おいしいごはんになれるといいけど ――こんなこと、誰よりもアオガミが望んでいない。
半身を理解しているからこそ、少年はせめてもと願うのであった。
「美味しいと良いんだけど」
緊張からか、心中だけでなく音として零れ落ちてしまった言葉。
しまったと息を飲む少年の視界に映り込むのは、彼の首元へと顔を寄せている青い髪。その向こうにから見つめてくる黄金の瞳だ。
「少年」
名を呼ばれると同時に首筋に触れる呼気。堪らずに少年が身を震わせると、アオガミはそっと優しく彼の背を撫でる。
「君が美味しくないなど」
――ありえない。
優しくも、熱が篭もった言葉を紡ぎながら。
「えっ?」
どういう意味だと問う間もなく、首筋に痛みが走る。
ここは現世ではなく、ダアト。少年の首筋からアオガミが摂取し損ねた血が僅かに伝い、瞬時にマガツヒと化して宙を舞う。
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