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    曦澄ワンドロワンライ。第三十三回。お題。旅。
    開催ありがとうございます。
    過去と現世を行き来させてみました。
    うまく伝わるといいなぁ…。

    #曦澄ワンドロワンライ
    eiChengWangdrooWanglai.

    過去と現世の狭間で宗主の執務を全うし、余命も短くなった江晩吟は先立った藍曦臣の後を追うように息を引き取った。
    蓮の花が咲き誇る暑くなりそうな早朝に江晩吟の命は終わりを迎えた。

    二人が生まれ変わった現世では、海岸沿いの道路の急斜面の道を自転車で2人乗りをして藍曦臣が自転車を漕いでいる。
    藍曦臣の腰に両腕を回し、しがみついている江晩吟は声を上げて高らかに笑っている。
    江晩吟が現世でやってみたかった二人乗り自転車。
    太陽が照りつける季節。生暖かい風が自転車で道を下るときに吹いて髪がなびく。
    額と首に流れ出る汗をタオルで拭き取りながら海辺へ向かう。
    車はレンタカーを借りて駐車場に停車しているが、江晩吟がレンタル自転車の借り出しを見つけて

    「自転車に乗りたい」

    と言ったのが切っ掛けで、二人とも交代交代で自転車を漕いでは登ったり下ったりを繰り返している。
    車や電車社会の現代社会で、非日常を味わいたいという事で、海へ旅行へ来ている。
    海は蓮花塢の畔を思いおこさせる。
    というわけで、非日常を味わうということで自転車に乗っては、汗は出るが年甲斐にもなく楽しんでいる。
    自転車を漕いで汗をかいたあとは、靴を脱ぎ捨てて波しぶきに身を任せて子供みたいにきゃっきゃっと騒ぐ江晩吟。
    波しぶきにうたれた後は、上半身裸になり、海水パンツに着替えた江晩吟。
    海水浴場ではしゃいでは、綺麗なターンを披露しながら水飛沫をあげてクロールで泳いでいる。
    泳ぐ姿をビーチパラソルの日陰の中から微笑ましく目を細めながらみているのは藍曦臣。
    筋肉質な体質で、やはり、眉目秀麗ということもあり、他の女性から声をかけられたりもしているが、やんわりと断っている。
    藍曦臣の目には人魚姫みたいに美しく水の中で踊るように泳ぐ江晩吟の姿しか映っていないのだ。
    海辺の砂浜の波しぶきに連れられるかのように藍曦臣も海水浴場へと泳ぎにやってくる。

    「江澄、貴方は泳ぐ姿も美しいです」
    「女性から声をかけられていたのによくそんなことが言えるな」
    「私の瞳の中には江澄しか映っていません。信じていただけますか?」

    江晩吟は藍曦臣にははっと笑いかけ、濡れた髪を掻き上げる。
    正にその通りだ。
    日焼け止めも塗らず泳いでいる姿を江晩吟を熱い眼差しで見つめていたのは藍曦臣だけ。
    藍曦臣は江晩吟を目で追い続け、真夏の誘惑を抑えながら水も滴る麗しの姿を眺めていた。

    「信じるさ。藍渙の下半身が我慢ならないと言っているのが証拠だ。だが、夜までお預けだ。俺はまだ泳ぎたい」
    「分かってましたか…今すぐにでも岩穴に隠れて誰もいないところで抱き合いたいです」

    抱き合いたい…藍曦臣の不埒な考えは今の江晩吟には通用しない。
    江晩吟は時間も現実も忘れてただ一心不乱に波の飛沫を浴びて泳ぎたいのだ。
    こうして、真っ赤な夕陽が波の色と空の色を染め上げるまで水平線に夕陽が沈むまで、気が済むまで、江晩吟は時間を忘れて泳ぎ続けた。
    蓮花塢で産まれ育って畔で泳ぐ生前の過去を思い出すかのように、ただただ、泳ぐ姿は美しかった。

    夜。
    誰もいない海辺に二人で来ては、江晩吟が藍曦臣の肩に寄り添っている。

    「…海に連れてきてくれてありがと」
    「海に行きたいって言っていましたからね。日常生活を忘れて楽しめていますか?」
    「うん…藍渙、今夜は寝かせないで抱いてほしい」

    頬を赤らめながら照れ臭そうに普段言わない言葉を江晩吟は言ってみた。
    夏の解放感は人を大胆にさせるのかもしれない。

    「可愛い人ですね」

    藍曦臣は江晩吟の頭をよしよしと撫でる。
    愛おしくてたまらない大切な人。
    こうやって時間を共にできることが何よりの幸せ。
    過去は立場もあり素直になれなかった。
    現世でお互いに生まれ変わって、恋人同士として傍にいる。
    片時も離れたくない。
    二人きりでいるときだけはどうか夢をみてた過去を現実として受け入れさせて下さいと、二人は、神に誓った。
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    takami180

    PROGRESS続長編曦澄10
    あなたに言えなかったことがある
     魏無羨は結局、藍曦臣からの伝言とやらを口に出さなかった。尋ねても、「同じようなことは伝えた」の一点張りである。
     江澄は聞き出すことを早々に諦めた。片付けを終えて私室に戻る、その途中で行き先を変えた。
     泊まる者のいない客坊は、当然なら静かである。闇に沈む室内を見回しても、誰かの名残は見当たらない。
     藍曦臣の滞在中、彼はいつも江澄の私室にいた。茶を楽しみ、楽を合わせ、碁を打った。
     それでも、ここは彼が使っていた部屋である。
     江澄は暗闇の中を進み、牀榻に腰掛けた。
     藍曦臣はここで何を思っていたのだろうか。
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     魏無羨の言った「別れたいの 1909