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    v_ran_tan

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    v_ran_tan

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    現パロのオーカイが温泉旅館でのんびりするお話。現パロなので因縁は消し飛んだしオエの情緒が育っている。

    #オーカイ

    半袖で過ごすには少しばかり寒くなってきた頃、俺はオーエンと温泉旅行に来ている。
    全国各所に人気の温泉街があるが、ここも有名な温泉街のひとつだ。
    テレビでたまたま温泉特集を見て、行きたい、と俺が何の気なしに放った一言が切っ掛けだ。じゃあ今週末、だなんてオーエンが言い出すものだから、慌てて止めたのが懐かしい。今月は買い物をし過ぎたから金欠だった。だが、それを伝えるとオーエンは自分が全額出すのだから関係ない、とばっさり。
    確かにオーエンは俺より6歳も歳上で、仕事もしていて、かなり稼いでいる。パソコンで仕事をしている、ということしか知らないけれど、見るからに高そうなマンションに住んでいるし、着ている物もブランド物ばかりだ。だからきっと、オーエンにとって2人分の旅費を出すことなんて痛くも痒くも無いのだろうけれど、それは俺が嫌だった。
    俺はまだ学生で、色々な面で限界はあるけれど、オーエンとはできるだけ対等でいたい。だから、オーエンに全て頼るのは、嫌だ。
    俺はオーエンのお金目当てで付き合っているわけではないから。2人で楽しむ為なら、自分もその分の出資をしたい。
    自分も出す、と言ったら、資金溜まるまで何ヶ月かかると思ってるの、安宿なんて嫌だからね、なんて言われてしまってぐぅの音も出なくなり、見かねたオーエンが溜息を付きながらも、ご褒美ってことでいいんじゃない、と提案してくれた。
    ご褒美の内容が内容だけに最初は承諾しあぐねたけれど、いつまで待たせる気なの、なんて寂しそうに言われたら、頷くしか無かった。

    そういう訳で、ご褒美旅行の名目でオーエンと2人、この宿を訪れた。

    畳の香りのする部屋なんて初めてで、思わずテンションが上がって畳に俯せに寝転んで胸いっぱいに畳の香りごと息を吸い込むと、優しく、なんだか懐かしい様な香りが胸を満たした。
    そんな俺を見て、オーエンが少しだけ呆れたような、けれど、少しだけ優しい色を乗せて俺を見下ろしてくる。
    「オーエンもどうだ」
    「やるわけないだろ、そんな馬鹿なこと。」
    そう言って、オーエンは部屋の真ん中にある座椅子に腰を下ろした。使い込まれた茶色のテーブルの上にある菓子器を覗き込み、そこから白い和紙風の包みを2つ取り出す。
    人数分で用意してあるはずだから、きっと1つは俺の分だろう。ほんと、甘味に関して見境がない。
    まぁ、オーエンほど俺は甘味が好きな訳では無いから、いいけど。
    「…美味しい…」
    「よかったじゃないか。」
    それに、こんなに美味しそうな顔をして食べてくれるのなら、まぁ俺の分を食べられてもいいか、なんて気分にもなる。
    「ほら。喉に詰まらせるなよ。」
    「僕のことおじいちゃんとでも思ってるの、おまえ。」
    備え付けのポットのお湯で入れた緑茶をオーエンの前に差し出すと、睨まれた。別に、そんなこと思ってるわけじゃない。
    半分開いたままの襖を開けて外を見れば、木造のベランダには露天風呂があり、その外側には紅葉した庭木、奥に見える山並みは綺麗に紅や黄色に色付いていた。
    「おぉ〜 オーエン!すごく綺麗だぞ」
    「よかったね。」
    1度だけこちらに視線を向けたけれど、オーエンの視線はすぐに目の前の茶菓子に戻された。
    なんて言うんだっけ。花より団子、だったか。
    ベランダへの窓を開けて一通り露天風呂を物色。源泉かけ流しのお湯がちろちろと溢れる湯船。手を差し込むと溢れるお湯が僅かに増える。少し熱いけれど、寒くなり始めたこの時期には丁度いいのだろう。
    それから部屋の中へ戻って押し入れを開けてみたり、クローゼットを開けてみたり。
    パタパタと部屋の中を落ち着きなく歩き回る俺を、オーエンは特に文句を言うでもなく、ただ穏やかな瞳で見てくるものだから、なんだか背中がそわそわと擽ったくなる。
    誤魔化すようにオーエンの向かいの座椅子に腰を下ろして、温くなったお茶を飲みながら、オーエンの餌食にならなかった煎餅を口に運ぶ。
    煎餅を1袋と、緑茶を1杯。
    せっかくだし、浴衣に着替えよう。風呂はまだだが、ジーンズのままでいるのもゆっくりできないし、雰囲気も出ない。
    クローゼットから薄いグレーの浴衣を取り出し、羽織ってみる。
    やっぱり、浴衣って雰囲気でるな〜。
    そんなことを思いながら襟を合わせて、帯を巻いて、結んで。そこでふと気付いた。
    「オーエン…」
    「なぁに、って、なにそれ…」
    「俺、浴衣着たことない…」
    いや、無くはないが、自分で着付けをしたことが無い。故に、襟元はだらりと垂れて、結んだ帯も不格好に端が両サイドに垂れている。
    「馬鹿。」
    さっきまで穏やかだったその綺麗な顔が、一気に嫌そうに歪む。
    けれど、オーエンの側へいくと、ため息を付いて呆れながらも手際よく帯を解いて襟を直し、浴衣を着付けてくれた。
    「お、おお〜 すごいなオーエン! ありがとう」
    袖を持って両腕を広げて見下ろした自分の姿は、さっき自分で着付けた時とは天と地の差がある。しゅ、と伸びた襟に、腰の位置で綺麗に結ばれた紺の帯。そんな俺を見てよかったね、とオーエンは一言。

