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    dps94kakuriyo

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    クラノス、サテヨモ、フククワのネタ帳からSS化したものをここにあげたり、文庫の作業場だったり。他にもいろいろ。

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    「大人のねるねるねるね」を一緒に食べる大人達

    #サテヨモ
    iwomo

    大人の「これはアレか、練るやつか」
     俺が買ってきたものを指差しながら、ヨモツザカさんは「最近話題のやつだな」と、意外に興味深そうな反応をした。
    『大人のねるねるねるね』——子供の知育菓子が大人向けで発売されるのは最近よくあるけど、これは『ねるねるねるね』にワインのアロマを足したやつらしい。ワインのアロマってなんだろう?
    「そうなんですよ。コンビニ行ったら売ってたもんで、面白そうだなって。でも、ヨモツザカさんご存知だったんですね」
     ああ、まぁな。と、彼が曖昧な返事をする。
    「ワインのアロマ?」
    「あ、それやっぱり謎ですよね。なんかトッピングすればスパークリングワインみたいになるらしいですよ。折角だし、俺作ります!」
     袋をハサミで開けて、攪拌用のパーツを取り出す。取説は一応目を通す方だ。理解できてるかは別として。
     デスクにあった水を借りて、早速チャレンジを開始だ!
    「えーっと。粉に水を入れて……スプーンで混ぜ」
     バキン。
    「あ」
    「あ」
     二人で顔を見合わせる。やってしまった。かき混ぜ始めることに意識が行きすぎてて、底の浅い容器なのにスプーンを勢いよく突っ込んでしまった。
    「……す、すいません」
    「キヒヒ……、いや、予感が当たりすぎてむしろ面白い」
    「えぇ……」
     予想されてたのか。まぁ面白いなら良……いや良くない。
    「貸せ。俺様がやる」
    「え?」
     ヨモツザカさんは棚から消毒済みの攪拌棒を持ってくると、俺の手から容器を奪った。仮面の機能で判別できるのか「樹脂の破片は入ってない。安心しろ」と、取説を横目にガラスの攪拌棒で粉を混ぜ始める。
    「……まるで実験で混ぜるアレみたいだな」
     アレってなんだか分からないけど、怖くて聞けないからスルーした。
    「……俺様は駄菓子を食べたことがなくてな。駄菓子というか、市販の安い菓子全般を禁止されていた」
    「……禁止?」
     なぜですか、と問いそうになったが、その後に言うべき言葉に迷ったからやめた。きっと、俺の知らない世界だ。
    「フン、今でも見るだろう。食品に含まれる添加物の有害性だのどうの、という奴だ。……俺様の家は、まさにその典型だった。実にくだらん」
     話を聞く間に、容器の中を粉はパッケージの通りの滑らかなクリーム状のものに変わっていた。すごい。ちゃんとした見た目だ。
    「ふむ、で、このドーナツの上に乗ってるようなカリカリを振りかけるのか」
     ドーナツ……ゴールデンチョコレートのことだろうか。
    「多分、これが口で溶けてシュワッとするんでしょうね」
    「振りかけてくれ。加減がわからん」
    「え? は、はい」
     トッピングの袋もハサミを使って開けて、まずピンク色の方に白っぽい奴をふりかける。こ、これで良いのか……? シュワシュワするのか? それより自分で買ってきてなんなけど美味しいのか? 何しろヨモツザカさんの初駄菓子だぞ。
    「出来たか。じゃあ食べさせろ」
    「え」
     給餌を待つ燕の雛のように、ヨモツザカさんが目の前で口を開いた。えっ、これって俗に言う「あーん」て奴か? あーーーマジかよ写真撮って一生残したい。ラボから叩き出されそうだけど!
    「それとも先に食べるか?」
     コテンと頭を傾ける仕草が可愛い。じゃなくって!
    「いえ! さ、ささ先に食べてください! せっかくなんで! 可愛いんで!」
    「は?」
    「あああっ! と、とりあえずアーンしてください!」
     泣きそう。
     俺は攪拌棒にねるねるねるねをたっぷり乗せて、シュワシュワの素も付けて、ご希望通り彼の口に運んだ。あ、ヤベェちょっと上唇に着いちゃったぞ。
    「……どうですか?」
    「……うーん……そうだな。ワインの味かどうかはさておき、確かに口の中で、シュワッとしている」
     俺が付けた上唇のものもペロリと舌で舐めとって、
    「なかなか、悪くないな」
     と薄ら笑って言った。…………なんだこれ、エロいな。
    「すっげぇエロい」
    「は?」
    「ファーーーーー! お、俺も食べていいですか⁉︎」
     いや、この人が何かを食べてくれるだけでも嬉しいのに、今まで食べたことない駄菓子で喜んでくれるとかもう嬉しすぎて泣きそう。あと、鎮まれ俺の俺。
    「ほら、口を開けろ」
    「は、はぃぃぃ⁉︎」
    「早くしろ、垂れるだろうが」
     俺は促されるまま慌てて大口を開けて、ヨモツザカさんからのねるねるねるねを迎え入れた。……口の中に広がる赤ワインぽい味と、シュワシュワしたアレ。正直口の中がしっちゃかめっちゃかだ。これ、まだ片方だけだろ。あとひとつ白いやつが残ってるけど、同じようにアーンってやり合うのか? 
    「どうだ?」
    「は、……恥ずかしいです……」
    「味は?」
    「悪くないです……」
    「そうか」
     ヨモツザカさんは、口角を上げて満足そうにしている。
     いつも、二人でもっとヤベェことしてるのに、攪拌棒で間接キスとか、食べさせ合いとか、意識するとドキッとしてしまう。彼の笑顔を見ると、嬉しさが湧き上がってきて落ち着かなくなる。なんだろうなぁこれ、なんか。
    「じゃ、またアーンしてください」
     今度はシュワシュワをもっと足してみる。まだまだ残りはあるから大丈夫。素直に口を開けるヨモツザカさんがやっぱり可愛くて、たまらなくて、攪拌棒を引き抜いたらそのままキスをした。
     舌の隙間でシュワシュワが弾けて、アルコールなんて入っていないのに、酔ったように夢心地になってしまった。

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