結婚しよう、雅。 「クリームヒルトさんはお綺麗ですよね…お召し物もよく似合っていますし」
「あらそう?ありがとう、雅子」
雅子の唐突な言葉にそうクリームヒルトは返す。そしてクリームヒルトは笑みを浮かべた。
「…この服、気になる?」
「えっ、あ、いえ…いや、違わないといえば違わないんですけど!その、西洋の服に興味があって……っ」
そう言って雅子は顔を赤く染めた。
「それならミスクレーンのとこに行きましょう。前から雅子に服を着せたいと言っていたし初回はサービス無料らしいし」
「え、あのっ…!」
「ほら、行くわよ!」
ぐいぐいと手を引かれ私はクリームヒルトさんと共にミスクレーンさんの工房へお邪魔することになったのだったーー。
***
あれ?と首を傾げる。当たり前と思っているわけではないが大抵雅が出迎えてくれない時は何かある。そう思った僕は足を進め雅を探し出す。
「お、高杉殿!そちらにいたか!」
「馬琴…」
「君の奥方だがな、今ミスクレーンのとこにおるぞ。いやあ、あれは深窓の令嬢といった出立ちで素晴らしかったぞ!わしの筆も進むというもの」
それを聞き僕は走るように雅を求めミスクレーンの工房の戸を叩いた。
「雅!」
「きゃっ!?」
中に入れば多くの女性サーヴァントたちに囲まれた雅の姿が。雅は西洋式の服を着ていた。しかもそれは…、
「ウェディングドレス?」
僕の声にびくりと雅は肩を震わせた。閨でした普段見ない真っ白な肩が晒されている。純白のドレスを見に纏った雅はこの世の誰よりも美しく見えた。
「いえ、あの、えっと…!」
「あはは、似合う。すごく似合うよ」
「きゃっ!」
雅は驚いたような声を上げるが僕はそれを気にせず抱き上げた。
「今から結婚式でもする?雅」
「なっっ…」
赤く赤く染まっていて雅の肌は白いからよく見えていた。
「ウェディングになったのはミスクレーンの案?」
彼女は頷いた。
「いやあまさかこんなにいいものが見られるとは。サーヴァントになってみるものだな」
僕に抱き上げられたままの雅は不思議そうな顔をしていたが僕にとってはそれすら愛おしく見える。
「ありがたくいただいていくとするよ。ああ、そうだ」
そう言って僕は雅を抱き上げたままミスクレーンに近づく。
「依頼も受けてるんだろ?雅専用の作って欲しい服がたくさんあるんだ、もちろん金は出す」
色々と構想を練っていたことを話すとミスクレーンは興奮した様子で近々依頼することを伝えそして僕は、僕たちは部屋へと戻るのだった。
***
「いやあ、それにしてもよく似合ってるな…」
ベッドに腰掛けた雅をまじまじと見つめると恥ずかしそうに雅は身を捩った。
「み、見過ぎでは…?」
「何回見ても足りない。というかウェディングドレスとはいえ肩がこんなに出てるなんて思わなかったし普段と露出度が高くてちょっと…」
「晋様!」
「あはは、悪い悪い。だから怒らないで?」
そう言えば雅は頬を赤く染めたままじとっと僕を睨んだ。あ、やばい。かわいい。と思いながら僕は雅の隣に腰掛けた。
「西洋の服、気になってたんだ?」
「はい…まさか、婚礼服を着させられるとは思いませんでしたが」
「似合ってるよ?」
「…お気に召したようでなによりです」
雅の照れ隠しであることが分かっていたから僕は思わず笑う。
「やっぱり式上げようか」
「まだそんなこと言ってるんですか?」
「君の美しさを見せつけたい気分なのさ」
「式なんていりませんよ…ただ、私は…あなたといられればそれだけで…」
殺し文句と言えるような言葉だったが雅はきっとそんなつもりはない。とぐっと本能を押し殺した。
「あ、でも気になっている…というかほしいものは一つあります」
「なんだい?」
「結婚指輪というんでしたっけ、夫婦となって二人がつける誓いの指輪。それをつけてみたいとは思っています」
「僕と?」
「あなた以外の誰とするんです」
「雅の口から聞いてみたかったのさ」
そう言って雅の小指に自身の小指をそっと絡める。小指を絡め顔を近づける。瞼を閉じた雅により一層愛おしさを感じ優しく口付けをした。
「やっぱり式をあげよう、雅」
「まだそんなことを言って」
困ったような顔をする雅が可愛くてまた口付けをする。こうして僕たちの甘い時間は過ぎていったーー。
-了-