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    kadekaru_kaname

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    kadekaru_kaname

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    4/1に上げたかったんだけどな……。という半ロナ。

    壁際の花弁新学期が始まるまで、月初から数日空いていたことに学生の頃は感謝していた。月の初日である四月一日は一般的にエイプリルフールと呼ばれる「嘘」に塗れた日であり、俺と憎々しいほどに相性が悪かった。嘘は吐いていけない、だって悪いことだとお母さんが言っていたから。それでも熱を出してまで嘘という事象を紡ぐ自分も時折だが存在するのだ。しかし、そこまでして嘘の余興を楽しみたくない。だから四月一日は嫌いだ。でも大人になって日付の境が無く、曜日で物事を捉えるようになり今日と言う日の恐ろしさを知る。思ったよりも皆平然な顔をして嘘を発するのだ。
    「ごめん、それ嘘だわ」
    「引っかかっちゃった? 半田君は純心だからねぇ。嘘だよ、嘘」
    「おみゃあはもっと人の事を疑え、エイプリルフールじゃ」
    色んな人から色んな事柄で嘘を与えられる。俺は困っている人が居れば力に成れなくとも相談を聞くことくらいしたい位の優しさは持ち合わせていた。だからこそ、全力で耳を傾けた話の結末に嘘が含まれていると、正直悲しくなってしまう。引っかかる自分への悔しさもあるのだが、それよりも意味のない嘘が一番鋭利なんだということを知らない人が多いことがとても心に痛い。吐かなければ自己防衛出来ない程の覚悟で放たれる嘘ならば、心情を汲み取ることも出来るのに、戯れのような嘘は嫌いだ。こういうジョークのような事を楽観視出来ない自分は、相当に面倒くさい存在なのだろう。だから極力、四月一日は目立たないように努めていた。書類仕事が残っていれば壁際のデスクで無心にペンを走らせ、吸血鬼が現れればふざけた能力を行使される前にぶった切りVRCへ連れていく。幸いあそこの所長は俺に対して嘘をつくような間柄ではない為に、ひどくビジネスライクな関係が心地よかったのだ。ということで、雑務に励んでいた。危険度の高い吸血鬼は現れず、よくある一日の終わり。いや、これから日付を跨いでパトロールが残っているから、まだ半端に嘘の時間が残っていた。秒針よもっと速く動け、物理を超えろ。心の中に住まう悪態は、一人で外に出た俺の背を押した。隊長は本部長と話があるらしく、副隊長や他の戦闘要員は順次手が空き次第パトロール。非戦闘員は吸血鬼と出会ってしまい心に傷を負った幼い子供の簡易カウンセリング。やることはいっぱいある、だから今年は嘘と無縁で居たかったのに、一番嘘を吐いて欲しくないヤツから連絡が来てしまった。
    「あいたい」
    ロナルド、と表示されたポップアップを見て思わず舌打ちをしてしまう。職業柄、急な連絡もあり職場用のスマフォにしか反応しない様にしていたのに私用のスマートフォンも一緒に持ってきてしまったようで、苦しくなる。何で、それを今日言うのだ。伝えた後に何を望んでいる。普段は此方から赴かない限り、合同本部で顔を合わせたり、カメ谷と手を組んで仕込みをしたりする時くらいしか交流がないのに。とことん食えないヤツだと思う。日付が変わっていたらパトロールのついでに会いに行ったかもしれない。俺は、ロナルドに細やかな好意を抱いている自覚があったからだ。伝えることもない思いだが、友として比肩出来ればそれで満足していると思い込むようにしている。つい、反発的な態度を取ってしまったり、嫌いと公言していることを敢えて行うのは素直になれない自分の難儀な生き方の一つだったのだ。何処にも行けない感情に、思わず立ち止まって空を見上げる。月を隠す様に桜が咲いていて、そして散り始めていた。咲くまでは長いのに、散り行く時は一瞬なこの花はなんとなく刹那の生を感じさせて嫌いではなかった。ロナルドの嘘は見ないふりをして、立ち止まり続けるのも職務怠慢だと足を一歩踏み出す。いや、俺の普段の行いは嘘ではないのだろうか、とそんな疑問があったからだ。素直になれないということは偽りの気持ちを押し付けていることと同義で、それはつまり真実から離れた虚言だ。嘘を生きていたのは俺なのかもしれない。こんな本当の事をシンプルに伝えることも出来ない俺が、嘘を合法的に告げられる日を嫌う理由はもしかしたら同族嫌悪なのかもしれない。ならば、今日だけは嘘の嘘を吐こうと思いなおし、職務中なのに私用のスマフォから返事だけを「俺も、会いたい」と返す。どう受け取られても構わない、先に行動を仕掛けてきたのは向こうなのだから。そうして、夜の街をまた進む。特に吸血鬼の気配を感じることもなく、川沿いを見回っていると桜吹雪が目の前を覆う。美しいと、感じる気持ちは素直だ。昼頃は恐らく花見をする人たちが沢山居るのだろう、もしかしたら夜までやっていたかもしれない。流石に俺達のような存在がパトロールする時間帯は闇も深く、誰も居なかったが名残を感じる。日付を超えるまで、もうすぐと言ったところでまた私用のスマートフォンが震える。
    「じゃあ、仕事が終わったら会いに来いよばか」
    ちらりと確認するとその文面が目に入る。酷い男だロナルドというヤツは。仕事が終われば明日になる。そしたらまた俺はいつものような振る舞いをしてしまうし、アイツもこれらのメッセージはこんな嘘でした、とネタバラシをするだけだと分かっているのに。苦しむためだけに、心の内側に入れた人間に会いに行きたくない。明日は非番じゃないと嘘でも吐こうかな、なんて思ってしまうが今日はまだ嘘の嘘の日。だから、正直に伝えようと思ったのだ。
    「会えるが、貴様に会うのが辛いから行きたくない。謝罪も弁明も追及も聞かん。元気で生きているのならばそれでいい」
    その文面を送った後に、一息ふうと吐く。日付が変わり解放されたと安心したところで、スマートフォンがいつもより長く震えた。着信を伝えるその画面には流石に仕事中だから出られないと拒否を押し、邪念を振り払う様に電源をオフにした。最初からこうしておけば良かったものの、きっと心の何処かにこういう展開を期待していた自分が居たのだと思うと吐き気がする。公私混同は良くない、自分の信念としても、職務としても。そのまま順当に見回りルートを巡り、一体だけ下等吸血鬼の成り損ないみたいな存在が居たので捕獲して後でVRC送りにする為に吸対に戻ったのだ。他の箇所でも目立った吸血鬼は居なかったようで本部長と話がある隊長の代わりに副隊長が今日の総括をして解散の運びとなった。市街地エリアでは吸血鬼よりも酔っ払いが面倒だったという愚痴も今は素直に聞けた。それが嘘ではないという確証があったからだ。長い人生、そういう連中に会う時もあるし、特に吸対は逸脱している連中からは面白がられている節があるので、あまり深く気にしないことが一番だと愚痴めいた返事をしたのだ。朝日と共に帰り道の道すがらで吹きすさぶ桜が町中のビルに打ち付けられて、落ちて、人々に踏まれて行って、美しさの欠片も無くなる。俺の心は、どうなのだろうか。そう思って見上げた桜はやはり今だけは綺麗だった。



