「椎名さんのそういうところが好きですよ」
ぽろりと口から溢れ落ちた言葉は、紛れもない本心だった。"好き"だなんてそんなこと、絶対に言ってはならなかったのに。――いや、でも今ならまだ"友人としての好き"ということで誤魔化せるだろうか。回らない頭を必死に動かしながら椎名さんの様子を覗うと、彼は驚いたように目を見開いていた。
「好きって……それ、ほんとっすか?」
投げかけられた言葉に、私はびくりと肩を跳ねさせる。この問いかけ方は、私の発した"好き"の意味を正しく理解してしまったがゆえだろう。
なんてことをしてしまったのだ、と自分を責める。けれど、そんなことをしても起こったことが変えられるわけではない。
「……あの」
私は小さく口を開くと、なるべく椎名さんの顔を見ないようにしながら謝罪を口にした。
「すみませんでした……!」
そして、自分の出せる最速のスピードで天井裏へと這い上がる。
「えっ、マヨちゃん!?」
下の方からは驚いたような椎名さんの声が聞こえてきたけれど、今の私にそんなことを気にする余裕は残されていなかった。