夢現(颯新) 何をしていてもつまらなかった。やりたいことも夢もない。勉強もスポーツも大概出来たが、一位を取れるほどでもなかった。かといって、そこから血の滲むような努力を重ねたいと思えるほど、打ち込めるものも見当たらなかった。
そんな頃だった。あいつの無謀とも思える夢に乗っかったのは——。
誘われてライブハウスに足を運んだ、運命の日。ハコから外に出ても観客の熱気は留まることを知らない。
「こんな最高な夜ってあるのかよ!」
「次は、俺達がこの夜を超えるパフォーマンスを披露してみせる」
あちらこちらで興奮冷めやらないミュージシャン達の声が響いた。夜も深くなってくる時間だというのに、音楽が鳴り止む気配はない。
俺たちは会話らしい会話もせず、ふらふらとおぼつかない足取りでビビットストリートを後にした。
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