HF×HKクロス 事件編?「あれ、ジョーじゃないか!」
瞬間、この場にいる全ての者たちの視線が”ジョー”と呼ばれた男に集中した。
「えぇ、ジョーです。お迎えに上がりました、アッシャー大統領」
視線が己に集中しても動じることなくグラスは目の前に立つかつての最高司令官に向かって穏やかに微笑んだ。
「潜水艦が迎えに来るとSEALsの隊員が教えてくれたが、まさか君の艦だとは思わなかったよ!元気にしていたかい?」
「勿論です、サー。貴方こそお変わりありませんでしたか?」
そんなやり取りを交わしながらふたりは抱擁を交わす。あまりにも親密なそれを呆然と眺めているエドワーズ副長以下アーカンソークルーとアッシャーの救助に派遣されたビーマン隊長率いるSEALsの隊員たち。アッシャーとグラスの関係を知っているアッシャー付きのSSたちはただ苦笑するのみだ。
「あの、艦長…」
無事を確かめ合って満足したのか、ふたりが抱擁を解いたタイミングで声を掛けたのはエドワーズだった。
「大統領とはその…どのような関係なのでしょうか?」
何も知らない軍人組を代表しての質問にグラスとアッシャーは顔を見合わせる。そして次にSSたちの方を向いた。
「言ってもいいと思うかい?」
「内容が内容ですから我々よりもグラス中佐に窺うべきだと思いますが…」
「私は別に問題ないと思う」
「なら大丈夫でしょう」
プチ会議の結果は是。SSからもゴーサインが出たため、ふたりは改めてエドワーズたちの方に向き直った。
「少し前にアッシャー大統領が男性のパートナーがいることを公表したことは知っているな?」
「はい、確か一緒に暮らしているとも報じられていましたがそれがどうかしたのですか?」
「そのパートナーが私の兄だ」
「…え?兄って…つまりアッシャー大統領は…」
「うん、彼は私の義弟なんだ」
ちなみに彼らは双子だよ、とアッシャーは懐から一枚の写真を取り出してエドワーズに渡した。写真にはアッシャーと彼の息子のコナーを挟むような形で同じ顔を持つ男がふたり立っていた。ひとりはエドワーズたちがよく知るグラス。もうひとりがグラスの双子の兄だという。
「マジか…」
誰かがそう呟いた。潜水艦内であるためか、自分たちの艦長に関する新事実の衝撃が大きすぎるためか、あるいはその両方か、声を出すことも忘れて写真を呆然と眺める部下や戦友たちの姿にグラスは苦笑することしか出来なかった。