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    トミコです。まほやくのファ右

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    革命軍時代にマナ石を食べるファウストのはなし

    #まほや腐
    mahoyaRot
    #ファウスト
    faust
    #ファウスト・ラウィーニア
    faustoLawinia

    マナ石とファウスト 乗せたばかりの時には冷たさを感じさせていたそれは、指を閉じて握りしめていたこともあり、ぬるく温まっていた。
     重さは、その大きさから想像するよりは少しばかり重たいのだと思う。初めて手にした際にはそう感じた。何度目かの今となっては、このくらいの重さということはわかっている。わかっていても、やはり、少し重い。
     元のおおきな塊から砕けたはずのものであるのに、指で撫でるその表面はつるりとしてなめらかである。長く川底にあった石のように、指を、手を、そしてこれからそれを含む口の中を傷つける鋭さはない。
     不思議な石。命のかけら。マナ石、と呼ばれる、かつて魔法使いであったもの。
     かつて、といってもそれは昔のことではない、今日の戦いで命を落とし、石となったもの。戦いが始まる前まで、始まってからも、同じ目標を掲げ、肩を組み合った仲間であったもの。
    『石になったら、そのときはどうか、食べてください』
     一部は家族のもとに、一部は戦友たちに。全てとは言わないからあなたの力に。と乞われるようになったのは、なにもここ最近のことではない。革命軍に参加している魔法使いが初めて命を落としたあとからだった。
     ファウスト含め、多くの魔法使いたち、もちろん人間も魔法使いが石になる瞬間というのは初めて目にするものだった。望まれがちな魔法は治癒や後方支援ではあるが、だからといってその力ゆえに後方支援が主だったわけではない。
     まだまだ戦いの規模もそれほど大きくなかった、今思えば小競り合い、といえる大きさだったし、人員だって少なかった。部隊を分けられるほどの人数もいないから、やれることといえば前衛、後衛、退路確保などの役目はあれど、全員出撃。
     魔法使いは圧倒的に人数が少なく、魔法の扱いにたけた者だってそれほどいなかったから、ほとんど人間と同じ戦場に立ち、同じように戦った。
     精霊の加護のもと、幾分かの幸運は味方していたのかもしれないけれど。
     そんな中で、幸いにも、というには状況が状況だけれど、最悪を戦場の片隅で仲間に看取られずに命を落とすよりは、基地の療養所で仲間に囲まれて看取られる方が幸いといえる中で、死を迎えた魔法使い。
     彼は、ファウスト含む、実年齢と外見がまだ人間と同じ速度で成長しているものたちが多い中においては、人間の寿命を超えて生きていたひとだった。ただ願うだけでしか魔法を使うことができなかった若者たちに、箒での飛び方、魔法の仕組みや使い方を教え、先生、と呼ばれていたひとだった。
     臨終の間際に、まずは若い魔法使いを枕元に呼んだ彼は、はじめに、そう願ったのだ。
    『売って金にして軍のために使ってくれても構わない、だができることなら、食べてほしい』
     魔法使いは死んだら石になるのだと、教えてくれたのもかれであった。その石が、マナ石であるということも。
     誰かもわからない者の手に取られるならば、仲間のちからになりたい。仲間の中でも選んでしまうことを許してほしい。軍資金にすることがちからになるということになるけれど、みな仲間であるのだけれど、お前たちの身体の中で力になりたい。それはこのマナ石になった身体でしかできないから。
     そう願う己の中にある矛盾のようなものを笑いながら、かれは言ったのだ。
    『どうするかはお前たちの自由だ。わたしはわたしの心からの望みを伝えただけ』
     そうしてかれは目を閉じ、そして、美しい音を立てて石になって、砕けた。
     無数のかけらになったかれを集めて、魔法使いたちに渡したのはファウストだった。あなたはどうするの、と口には出さぬが問われる中で、ファウストは手にしたそれを天幕の明かりにすかしてみた。透明感はあるのに向こう側は見えない、不思議な煌めきの、命だったもの。
    『かれの死を、アレクに伝えてくる』
     視線の問いかけには答えずに、ファウストは静かに言ってその場を離れた。
     この石を食べるのかどうか、決めかねているような、決まっているような、おそらく自分はかれの願いを叶えるだろうと確信しながら、けれどそれはまだ他人事のようで、どんな言葉にもまとまらなかったからだ。
     涙は出なかった。悔しくて苦しくて、けれどもそれ自体は何度も経験してきたことで。日常ではないけれど、いつでもすぐそばにある出来事。慣れているといえばそうだし、けれど慣れることはないのもまた事実だった。
     ただ、それでも生きていくことができる己を知っている。そこに己の命がある限り、生きて進んでいかねばならない。
     少しだけ思い出に浸ってから、ファウストは手にしたマナ石を空にかざした。
     これで、もういくつめだろうか。いや、分かっている。分かっていてそんななことを考える。零れ落ちた命は数えきれないほどではないけれど、数えていられないほどあった。失われた以上に人間も魔法使いも同胞は増え、戦いの規模も以前よりは大きくなっているし、これからも大きくなっていくことだろう。
     感謝と祈りを捧げ続けてもきっと足りない。いつかそれは何かしらの形で己に戻ってくるのだろうとファウストは思っていた。数多の屍の上をいく旗を先頭で振っているのは己なのだ。
     きみの命に感謝を。そしてどうか、安らかに。
     祈りを捧げ、ファウストは両手で握り込んで体温の移ったそれを、持ち上げ、唇を寄せた。ひとつ、口付けてそっと口の中へと押し込むと、舌の上に乗せる。質量を感じたのは一瞬で、味もなくただ、どろりと溶けたものを飲み込んだ。
     食べられるのかと興味を持ったアレクが以前、魔法使いのものではないマナ石を同じように口に含んでみていたけれど、そのときは石は溶けることもなく形を保ったままであったので、きっとこれは魔法使いの体内にはいることで起きる現象なのだろう。
     魔法使いなのに、魔法使いのことを何も知らない。魔法だってきっともっと、使い方や使い道があるはずなのだ。最近、そんなことをよく考える。
     食道を通って胃の腑へ落ちたものが通過した場所からじわじわと熱を持って、それが体内を巡っていく。乾いた体に水を飲んだ時のような、冷えきった体に温かいものを口にしたときのような、似ていて非なる、おそらくは魔法使いしか知り得ぬ感覚。
     かのひとであった何かが染み込んでいく。目の奥までも熱が巡って、吐く息も熱く感じた。それが己の体が冷えているからなのか、体内が熱を持っているからなのか、それとも違う要因からなのかはわからない。
     そしてただ祈る。
     熱が引いて体に馴染めば、それはもうファウストの一部となっていた。
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    Replies from the creator

