないの! 本当よ、バン!」
エレインは顔を真っ赤にしてぶんぶん腕を振り回し、悪くないという所を激しく主張している。
「ちょっと一人でしたい事があって、私の誕生日まで」
「エレインの?」
「あわわわ。誕生日、は、か、関係なくって〜」
エレインは種族問わず他者の心が読める。その反面、嘘をつくとかごまかすという事は絶望的に下手くそだ。バンはメリオダスの料理を口に突っ込まれたような顔をして、とにかくエレインは自分に内緒で誕生日に何かやる気なのだろう、と考えた。
いやまてよ、まさか俺とキングの計画(未定)に気付いて遠慮している……?
「わかった♫」
バンはエレインを抱き寄せ、キスをする。
「俺はお前を信じるし疑わねぇ。だけど約束しろ、何かあったら俺を呼べ、危ねぇ真似はすんな♫」
「約束するわ。バン、ありがとう」
エレインもバンにしがみつくようにして口づけを受けて「でも、私がいないからってサボっちゃダメよ?」と片目を瞑った。
「ちえっ♫」