転生パロるいつか「忘れないで、王子様。僕は君を追い続ける。たとえそれが来世であっても。君は僕から逃げられないんだよ」
闇の中から聞こえた言葉に司ははっと目を覚ます。ここ最近同じ夢ばかり見る。奴が自分に近づいてきてるのだろうか。奴と言っても司はその相手が今世でどんな姿をしているか知らない。知っているのは名前と前世の容姿のみ。前世の容姿は今世にも引き継がれるのか司の容姿は髪が短い以外はほぼ前世と変わらない。小さい頃は夢に見るそれが前世とは分からなくてそれに気づいたのはいつの事だったか。夢の奴と司は前世では恋人同士だったらしいが、何らかのきっかけで別れたらしい。その辺りの記憶はいいのか悪いのかすっぽり抜けてしまっている。それ以外は全部覚えていると言うのに。
「天馬さん、最近調子いいですね、お肌もつやつや」
「ちゃんとケアしてますから。いつもお疲れ様です。助かってます。」
楽屋でスタッフにメイクしてもらう。司は今世では俳優になった。いわゆる芸能人という奴だ。そんな司も今年で25。そろそろ色恋が噂される年齢なのだが浮いた話がひとつもない。理由は簡単。ハニートラップをしかけた相手が司に惚れてしまうのだ。幼い頃からスターをめざしてきた司はスターのスキャンダルは致命的だと気づいていたのだ。それは大きくになるにつれ宜しくないこと、ファンを裏切るものだと認識するようになった。ファンに恥ずかしくない自分でありたい。いつの間にかそれは信念になってもいた。
「喉、かわいたな。」
時間はまだある。飲み物を買いに行こうとドアを開ければ人にぶつかった。咄嗟に謝り相手を見れば派手な紫が目に映る。新人だろうか。司は気づけば彼に話しかけていた。
「すまない、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。」
「始めてみる顔だが新人か?」
「まあそんなところ。一度やめたんだけど好きな人に会いたくてね、戻ってきたんだ」
「出戻りか。オレの名前は天馬司。お前の名前は?」
司の問いかけに青年は一瞬キョトンとするものの何を納得したのか司の手を取って笑って自分の名を名乗った。
「僕の名前は類、神代類だよ。司くん」