大英雄と神王と「地上にあってファラオに不可能なし、万物万…」
「黙ってろ」
またセリフがかぶった。神王様は露骨に鼻白んで副長へ怒りの視線を送る。己の誠しか見えていない副長は、憤然とした金色の光に気づくことなくキメラへ突っ込む。
「あー、ありゃファラオの兄さんご機嫌斜めだな」
俺と同じくサブメンバーのアーラシュが嘆く。ご機嫌斜めで済めばいいけど。
正直、このアーラシュがいなければ、たぶん副長は四回くらいは手篭めにされている。
だってあの王様絶対サディストでしょ。視野が狭くてHPが低いほど手に負えなくなるバーサーカーなんて、涎が出るほど抱きたくなるはずだ。
どんな方法でか王様をコントロールできるアーラシュには感謝しかない。
「それにしても、今日の兄さんはまた一段とまぶしいな」
おのろけは聞かないふりをする。他人のベッド事情なんて聞くものじゃない。特に曲者の多いこのカルデアでは、厄介ごとに巻き込まれるのがオチだ。
まぁ、あの王様がどれだけ輝いていようが、俺のすべてである副長には敵わないんたけどな。
戦場に目を向けると、案の定副長はガッツでなんとか立っているありさまで、王様は頭上を飛ぶ船に顎で命じてビームを降らせている。
この戦闘が終わったら、速攻で副長を確保しなければ。
宝具のオーバーチャージ効果を狙うマスターちゃんが恨めしいが、俺は俺にできることをするしかない。
それにしても、アーラシュのこの泰然自若ぶりはなんだろう。自分のいい人がバーサーカーを持ち帰る危惧などは抱かないのだろうか。
…いや、他人の事情を詮索するな。俺は副長のことだけ考えていればいい。