Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    だみぃにゃん

    @pumpkincat02

    陳情令で沼に足を滑らせました。
    ここにないものはぴくしぶに収納済。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    だみぃにゃん

    ☆quiet follow

    2話目公開してなかっっ😱すみませんすみません。
    書き上げたので上げますね。
    まとめて読みたい方はpixivへどうぞ
    >>https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18096781

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #捏造
    hoax

    景儀と阿願と羨羨 ②完わくわくと野菜屑の入った籠を手に進む。
    雲深不知処は広く、まだ見たことも行ったこともない場所が沢山ある。
    兎がいるという裏山はまだ見えてこない。
    丸くて白くてふわふわってどんなだろう。うきうき頭の中で想像を膨らませる。
    幼い脚には少し遠いが足取りは軽い。あっという間に目当ての、日がよく当たり草が生い茂るひらけた場所へたどり着いた。
    兎はどこだろう。白いのならきっと目立つはず。辺りをキョロキョロと見渡す。
    「いた!」
    見つけた。木陰に幾つも白い塊がもこもこと集まっている。
    微風に草花と兎の毛がそよそよと揺れる様子が気持ちよさそうで、知らず体がうずうずとする。
    そぅっと近づいて手前の兎に手を伸ばしてみる。
    「おぉ。ふかふか」
    兎の毛並みは柔らかで、草と太陽の匂いがする。
    つい誘惑に負けて、長い不思議な形の耳とまあるい尻尾をもふっと掴む。
    それは思った以上にとても良い手触りだった。
    しかし兎にしては敏感な部分をいきなり知らないやつに無遠慮に触れられたわけで、不届き者の顔面に強烈な蹴りをお見舞いして逃げていってしまった。
    景儀は蹴られた勢いそのままに後頭部を柔らかな地面に打ち付け悶えた。
    「いってぇ」
    「大丈夫?」
    すぐそばからこちらを心配する声が響き、驚いて飛び起きた。
    辺りを見回すと兎の白い塊に紛れて、同い年くらいのやつが顔を出している。
    どこかぼんやりとした様子の、少し垂れ気味のまあるい目が景儀を見ていた。

    「お前、いつからそこにいたんだ?」
    恰好悪いところを見られていたのだろうか。羞恥に熱くなった顔を誤魔化そうと咳を一つする。
    「俺は藍景儀。お前は?」
    「僕は…藍思追」
    なんだ親戚か。にしては初めて見る顔だな。
    「俺は今日は藍先生に挨拶にきたんだ。お前は何してたんだ?」
    「僕は兎さんと羨羨とお昼寝してたの。」
    「羨羨?」
    こくんと藍思追は頷いた。すると木の上からがさっと音がして、黒い塊が降ってくる。
    「っうわぁあああ!!なんだっ猫か蛇か猿か??」
    驚いて、ずざっとその場から飛び退る。山で頭の上から落ちてくるものなんて碌なもんじゃない。
    「羨羨だよ。」
    藍思追がそういうと、黒い塊はすくっと立ち上がってお辞儀をした。
    黒い服を着て長い髪を一つに束ねた、身の丈一尺ほどの人形が動いている。
    景儀はどこから驚いたらいいのかわからなくなって、目も口もあんぐりと空けたまま固まってしまった。

    「人形って動くんだなぁ。えいっ、このっ。」
    目の前でにまにましている人形、羨羨を胡乱げに見つめる。見た目は可愛いのだが、こちらを値踏みしているような視線がなんだか嫌な感じだ。
    先程から、仕返しに指でそのお額を突こうとしているのだが全て躱される。
    「景儀は何をしに来たの?」
    「兎を見に…そうだ。兎の餌と一緒に饅頭をもらったんだ。思追も一緒に食べようぜ」
    当初の目的と一緒に饅頭の存在を思い出した景儀は、仕返しを諦め持ってきた籠をあさる。
    「ほい。」
    「ありがとう」
    「きっと厨の人たちお前がここにいるの知ってたんだな。沢山ある。羨羨も食べるか?」
    羨羨は首を横にふりふり。
    そっか。食べたりはしないのか。生きてるようにしか見えないのにますます不思議だ。

    饅頭はほのかに甘い香りがして美味しそうだ。嬉々としてかぶりつこうと大口を開けたところで、思追がぼんやりと手に握った饅頭を見つめているのに気づく。
    「思追?食べないのか?」
    目線はそのままに、ぼそぼそと思追はつぶやく。
    「…皆と一緒に食べたいな」
    「皆って誰だ?」
    「…」
    しばらく待つが答えはない。
    ふむ。景儀は思追の手から饅頭を取り上げると、むぎゅっとその口へ押し込んだ。思追の目が見開かれる。
    「これはお前の分だ。よくわかんないけど、お前の大切な皆は、お前が我慢しても喜ばないだろ?絶対。じゃあこれは今食べてしまえ。」
    そして景儀も、大きな口で饅頭にかぶりついた。
    優しい甘みが美味しい。
    思追も景儀をしばらく見つめた後、もぐもぐと口を動かし出した。
    食不言。二人の咀嚼音が辺りに響く。

