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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主前提でED後の話。ハッサンは出てこないけど、ライフコッドでレックとターニアがハッサンについて喋る話。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    おにいちゃん レックにいちゃんは、いつも、お土産を手にいっぱい抱えてやってくる。
    「ただいま、ターニア、元気?」
    と言って、にこにこ笑い、私がいれたお茶を飲みながら、私のお話を聞いてくれたり、逆にレックにいちゃんが不思議なお話をしてくれたりする。
     真実を映す鏡。空飛ぶベッド。操縦できるひょうたんみたいな島。鏡の中のお姫様。悪い魔術師。世界中のメダルを集める王様。遠い海の中に住む人魚。魔物にお尻を噛まれて、魔物になってしまった人。竜の像があるふしぎな洞くつ。世界の果てみたいな小さな島で開かれるドレッサーコンテスト。空の上に浮かぶお城。
     レックにいちゃんのお話は、まるで絵本に出てくるおとぎ話のような、夢みたいなお話ばかり。本当のことだよ、ずっとそんな所を旅してきたんだ、と言うけれど、信じられない。いつも聞くたびに、本当かしらって思っちゃう。
     でも、そんなお話よりも、私は、レックにいちゃんの存在の方がいまだに信じられない。
     私があの日見つけたあの人が、本当は王子様で、大魔王を倒して世界を救った勇者様だなんて。心と体がバラバラになっていたのが、私の目の前で元に戻っただなんて。
     夢なんじゃないかしら、とたまに思う。
     本当はレックにいちゃんはどこにもいなくて、あれは、ただの私の夢だったんじゃないかしら、って。
     でもレックにいちゃんはやっぱり、お土産を手にいっぱい抱えて、たまにうちに帰ってくる。
     そして、レックにいちゃんはいつでも、にこにこしながら私と色んなお話をして、時間がきたら、もう帰らなきゃ、また来るよ、と言って、お城に帰っていく。
     そんなレックにいちゃんは、…以前の、記憶を無くしていた、少し自信のない、でも優しかったレックにいちゃんとは、やっぱり少し違う気がする。
     優しいところは変わらないけれど、前よりもかっこよくて、自信がありそうで、まるで、絵本に出てくるおとぎ話の中の王子様みたい。白馬に乗って、素敵なお姫様を探しに行ってしまいそうな。
    「ところで、ターニア。…オレさ、ひとつ、言いたいことがあるんだけど、いいかな」
     いつもと同じように、私の話を聞いて、そして不思議な話を披露してくれていたレックにいちゃんが、突然、なんだか少し気まずそうに、躊躇いがちにそう言った。
     驚いて、レックにいちゃんの顔をまじまじと見る。珍しい、今のレックにいちゃんがそんな顔するなんて。少なくとも、あの、元に戻った時以来、全然見たことがなかった。
     何かしら、と胸をどきどきさせながら、いいよ、と言うと、レックにいちゃんは、ありがとう、と言って、また話し始める。
    「……ターニア、覚えてるかな? ハッサンっていう、旅してた時の仲間がいるんだけど、…あの、でかい図体の…オレ、そいつと付き合ってて、そのうち、結婚しようと思うんだ。といっても、準備も何も全然できてないし、実現するかどうかもわからない、まだまだ先の話なんだけど」
     えっ、と思わず声が出た。あの、いかにも強そうだった、あの人と? 付き合ってる? 恋人ってこと? うそ、そんな話、初めて聞いた、と胸が高鳴る。そうだ、私の目の前で魔物と戦っていたあの時、あの人…ハッサンって人と、ずいぶん息ぴったりだなって、思ったような記憶がある。
     レックにいちゃんが、あの人と……!?
    「そ、そうなの!? 恋人ってこと? えっ、一緒に旅してるうちに好きになった…とか? それで、結婚までしようと思ってるの? やだ、素敵!」
     私がおもわず興奮してそう言うと、レックにいちゃんはなんだかびっくりしたような顔をしたけど、そのうち、ほっとしたような顔で笑った。
    「……よかった、ターニアがそう言ってくれて。オレ、このこと言ったの、ターニアが初めてなんだ。一緒に旅してた仲間は知ってるけど、他の人には誰にも、王さまにも王妃さまにも言ってなくて、……もしも反対されたらと思うと、ちょっと怖くて」
    「……どうして、私に言ってくれたの」
    「え? だって、妹だから」
     結婚したら、ハッサンが家族になるかもしれないしさ。もし嫌だったら困るし、ちょっと言っとこうかなって。そう、あっけらかんと言い放つレックにいちゃんを見て、私は。
     ああ、そうだ、……あの時もそうだった。記憶をなくしていたあの人に、もしよかったら、私のおにいちゃんになってもらえないかなって言った時。いいよ、って、かわいい妹ができて嬉しい、って、私の変なお願いを、否定も詮索もせず、優しく言って、そしてそれからずっと、ちゃんと、本物のおにいちゃんみたいに、接してくれた。
     ああ、レックにいちゃんだ。
    この人は、やっぱり、レックにいちゃんだ。私のことをちゃんと妹だと思ってくれてる。前と同じ、私がずっとほしかった、本物じゃないけれど、本物よりうんと素敵な、私の、おにいちゃんだ。
     私はうっかり泣きそうになるのを堪えて、笑った。だめよ、こんなに嬉しい話なのに。泣いてなんかいられない。
    「ね、もしレックにいちゃんがハッサンさんと結婚したら、おにいちゃんが2人になるね」
    「えっ!? ……確かに、でもターニアのにいちゃんはオレだけでいい気もするなあ」
    「あら、そう? 私は嬉しいな。そうだ、もし王さまと王妃さまに反対されたら、ふたりでこの村に住んだらどう? レックにいちゃんとハッサンさんがこの村に来てくれたらきっと賑やかになって楽しいだろうな。……えへへ、私、そうなったらいいなって、つい思っちゃった」
    「そうだな、……ありがとう、ターニア」
     オレ、ターニアみたいな妹がいてくれて本当によかったよ、と、泣きそうな顔でレックにいちゃんが呟く。
     そのレックにいちゃんは、おとぎ話の王子様みたいではなかった。それはただの、本当に普通の、不安を抱えた、ひとりの男の人だった。
     そして、紛れもなく、たったひとりの、私の大事なおにいちゃんだった。
    「ねえ、一度ハッサンさんも連れて遊びにきてよ。久しぶりに会いたいな。ちゃんとレックにいちゃんがお世話になってますって挨拶しなきゃ、妹として」
    「ええ…いや、それもちょっと恥ずかしいなあ」
     照れたように笑うレックにいちゃんを見て、私も笑う。なんだかかわいいレックにいちゃん、……そんな顔も、今まで全然見たことなかった。
    「よし、今日はレックにいちゃんに、ハッサンさんとの馴れ初めをじっくり聞いちゃうんだからね! いつから!? どっちから告白したの!? ちゃんと言うまで帰さないんだから」
    「ええ!? いやちょっと、それは本当に恥ずかしいって、勘弁してくれよターニア!」
     赤い顔で、困ったようにそう言うレックにいちゃんを見て、私は笑う。レックにいちゃんも笑う。
     私たちは気づかなかったけれど、そんな私たちの笑った顔はそっくりで、まるで、本物の兄妹のようだった。
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