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    銀鳩堂

    ここには草稿をポイポイあげて、溜まったら整えてpixivやカクヨムに移植しています。
    ツイステ二次創作小説の長編案が降りてきたので現在は主にそれを書いてます。
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    銀鳩堂

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    ヤンクロ第2部第5話
    後のクロウリー学園長=カラスのディアヴァルの物語、美しき女王編の第5話です。今回は、楽しいお茶会に不穏な影が忍び寄ります…。(本文2220文字)
    ※今回の豆知識はカラスの贈り物について。(リンク込みで774文字)

    #ツイステファンアート
    twistedFanArt
    #クロウリー学園長
    crowleyPrincipal.
    #ディア・クロウリー
    dearCrowley.

    ヤング・クロウリー ~始まりの物語~ 第二部五話「王宮の噂」 ディアヴァルは、王宮の庭園に住むことにした。ねぐらは庭園のりんごの古木に構え、機会チャンスがあれば王妃グリムヒルデの近くへ行き、聞き耳をすませ様子を観察していた。
     彼女が庭園に現れる時はたいていは小さな姫を伴っており、ディアヴァルは姫のことも次第に親しく知るようになっていった。
     姫も彼がお茶会にくると、必ずお菓子をくれるようになり、彼もそのお返しにちょっとした光り物を持っていって上げたりしたのだった。
     だが、そんな交流が思わぬ陰を二人と一羽に落とすことになるなどとは、このとき幸せに浸っていたディアヴァルには知るすべもなかったのだ……。

     それはある日突然やってきた。
     庭園での小さなお茶会に、王が現れ、こう言ったのだ。
    「愛しいグリムヒルデ。侍従からお前たちがカラスと遊んでいると聞いた。召使い共の間では、お前が魔女なのではと噂になっておる。そのカラスはこれからは追い払う様にしなさい」
     それを聞いたグリムヒルデは、打たれた様に王を見上げると、とても悲しそうな顔をした。王は残念そうな表情を浮かべると、彼女を抱き寄せて背中を撫でながらこういった。
    「王妃よ、鏡職人の娘だった頃なら、お前を見張る者もいなかったろう。だが今は、お前はこの国の王妃なのだ。父亡き後に可愛がってきた小さき者と別れるのは寂しかろう。だが、今のお前は私だけの王妃ではない。民草を導かねばならん立場じゃ。悪い噂を立てるわけには行かぬのだ。民の為にこらえておくれ」
     すると姫が口を挟んだ。
    「おとうしゃま、カラスさんと遊んだらいけないの?」
     王は王妃を離すと、かがみ込んで姫の目を見ながら応えた。
    「そうだよ。カラスさんとお別れするのは残念だね。でも、召使いたちはカラスさんを怖がっているから、仕方ないのだよ」
     姫のはしばみ色の目にはみるみる涙がわきあがり、そのまま父王の懐に顔を押し付けてしくしくと泣き出した。王は姫の頭を撫でながら、グリムヒルデを見上げて言った。
    「わしは、お前がカラスを愛でるのは、お前がどんな生き物も愛でる優しい女だからだとわかっておる。だが、下々の手前、その噂を放置するわけにもゆかんのだ。わかってくれ」
     そう言われたグリムヒルデも、目に涙を浮かべながら、はい、わかりました、と応えたのだった。
     それを見ていたディアヴァルは、殴り倒されたようなショックを受けていた。
     あんまりだ。自分は楽しいお茶会にお邪魔してお菓子を貰っていただけなのに。彼の胸は引き裂かれるような痛みを覚えていた。これからはこの二人に会いに来ることが出来ないのか……。
     ディアヴァルは、天を仰いで一声大きく「ガァ!!」と嘆きの叫びを上げると、翼を広げて舞い上がった。
     後ろから、姫が泣きながら自分を呼ぶ声が聞こえたが、ディアヴァルは、振り向くこと無く飛び去ったのだった。

