Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    りま!

    @ririmama_1101

    たまに絵とか小説更新します。
    主にらくがきなので薄ぼんやり(?)見てください。
    幻覚、存在しない記憶ばっかりです。

    リアクション𝐓𝐡𝐚𝐧𝐤 𝐲𝐨𝐮😘生きる糧です。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 🍣 🍈 🌹
    POIPOI 38

    りま!

    ☆quiet follow

    雨竜くんが一度行った3人での食事会を経て、宗戴のその後を見守る話
    お出掛け編は雨竜目線。続きます。
    ※8/9ちょっと内容修正して再アップしました

    ↓軽い設定
    •宗雲
    やんわり戴天が好き。深い仲に戻れれば良いと思っている。

    •戴天
    宗雲のことは許していないと思っているが、それは高塔の者として許されないという固定観念から来ていることに気づいていない。

    •雨竜
    どちらのことも大好き

    #宗戴

    兄達よ和解せよ①〜お出掛け編〜「兄さん、日曜日の予定なんですが……」
     スケジュールの擦り合わせが完了し、今日も暑そうですね、なんて雑談をしている折に雨竜が切り出した。目の前に座っている戴天は朝食を食べる手を止めてこちらを見る。今週の日曜日は戴天と雨竜、揃っての休日だ。雨竜が珍しく習い事が夕方からだということで前々から出掛けようという話をしていた。
    「どうしました?」
     なかなか続きを話し出さない雨竜を見つめ、戴天が静かに問いかける。
    「あの、その日なんですが……宗雲さんと出掛けたいんです」
     突如出てきた宗雲の名前に、戴天は危うくカトラリーを落としそうになったのか、ぎゅっと手に力が入ったのが見えた。
    「3人で行きたいところがありまして。朝はそこまで早くはならないので、いつも通り内線で……兄さん?」
     様子を伺うようにちらりと戴天へ視線を向けた。固まったまま動かずどうやらこちらの話も耳に入っていない様子の戴天を見て、このタイミングでは辞めておけば良かった……と後悔し始めた時、時計の時刻が目に入った。
    「あっ……兄さん、急がないと」
     その声にはっとしたように腕時計を確認した戴天は、まだ残っている朝食に手を付け始めた。

     家を出る頃には戴天の動揺も収まったのか、いつも通りの様子だった。近頃動いているプロジェクトの話や、社内のちょっとした出来事などを話しているうちに、車は駐車場へと入っていく。
    「……雨竜くん。朝食の時に話していた件ですが、分かりました」
    「本当ですか! ありがとうございます」
     車を降りる寸前で戴天から返ってきた返事に、雨竜は素直に喜んだ。その顔を見て、わずかに戴天が目を細めたことには気づかなかった。
    (雨竜くんが私よりも宗雲さんとの予定を取るなんて……。いつかはこうかなると思っていました。仕方のないことです)
     言い聞かせるように戴天はネクタイを正すフリをして、そっと胸に手を当てる。今からは高塔エンタープライズの社長としての顔をしなくては、と心を切り替えて雨竜と共に颯爽とビルへと歩き出した。

     日曜日の朝。雨竜は内線で何度も戴天の部屋に電話を掛けるが、応答が無いことに焦りを感じていた。普段よりも遅い時間の起床だから、もしかしたら自ら起き出しているのかも知れない。しかし応答も無いことが少し心配になり、雨竜は戴天の部屋へと向かう。
     戴天の部屋の扉をノックし、声を掛ける。しかし扉の向こうからは一切物音もしていない。再度ノックをして、扉をそっと開く。中に入るとキングサイズのベッドの中心で、戴天はすやすやと眠りについていた。
    「兄さん、起きてください。そろそろ起きないと間に合いません」
     布団の上からゆさゆさと戴天の体を揺さぶる。
    「ぅ……ん?雨竜くん……?」
     ようやく薄く目を開いた戴天が雨竜を捉えた。状況が分かっていなさそうな戴天に再び声を掛ける。
    「兄さん、そろそろ起きないと待ち合わせに間に合いませんよ」
    「待ち合わせ……?誰とですか……?」
    「え?言ってたじゃないですか。今日は宗雲さんと」
    「宗雲さん?……あぁ、そうでしたね。いってらっしゃい。気をつけて」
     何かに納得したように声を掛けるとほぼ同時に目を閉じてしまった戴天に慌てて声を掛けた。
    「兄さん!このままでは遅れてしまいますよ!早く準備をしてください」
    「…………?何故私が準備を……?」
     ようやく話が噛み合っていないことに気がついたのか、戴天がゆっくりと半身を起こす。
    「今日は3人で出掛ける約束をしたじゃないですか!」
    「……私も行くんですか?」
     ゆっくりと瞬きをしながら、戴天は首を傾げた。