    「美味かった!残りは持ってけよ。みんなと食べたいんだろ。」
    景儀はずいっと饅頭が入っている籠を、思追へ押し付けた。
    勢いで受け取った思追はその籠と景儀の顔へ交互に視線を彷徨わせる。そしておずおずと口を開いた。
    「…あのね。」
    「ん?」
    「僕、夢でずっと誰かにおぶわれているんだけど誰かわからないの。頭を撫でてくれる人が沢山いるの。一緒にたくさん笑ったの。大好きなのに。夢だけど夢じゃない気がするの。でももうわからない。」
    思追は今にも泣きそうな迷子の顔をしていた。
    「あのな俺にはよく迷子になる妹がいるんだけど、そいつによく言うんだ。わからない時はな、じっと待つんだ。お前と今一緒にいてくれる奴はいるか?」
    思追がこくんと頷く。
    「なら大丈夫。寂しくないだろ。じっと待っておけ。お前が大好きな皆はお前がその人達のことをわからなくなっても、きっとお前を迎えにきてくれる。だってその人達もお前のことが、大好きで大切なはずだからだ。」
    妹が迷子になったら、景儀は必死で探す。それに景儀が何か迷った時、困った時は妹や両親の顔が思い浮かぶのだ。
    「笑え。迎えがいつ来てもいいように。」
    むぎゅっとほっぺたを摘んで言ってやる。
    「知ってるか。笑うと不安も悲しいも怖いも減るんだぞ。それに笑ってる相手には皆優しくなるんだ。父上なんか俺が笑ってるとお小言が減るぞ。」
    にかっと景儀は得意げに笑う。
    「今日から俺も一緒に待っててやる」
    羨羨が思追の肩まで登ってきてぎゅっと抱きつく。
    「ありがと」
    思追はきらきらと雫をこぼして笑った。


    *****

    ぼろぼろ涙が溢れる。
    悲しくもなんともないのに胸がギュッと苦しい。

    傍の羨羨を抱きしめる。
    そばにあるはずの温もりが足りなくて寂しくて仕方がない。
    叫び出したいのに、何を叫べばいいのかわからない。

    「羨羨。僕は何を忘れたんだろう」
    ぎゅーっと羨羨が抱きしめてくれる。

    僕はあーゆえん。
    羨羨は大事なずっとそばにいてくれるお友達。
    含光君は拾ってくれた人。
    景儀は新しくできた優しいお友達。
    他はもやもやと霞んでいてよくわからない。

    僕の中にあるのは、僕が持っているのはそれだけ。
    どこに置いてきちゃったのかな…

    「羨羨は僕が忘れちゃったものを知っているの?」
    羨羨はゆっくりとこくりと頷く。
    「僕が忘れた大切なことは羨羨が大切に持っててくれてるんだよね」
    こくこくと再び一つにまとめられた髪が揺れ、ぎゅうぎゅうと小さな腕が抱き締めてくる。
    “笑え”
    “俺も一緒にいてやる”
    景儀がくれた言葉。

    「きっと大丈夫。僕には羨羨も景儀もいるもの。」

    そして思追は笑顔の似合う少年になり、後に皆との再会を果たす。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    takami180

    DOODLEお題箱の「攻めがずっと強いガチャ」より
    澄にかぷかぷ甘噛みされる曦 澄を食べてしまう獣は自分の方なのにと思いながら曦は自由にさせている

    ちょっとずれたけど、出来上がってる曦澄です。
    かぷり、と耳を噛まれて藍曦臣は身を震わせた。
     先ほどまで隣で庭を見ていた江澄の顔がすぐ近くにある。
     瞳はつややかな飴の光沢を宿し、うっとりとした声が名を呼んだ。
    「藍渙」
     かぷり、ともう一度耳を噛まれる。
     藍曦臣は微笑して、江澄の腰に手を回した。
    「どうしました? 庭を見るのに飽きましたか」
    「ああ、飽きた。それよりも、あなたがおいしそうで」
    「おや、夕食が不足していましたか」
     江澄はふんと鼻を鳴らして、今度は衣の上から肩を噛む。
     予定よりも飲ませすぎたかもしれない。藍曦臣は転がる天子笑の壷を横目で見た。
     ひと月ぶりの逢瀬に、江澄はくっきりと隈を作ってやってきた。それも到着は昼頃と言っていたのに、彼が現れたのは夕刻になってからだった。
     忙しいところに無理をさせた、という罪悪感と、それでも会いにきてくれたという喜びが、藍曦臣の中で綾となっている。
     今晩はしっかりと寝んでもらおうと、いつもより多目の酒を出した。江澄には眠ってもらわなければいけない。そうでないと、休んでもらうどころの話ではなくなってしまう。
    「おいしいですか?」
     江澄は肩から顔を上げ、藍曦臣の豊かな髪を腕 1073