     それからのディアヴァルは、もう王妃や姫の側に近寄ることはつつしむようになった。それでも、どうしても王妃のことが気になって、王城の回りをうろついては様子をうかがうことはやめられなかったのだった。
     このくらいは良いではないか。カラスを忌み嫌う馬鹿な召使い共には、他の大勢のカラスたちと自分の区別なんてどうせついちゃいないんだ。どうせ王城のゴミ捨て場には他にもカラスが大勢やってくるんだ。王妃に近寄って馴れ馴れしくしさえしなければ見咎められることもあるまい。
     そして、小さなお茶会に招かれるリスや小鳥たちをねたましく思い、そんな風に妬みを感じる自分をなおさらみじめに感じてしまうのだった。愛らしいと人間が思う者たちは相変わらず受け入れられて、自分だけはけ者だ。やっぱりあんまりだ……。

     そうしてディアヴァルが鬱屈うっくつした日々を送っている間も、日々姫は成長して花開くように美しくなり、王妃グリムヒルデは姫を慈しみ、王は王妃と姫を優しく愛でていた。
     だが、三人のそんな幸せそうな日々も長くは続かなかった。
     ある日、城がざわついていた。日頃は見かけない無骨な男たちが大勢やってきて武具をガチャガチャ言わせて大声で話し合っている。召使いたちは緊張した様子で走り回り、用を足して歩いている。
     やがて武装した男たちは王城の中庭に綺麗に整列した。そこに現れたのは自分自身も武装した王だった。その後ろには、王妃と姫と召使いたちが付き従っている。
     王は中庭に集った男たちに向かって、演説を始めた。隣国が国境を犯した。我が国はこれを迎え撃ち、国境地帯の民草を救わねばならぬ!
     男たちは気勢きせいを上げ、同胞と土地を取り戻すと誓った。
     王は後ろを振り返ると、王妃と姫を招き寄せた。
     二人が王の隣に立つと、王は集まった人々全員に向かってこう言った。
    「わしの留守の間、宮廷とまつりごとは王妃に任せる。賢明なるグリムヒルデであれば、良くつとめてくれるであろう。わしに万一のことあらば、世継ぎは姫となる。その時は王妃はその摂政として国を治めよ」
     そして王は王妃と姫の方を向くと「よろしく頼んだぞ」と言って、二人を抱きしめたのだった。
     王妃は目に涙をにじませながらも泣かないように必死にこらえていたが、幼い姫はポロポロと涙をこぼしながら王に抱きついたのだった。
     そして王は、軍勢と共に城を出て……。
     ついに帰ってくることはなかったのだった。








    【カラス豆知識】
    今日は、カラスの贈り物についてご紹介します。
    「カラス「これ、お礼です。」4年間エサを与え続けた少女に素敵なカラスの恩返し」
    (記事リンク:https://fundo.jp/73693)
    (動画直リン:https://www.youtube.com/watchv=n44g9fQYiXE)
    この女の子とカラスのお付き合い、最初はカラスが食べこぼしを拾いに寄ってきたのですが、そのうち女の子がカラスに餌を上げるようになり、カラスたちも女の子に贈り物を持ってくるようになったそうです。(贈り物の画像は動画の3:07からです)
    贈り物は、ビーズなどの小さな光モノ、なにかの部品などで、彼女の好きなモノを分かっていて運んでくるとのこと。
    他にも、ワシントン州では、カラスたちが餌をくれる男性にペンダントやハート型キャンディ、小石などをプレゼントした例もあるそうです。
    こうしたカラスから人間への贈り物について、米ワシントン大学の鳥類学者ジョン・マーズラフ氏は、“知能が高く、高度な社会性を備えたこの鳥が「自分たちの世界にとって重要な相手との間に絆を築く」からで、その相手に自分を助けてくれる人間も含まれることがある”からだ、と言っています。
    (参考記事「動物たちはなぜ奇妙な贈り物をするのか」より「カラスの恩返し」
    記事リンク:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/122700500/)
    カラスが(餌のためであっても)人間と絆を持ちたいと願って、そのために積極的な行動をとることがある、というのは凄いことだし、嬉しいことでもあるなと思います。
    鳥類学者ジョン・マーズラフ氏には『世界一賢い鳥、カラスの科学』という共著がありますが、大変面白い本で、カラスの色々な面白い行動を読むだけでも十分楽しめます。
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