お願いオシエテ「ダイ!」
ノヴァがダイの名前を呼ぶ。その声に弾かれた様に一斉に振り返ると、ダイは虚ろな目で頬を紅潮させ、コップを片手にふらふらとしていた。
そう、彼はコップに入っていた酒を間違えて飲んでしまい、酔っぱらってしまった。(未成年は絶対飲んじゃ駄目だよ!)
真っ赤になって今にも倒れそうになるダイを、その場にいた全員が手際よく介抱する為に動き出す。
そんな中、マァムから水を貰ったダイは、力なく胃へと流し込む。
少しだけ落ち着いたダイは、不意に隣にいる人物を虚ろになった目で見上げ、桜色に染まった唇を震わせた。
そして、唐突に爆弾を投下した。
「おれのこと好き?」
ダイが言い放った言葉に、隣の人物の脳は硬直した。
=その後、のそれぞれの反応。=
*ポップが隣に居いた場合
「え、あー、えっと……まあ、その、好きだぜ。勿論、友人として。」
「友人以外としては?」
じっと見上げる潤んだ瞳に、ポップはふと浮かんだ邪な心を振り払うように、自身の頭を乱暴に掻いた。そして、小さな肩を両手で掴んだ。
「好きに決まってるだろ!疑ってるのか?」
「ううん。おれも大好きだよ!」
「ダイ!」
感極まって、ダイをギュッと抱き締めるポップ。
そのままキスをと思ったのだが、ダイは既に夢へ旅立っていた。
お預けを食らったポップ。
明日、このやり取りがダイの記憶から消されているだろうと予測し、落胆した。
「ったく、間抜けな顔で寝やがって。」
ダイの頭を自分の肩へと寄り掛からせる。
そして、意趣返しにとダイの頬を軽く抓った。
*ヒュンケルが隣にいたの場合。
「ああ、勿論だ。」
「本当?」
「本当だ。」
「ほんとーに、ほんと?」
「ああ、好きだ。」
ダイの気迫に、押されながら頷く。
すると、ダイは瞬く間に満面の笑みを浮かべた。
「えへへ、おれもヒュンケル大好き。」
ダイは、広く逞しい胸に擦り寄り甘える。
ヒュンケルはダイをもう少し抱き寄せて、癖の強い髪を撫でてやる。すると、数秒も待たぬ内に小さな寝息が聞こえた。
腕の中で眠ってしまったダイの横顔はあどけなく、思わず笑みを浮かべた。
「おやすみ、ダイ」
瞼に掛かっている前髪を、そっと指で払いのけた。すると、幼い子供は擽ったそうに笑った。
夢では、幸せであれ。
暖かな温もりを放さぬように、しっかりと抱き締めた。
*おまけ
バランが隣にいた場合
「ディーノ、もう寝なさい。」
「父さんが答えてくれたら、寝る。」
梃子でも動かぬと睨む幼い瞳に、バランは溜息を付いた。
「分かった。好きだぞ。」
「棒読みだし、投げやり。気持ち籠ってないー。」
頑強な胸板に、ダイは両手を握り締めて軽く殴り出す。
痛くも痒くもない可愛らしい攻撃に、妻の面影が重なる。それを懐かしく思いながら、そっと両手を掴む。
「ディーノ、私の息子。大好きだ。だから、もう寝なさい。」
優しく声を掛けると、ダイは目をゆっくりと瞬かせ、そしてはにかむ。
そして、ゆっくりと近寄り、頬に軽くキスをした。
「おれも、父さんの事大好き。」
それを伝えると、事切れたかの様に意識を失った。傾いた小さな体を難なく引き寄せ、抱き込む。
「愛してる、ディーノ。」
耳元で囁いた柔らかい声色に、夢の中にいるダイは嬉しそうに微笑んだ。