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    かみすき

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    綾人蛍
    バレンタインデーの話

    #綾人蛍
    ayatolumi
    ##綾人蛍

    ≪綾人蛍≫先に食べてよバレンタインデーは女性から男性に、チョコレートなんかのプレゼントを渡して愛を伝える日だと聞いたのは2日前。しかも、恋人や好きな人に渡すのは手作りが一般的だとかで、慌てて用意したのだ。
    手作りで、というから豆から作ろうとしたらお店のお姉さんに止められてしまった。
    そうして出来上がったチョコレートトリュフは半分近くパイモンに吸い込まれていってしまったけど、どうにか死守した残りは丁寧にラッピングされて、綾人さんの元まで辿り着いた。

    ところでその綾人さんの話だけど。
    蛍にはこれまで恋愛の経験がないから、何が普通なのかはよくわからない。でもたぶん、綾人さんはちょっと変なんだろうな、と思っている。

    今だってほら、箱を受け取ったのに、なぜか蛍を膝の上に抱えて離さない。普通ものを貰ったらそのまま開封して、素敵ですねとか、嬉しいですなんて話をすると思うんだけど。チョコレートより貴方を、とはならないんじゃないかな。
    綾人さんはこの姿勢がお気に入りなのは知っているけど、それにしてもたぶん今じゃない。はじめのうちは上から見る綾人さんなんて新鮮だな、と思っていたけど、もう何度目かわからない今ではずいぶん見慣れたものだ。

    「開けていただけますか」
    「私が? 自分で開けたらいいじゃない」
    「トーマと綾華も受け取ったとはしゃいでいましたが、これと同じものですか?」
    「うん、そうだよ」

    ふむ、と頷いたきり静かになった彼に、リボンを解いた箱を差し出す。それを受け取らずに、リボンを蛍の手首に結び直して満足そうに微笑む綾人さんは、やっぱりちょっと変だと思う。
    されるがまま膝の上に腰掛けていれば、綾人さんがぱか、と口を開けた。

    「なに?」
    「あ」
    「あ、じゃなくて」
    「食べたいんです、あなたのチョコレートを」
    「ええ……」

    自分で食べて、と言ったのは聞こえなかったとでもいうように、変わらず間抜けな顔で蛍を見つめる。エサを待つ小鳥みたい、と思ってしまった。
    もう、仕方がない。少々いびつな形のチョコレートを摘んで、甘えたがりの雛鳥に与える。
    蛍の指まで咥えて、ちう、と吸いついてから唇を離した。おいしいですね、と咀嚼しながらするすると腰が撫でられていく。ちょっと、雛鳥はそんなことしないよ。
    ぺち、と白い腕を叩けば一瞬動きは止まるけど、にぱあと笑ってはまたするする撫で始める。ちがうちがう。
    次を催促する綾人さんにチョコレートを食べさせながら怒ってみても、結局綾人さんはとぼけて躱してしまう。
    そのうち諦めた蛍を見て、綾人さんはとっても嬉しそうに喉を鳴らす。

    「貴方は本当に、甘いですね」
    「誰のせいだと思ってるの」
    「私のせい、だと嬉しいです」

    口の中が空になったようだからと次を、と動いた蛍より先に、つまみ上げられたチョコレートが目の前に差し出される。

    「私はもう食べたよ」
    「私の手からは食べられない、ということですか」

    そんなこと言ってない。しょぼ、と眉を下げてへこんだ顔をしているのも、かわいいフリをしているだけだと知ってる。だってそんな表情の人はチョコレートを口に押し付けてきたりしない。逃げようとするのを、がっと腰を掴んで押さえつけることもしない。

    わかったわかった。結局受け入れてしまう蛍の方も変なのかもなと思いながらようやく口を開けば、なんとまあ満足そうに。そのままぐいぐい進めるものだから、綾人さんの指まで食べてしまう。
    うん、昨日散々食べた味。だけど、指がいつまでも出ていかない。あの。
    戸惑っている間にも、食べ物に反応して滲む唾液が緩く開いた口から零れそうになる。仕方なく指ごとぎゅっと閉じれば見つめた綾人さんの目がすうと細められて、ようやく意図に気づいた。
    綾人さんの指が暴れる前に、ちろりと舐め取って離す。

    次に手が伸びる前に、慌てて箱の蓋を閉めた。
    残念そうに眉を下げながら、でも口元は緩めたままの綾人さんを宥めようとひとつキスを落とせば、支えられたままだった腰がぐっと引き寄せられる。ちがうちがう。
    肩を押して抵抗してみても力では勝てなくて、もう取り繕うこともせずにふふふと笑う綾人さんの思うがまま。

    ちゅうちゅうと止まないキスに気を取られているうちに取り上げられていた箱。思わずあっと声を漏らせば、その隙間に指ごと甘さがねじ込まれる。
    今度は早々にチョコレートを手放して、歯列をざらざらとなぞり始めた。待ってよ、と訴えようとしても漏れるのは吐息だけ。
    さらに機嫌を良くして暴れる綾人さんを舌で押し返しても、それすらぐにぐにと弄ばれてしまう。自分から出る声にその気にさせられてしまうのはどうも納得がいかないのだけれど、すべては綾人さんが悪い。私が甘やかしすぎとかではない、決して。

    やっと解放されてはふ、と息を切らす蛍は服にかけられた手を引きはがすほどの力も入らなくて、かろうじて綾人さんの目にかかった髪を払うだけだった。
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