ブルーアワーに、君と そうか、夜明け前にはこんなに鳥が鳴くんだな。知っていた筈なのに、すっかり忘れていた。
あの頃、家族の誰よりも先に起きて、コロと散歩に行った。遠く日の出を臨む河川敷はまだ寒くて、暖かいコロを腕に抱いて一休みして、また歩く。周りが明るくなるまでずっと歩いて、人の姿が増え始める前に帰った。
「散歩に行く」
と言ったら、サテツ君は飛び起きて身支度を始めた。俺様がすっかり着替えていたから慌てたんだろう。一緒に来いとは言ってないんだが。
家を出る前、体調はどうかと聞かれた。調子が悪かったら散歩になんぞ行くか。……まぁ、腰は少々痛むが、いつものことだ。
外は、存外に寒かった。
川や地面に靄がかかっている。こんな時間から走っている馬鹿が居たから、仕方なく道を外れてそのまま土手に降りた。
腕の中のコロはとても冷たい。
だから自分が暖めてやらねばならないのに、フラスコは全く熱をもってはくれない。
「暖めてくれ」
と伝えるといきなり抱きしめられた。違う、そうじゃない。スリングを伸ばして指示をすると、彼は素直にフラスコを暖め始めた。
「寒く無いですか?」
「寒いな」
だから、大きな体に身を寄せて暖を取った。全く、デカ過ぎて腕に抱くこともできやしない。
そうして何度か一休みしながら周りが明るくなるまで歩いて、人の姿が増え始める前に帰った。