《綾人蛍》それ、お姫様だっこって言います綾人さんに付いてきてもらったのは正解だったかもしれないと、伸された宝盗団に囲まれて思う。その宝盗団と同じようにくたりと地面に倒れながら。
全身の力がすっと抜けて動けない。噂には聞いていたけど、ここまで効果が強すぎる薬品が出回っているなんて大問題だ。だからこそ蛍が駆り出されたわけだけど。
刀を納めた綾人さんは、そっと蛍を抱き上げて眉を顰めた。ごめんなさい。なんとか力の入る腕でしがみつきながら謝罪をする。
「お怪我はありませんか」
「うん、薬品被った以外は大丈夫」
「それは大丈夫とは言いませんよ」
縋りついて命乞いをする男を長い脚で蹴飛ばし、宝盗団の山を抜けていく。横抱きのままゆさゆさ揺らされて、どこからか現れた綾人さんの部下達が手際よく処理していくのを遠ざかりながら眺めた。
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