推論A/根拠Bもしかしたら半田には好きな奴が居るかもしれない。そんな推論を立てて、俺はロナ戦の新作を書く予定の真っ白な原稿ファイルを眺めていた。
「……はぁ」
「そんなため息を吐いても締め切りは変わらないよロナルド君」
「締め切りに怯えてんじゃねえよ!」
「フクマさんが来てからは怯えっぱなしじゃあないか」
ドラルクが殊勝にも紅茶をパソコンの隣に置いてくれたので、特に温度も気にせず口に運ぶ。瞬間、熱よりも焼けるような感覚が口腔を襲い、声も無くはくはくと空気を吸い込んだ。妙な空気が擦れる音が響くと、ドラルクは呆れたように俺を見た。
「完成したばかりの紅茶をそんな飲み方するから火傷をするのだよ、ほらジョンだって憐れんだような瞳で君を映している」
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