ロンリーボーイの成れの果て なんであんなことを言った?
それはオレの後悔の権化だったんだろうか。
タケミっちに暴言を吐いて以来、会いに行けずにいる。
どの面を下げて会えばいいんだと。
相棒はバジさんに東卍を託された。その東卍はもうない。
だからもう、あの言葉の役目は果たしたはずだ、なんて。
東卍はマイキー君そのもので、マイキー君はバジさんの幼馴染で。
つまりはマイキー君を助けてほしいと託したんじゃないのか。
考えないようにしていた。
タケミっちに出会わないオレのこと。
オレはバジさんが死んで、抜け殻になって。あの時確かに東卍を抜ける気でいた。
オレを引き留めたのはマイキー君、そしてバジさんの最期の願い。
相棒って呼んだ相手を独りぼっちにして抜けるのは、あまりにも無責任だと。
相棒。オレがそう決めた。
ダチとか、仲間とか、呼び方なんていくらでもあるのに。
オレはあいつを相棒にしたんだ。
相棒がいなけりゃ、東卍を抜けてただろう。バジさんが死んで、一虎君も殴り殺されていた世界なら、バジさんの遺志を知るはずもない。
バジさんと東卍はオレの中の柱だった。
柱が折れたオレは、自棄になっていたんじゃないだろうか。巨悪化していく東卍の名に失望したんじゃないだろうか。
何度も何度も過去をやり直したタケミっち。
未来で死んだ誰かを救うために、いつでも必死で。
タイムリープのことを知らされた後だって、全面的に応援してやろうと思えたわけじゃない。
なんでお前がそこまでしなきゃいけないんだ、なんていつもどこかで思っていた。
マイキー君クラスの化け物がうようよいる中で、最弱のタケミっちがいつ死んでしまうか気が気じゃなかった。
ヒーローじゃねぇよ、誰かを重ねるんじゃねぇよ。
表現が正しいのかわからないけど、一目惚れだった。
誰かを護るために必死なあいつの特別になりたいって、そう思った。
でもあいつは、中身が26でもガキ臭くて、必死すぎて視野が狭くなる癖があって。
弱いのに、諦めないで足搔くから、それが一等輝いて見えて。
でもそれは、燃え尽きて消えてしまう流れ星みたいで。
そんなの嫌だ。ずっとそばにいてほしいのに。
バジさんがいなくなって、お前までいなくなったらオレはどうしたらいい?
そんな自分勝手な怒りだ。
バジさん、エマちゃん、ドラケン君。
神様は何で奪っていくばかりなんだろう。
なんで相棒に、何もかもやらせるんだよ。
違う。
あいつはいつだって、何度だって自分から手を伸ばしていた。
逃げ癖があるなんて言うくせに、一度だって逃げなかったじゃねぇか。
布団被ってもうほっといてくれよなんて、一回も言わなかった。
あいつは最初、ひとりぼっちだったって言ってた。
何もかも捨てて、ひとりぼっちだった。
だったらオレは離れちゃいけない。
何のための相棒だよ。
「バジさんオレ、あいつを東卍から奪います」
相棒はまた立ち上がる。
マイキー君をひとりぼっちにしないために。
その時オレは何をしている?
置いてきぼりなんか絶対許さない。
「新しいチーム名はサウザンドウィンターズだ!!」
『千冬』の総長が花垣武道って口上、気分がいいじゃないか。
ずっとオレの名前がついて回るんだ。
うげぇ、なんて嫌そうな顔をしながら断らないだろうってこともわかるんだ。
だってオレは、あいつの相棒なんだから。
終わり