     状況がいまいち理解しきれていないのか、雨竜が促すままに戴天が身支度を整える。何度か起きてますか?と確認すると、苦笑いしながら起きてますよと返事が届いた。
     準備が整い2人で家を出ると、見慣れた送迎車が目に入る。定位置に乗り込むと、戴天が雨竜に問いかける。
    「あの、本当に私も一緒に行くのですか?宗雲さんもそれを了承しているんですか?」
    「もちろんです。あの朝、3人で出掛けたいところがあるとお伝えしていたのですが……。タイミングが悪かったですね。すみません」
    「いえ、きっと私が聞き漏らしていたんでしょう。雨竜くんには手間を取らせてしまいましたね」
     戴天が考え込むような仕草をする。きっと雨竜から今日の予定を取り付けられた朝のことを思い出しているのだろう。戴天は急に出てきた宗雲の名前に気を取られて雨竜の話をよく聞いていなかったように思う。今日を迎えるまでにもう一度話をしておけばよかったとぼんやりと考えながら窓の外を見つめた。

     着いた場所は中央地区で、雨竜が運転手に止めるように告げるとすぐに車は道の端へ止まった。2人で降り、車を見送る。
    「こちらです」
     雨竜が入り組んだ路地を進んで案内した先はカフェだ。扉を開き中へ入ると、そこにはカウンターが4席とテーブル席が2つ並んでいた。店内の照明は明るすぎず、どちらかというと若者が愛用するようなキラキラとした内装よりかは落ち着いた内装だった。
     2つしかないテーブルの1つに宗雲が座っている。そちらへ歩みを進め、雨竜はソファーの奥の席へ座るように戴天を促した。
    「お待たせしました。宗雲さん早いですね」
    「いや、俺も先程着いたばかりだ」
     店員からすでに手渡されていたメニューを雨竜と戴天の方に差し出しながら、宗雲がチラリと戴天を見る。
    「……お前も、忙しいのにありがとう」
    「……いえ」
     どことなくぎこちない会話に、雨竜が苦笑いする。この2人に起こったことについて詳細はよく知らない。だが、本当は2人にも仲良く居てほしいとは思っている。今日の予定を相談した時の宗雲の返事を考えると、戴天と会うことに抵抗は無いようだった。むしろ戴天が良いと言うのであれば、と嬉しささえ滲んでいるようだった。一方、戴天はできる限り会いたくないという気持ちがひしひしと伝わってくる。過去について聞いたときに感じたのは憎しみというよりもっと複雑な感情で、それをどうにか紐解きたいと思っている。それが戴天にとって良いことなのかは今はまだ分からない。雨竜も本気で戴天が嫌がるようなら、今日のように3人で会うことは避けたいと思ってる。
    「雨竜、戴天。注文は決まったか?」
     宗雲からの問いかけに慌ててメニューに目をやると、上から順番に確認していく。雨竜の目当ては抹茶パフェだ。そして宗雲はフルーツパフェ。横から同じように覗き込んでいる戴天の顔を見てみると、悩んでいるようだった。
    「兄さん。ここを選んだ理由をお話してなかったですね。このお店は宗雲さんが知り合いから教えていただいたようで、パフェが凄く美味しいそうです」
    「パフェ、ですか」
     困ったように戴天の眉が下がる。
    「コーヒーゼリーを使ったパフェもお勧めだと聞いている」
     戴天が迷っていることに気づいたのか、宗雲からの助け舟が入る。
    「……では、私はそちらで」
    「僕は抹茶パフェにします」
     3人の注文が決まったところで、宗雲が店員を呼び、注文を済ませた。