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    kadekaru_kaname

    DONE性癖のうちの一つです……、書くか迷っていると言ったら、書きなよ!と言ってもらえたので断片ですが……!半ロナです。
    貞盲ぷちん、ぷちん、と音もたたずに。ただ、微睡みの中でわずかな痛みが痴丘から取り除かれていく。脛とか、腕とか、たまに脇とか。そういうところから千切るように、陰茎を刺激しない程度にあまり自分で直視することのない白銀を抜く。ただ、別に悪いことをしてるつもりも、恥ずかしさもない。ぼんやりと眠気と、エッセンス程度のちくりとした感覚がなんだかほんわかと気持ちがいいのだ。誰にも言えねえよなあ、と今では思う。服を着てる方が珍しいと言われる退治人の仕事でも、流石に帰宅する前には局部程度は隠すので、まだ、きっと、おそらく、なんとなくだが、他人にはバレていないと思うのだ。朝になって、目が覚めて、覚醒した意識の後に待つ、生来の気質にうんざりするのは分かっているのだが、夢精をコントロール出来ないように、欠伸や鼾に原因があるように、俺にとっては不可逆の行為だった。陰毛抜毛症、それが多分一番俺の症状に近い名前なのだと思う。勝手に抜けるのではなく、何故か抜いてしまう。人によってはそれが頭皮であったり、それこそ指の毛とか腕の毛とかにもなるのだろう。ショットが聞いたら、何らかの冒涜だと嘆き悲しむだろう。人によってこの症状は様々だ。そこに毛があるのが気に入らないとか、落ち着かないから適当に抜いてしまうとか、人の数だけ抜毛症はある。俺の場合は、気持ちいいから以外の何物でもないのだが。何度もやめようと思って、それでも無自覚に繰り返すうちに、俺の痴丘は焼け野原のように疎らな銀しか残らなかった。だが問題ないと思っていたのだ、半田と付き合う前までは!
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