    t0mic0x0shi

    DOODLE書きたいとこだけ!
    ハウルパロです。
    【フィファ】フィガロの動く城(書きたいとこだけ)フィガロの動く城(書きたいとこだけ)

    「ああ、いたいた。探したよ」
     どこからか、この場ににつかわしくない滑らかで穏やかな声が聞こえると同時に、死角から伸びてきた腕がファウストの眼前で揺れる。鮮やかな緑の上等そうな服の袖、金の繊細な装飾品で飾られた手首、その先にある節ばった手がゆらり。人差し指の根元にはめられたこれまた金の指輪の石の赤さが印象的だった。
    「さあ、行こうか」
     いまにもこちらの腕を掴まんとしていた衛兵もどきとファウストの間に身を滑り込ませてきた存在が、不思議な力か、それともただ突然現れることで与えた驚愕からかで彼らの動きを止める。
     風もないのに柔らかく揺れる薄群青の髪。身長はファウストよりも高く、すこしだけ見上げる格好になる。踊るように男がファウストに向かって振り返ると、服の裾が緩やかに広がった。曇り空のような無彩色の中に若葉色の煌めきを持った不思議な色合いの目を細め、これまた場に似つかわしくない笑みを浮かべた彼は、衛兵のことなどどうでもいいことのように、ファウストだけを見て、手を差し伸べてくる。
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    t0mic0x0shi

    DOODLEアレクはなぜファを火刑にした?ということに悶々として得たひとつの妄想。カプ要素ない。
    アレクはもっと賢いよー!と思いつつ…なんかなんとか無理やり辻褄合わせる方法ないかな!?

    あとこの世界では、ファとレの不在時にフィは離脱してて、その時に軍にいた者たちから自分の記憶を奪ってる設定です
    ファは一年、特定の人ではなく、修行の旅に出て強くなって帰ってきた!と思われてるような感じ
    【アレクの話】碧落に願う碧落に願う

     この戦いの日々が、いつの間にやら革命と言われたこれが終わったら、お前は何がしたい?

     ”大いなる厄災”と呼ばれる大きな月が闇を連れて太陽の代わりに空を飾る頃、焚き火ゆらめくいつかの夜。親友とそんな話をした。
     それは一度だけではない。これから戦いに向かう夜、あるいは命からがら一つの戦いを終えた後。しょっちゅう、というほどではなかったけれど、時折、思い出したように。
     人間と魔法使いと、同じ軍にいても部隊や役割が違っていて、規模が大きくなるにつれいつも仲間の誰かが周りにいた。宴や軍議が終わればそれぞれ個々に別の仕事が待っている。そんな中で不意に、時にはどちらかが意図を持って二人きりになった時。
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