喧嘩「いい加減にしろ!曦臣!」
炬燵をバンッと叩いて突然恋人が怒り始めた。曦臣からすれば何が何やらよくわからない。食後に二人でお茶をすすりながらテレビを見て寛いでいただけだ。
「阿澄?突然どうしたの」
口を開けたまま小首を傾げてしまう。何に怒ることがあるのか見当もつかない。
「突然じゃない。俺はずっと我慢していたんだ。」
江澄は眉間の皺を深めながら炬燵に置いた手をわなわなと震わせている。今自分は怒ってます、ということがこれ以上なく伝わりやすい表現をしている。
「同棲するんだったらお互い妥協することだって必要だと言い聞かせてきた。価値観が違うことも受け入れたり慣れていくことだって大事だとわかっているつもりだ。だが、もう我慢できない!」
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