    浴衣を着ると、より一層旅行気分が高まる。今日の予定は特に決めていない。オーエンも特に何も言わないから、今日はこのまま宿でのんびりするのだろう。
    それなら俺も、のんびりしよう。最近はずっとテスト勉強とバイトに追われてあんまりゆっくり出来ていなかったし。
    畳の上にごろりと寝転がると、気持ちよくて、障子を閉めていない窓から太陽の光が淡く入り込んで来るのが拍車を掛ける。
    「カイン。」
    「なんだ」
    「来て。」
    ちょいちょいと手招くオーエンの所へ畳の上を這っていくと、ずりずりと這って移動する俺に少しだけ眉を顰めてながらも、膝を2回叩いて合図する。
    よいしょ、と少しおじさん臭い掛け声と共に座椅子に胡座をかいているその膝に乗り上げて見上げると、オーエンと目が合う前に上から頭を押さえつけられた。
    「ぅあっ、ぷ…」
    「おつかれさま。」
    そのまま1回、2回と頭の上を少し温度の低い掌が往復する。頭を撫でられるのは子供扱いをされているようで少しだけもやもやするけれど、そうされると気持ちよくて、落ち着くのも本当で、まぁ、俺頑張ったし、段々甘やかされてもいいか、という気分になってくる。
    「何読んでるんだ」
    「一緒に読む」
    そう言ってオーエンは俺にも見えるように本を傾けてくれたけれど、そこに書いてある文字の余りの小ささに辟易してしまった。いい、と目を逸らして答えると、だろうね、なんて言ってオーエンはまた俺の頭を撫でた。

    オーエンの膝に懐いたまま、何をするでもなくぼうっとしている俺と、本を読みながら時折思い出したように俺の頭を撫でるオーエン。
    どちらも何か喋るわけでもなく、何をするでもない。
    どちらかと言うと俺は誰かといるとずっと話してしまうタイプだし、賑やかな方が好きだけれど、不思議とこの空間は嫌じゃなく、寧ろ居心地がいい。
    オーエンは体温が低いけれど、ずっとくっついていると温かくて、頭を撫でられるのも気持ちが良くて、静かで穏やかな空間は、心が満たされる。そうすると次第に眠気がやって来る。
    湖の湖面に揺蕩っているような、穏やかな睡魔。
    「寝てていいよ。」
    「ん……」
    「疲れてるんでしょ。」
    「ん……」
    空気を揺らさないように小さくゆっくりと落とされる声が心地いい。耳から入り込んだ優しい声が脳みそを満たして、全身にじんわりと広がっていく温かさに抵抗せずに、俺は素直に目を閉じた。





    「…ン…カ…ン」
    「ん…ぅ 」
    「おはよう。」
    「んー、おはよう…」
    優しく揺れる体と、声に意識が覚醒する。数回瞬きを繰り返すと視界がクリアになり、声が聞こえる方を見上げるとオーエンの顔が間近にあった。
    よく寝てたね、というオーエンの声にぼんやりしたまま頷いて返し、オーエンの膝に上半身を預けたまま伸びをする。
    「夕飯の時間だって。」
    その声に窓の外を見れば空は暗くなり、星が瞬き、その手前にある露天風呂はオレンジ色のライトに照らされている。テーブルの上には所狭しとたくさんの料理が行儀よく並んでいて、この部屋には自分たち以外の人間が入ったという事だ。
    「〜〜っ」
    つまり、俺がオーエンの膝の上に乗って寝ていたのを見られたという事でもある。
    どうして起こしてくれなかったんだ、と文句を言うと「起こしたじゃない、今」と返ってきた。
    「遅すぎる……」
    「別にいいじゃない。何か問題でもあるの」
    「ある み、見られちまっただろ」
    「だから」
    だからって、だからってそりゃ、
    「は、恥ずかしい……」
    言葉にするとより羞恥が湧いてきていたたまれず、オーエンの膝に顔を押し付ける。今日からあと2泊もあるのに、仲居さんたちにどんな顔をしていいのかわからない。起こしてくれればよかったのに。オーエンの膝に向かって唸っていると、はぁ、と頭上から大きな溜め息が落っこちてきた。
    「なぁに。おまえにとって僕は恥ずかしい恋人なの」
    「ち、ちがっ そういうことじゃなくて…」
    違う、オーエンのことを恥ずかしい恋人だなんて思ったことなんてない。オーエンは、自慢の恋人だ。かっこよくて、美人で、可愛くて、仕事もできて、スタイルもいいし、意地悪だけど、優しい、自慢の恋人だと自信を持って言える。
    「ふーん。じゃあ、なに。」
    「…お、俺が、その…あま、甘えてる所を見られたのが、恥ずかしい……」
    「……」
    これに尽きる。
    言葉にすると余計に恥ずかしい。甘えていた。存分に。それを知らない人に見られたのが恥ずかしい。というかオーエン以外に見られたのが、恥ずかしいのだ。
    「おい、なんか言えよ…」
    「…かわいいね、おまえ。」
    懐いていたオーエンの膝に頬をつけたまま見上げると、目が合ったオーエンがふわりと微笑んだ。きょとりと丸くなっていた瞳を細めて綺麗に笑むから、目が離せなくなった。
    ふふ、と小さく声を漏らしながら口元に手を当てて、反対の手で俺の頭を撫でる。
    「ほら、起きて。ご飯食べるでしょ」
    頬が熱いのはたぶん、オーエンのせいだ。
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