    「雨竜、少し食べるか?」
     噂通りにパフェの味は絶品だった。きっとどのパフェも美味しいのだろうと雨竜が考えているときに宗雲から声が掛かる。雨竜は抹茶も好きだが、フルーツも好きだった。
    「いいんですか!」
     宗雲が雨竜の目の前にパフェを差し出す。雨竜がどことなくウキウキとスプーンで掬いながら一口食べる。
    「美味しい……」
     思わず雨竜が言葉を漏らしたとき、宗雲が愛おしいものでも見るような表情をしたのに対面にいる戴天だけが気づいた。雨竜はパフェに目を輝かせていて気づいていない。
    「兄さんも抹茶パフェどうですか?とても美味しいですよ!」
     隣にいる戴天に雨竜が話しかけるが、戴天は自身の手元を見つめたまま、言葉を発しない。
    「……兄さん?どうしました?」
     雨竜の心配そうな声に戴天ははっとしてこちらを向く。
    「いえ、なんでもありませんよ」
     明らかな作り笑いに何かあったのかと問おうとして辞める。こういうときの戴天はきっと本当のことは話さないからだ。宗雲も心配そうに戴天を見ている。その視線に気がついたのか、2人の視線を振り切るように戴天が美味しいですね、と言いながらスプーンを口に運び始めた。

     パフェを食べ終わりそれぞれが注文した飲み物を飲みながら、中央地区にあるレストランが美味しい、今巷では虹色に輝くかき氷が若者を中心に人気らしいなど、3人が別の場所から仕入れた雑話をしていると、ピピピと雨竜のスマホが鳴る。
    「もうこんな時間……僕は習い事がありますのでそろそろ」
     そう言って雨竜が立ち上がり、自分の財布からお金を取り出そうとすると、戴天にやんわりと止められる。自らの財布を取り出しながら戴天も同じく立ち上がった。
    「そうでしたね。それでは私も帰ります」
    「待て」
     雨竜と共に店を出ようとする戴天を、宗雲が呼び止める。
    「お前はもう少し俺に付き合え」
    「は?」
     雨竜にとっても、それは願ってもない申し出だった。
    「では、兄さん。行ってきます。宗雲さんもありがとうございました」
    「え?雨竜くん、待って」
     助けを求めるように戴天が呼び止めるのを半ば逃げるように雨竜はカフェを後にする。到着した迎えの車へと歩みを進める途中でカフェを振り返ると、あまりに突然の出来事に戴天は呆然とカフェの入り口を見つめていた。
     鬼が出るか蛇が出るか、あまり良い例えではないかも知れないが雨竜はこれを機に何かが動き出せばいい、と少しの期待を込めた。

    お出掛け編 完
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍💞👏👏👏💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    りま!

    DOODLE※①②③を先にどうぞ!
    雨竜くんが一度行った3人での食事会を経て、宗戴のその後を見守る話
    雨→戴→宗と目線が変わります。
    終わらせようと思ったけど続きます。

    ↓軽い設定
    •宗雲
    やんわり戴天が好き。深い仲に戻れれば良いと思っている。

    •戴天
    宗雲のことは許していないと思っているが、それは高塔の者として許されないという固定観念から来ていることに気づいていない。

    •雨竜
    どちらのことも大好き!
    兄達よ和解せよ④〜一歩前進編〜 玄関の扉が開く音に雨竜がリビングへ降りると、予想通り戴天が帰宅したようだった。
    「おかえりなさい、兄さん」
     戴天には休日というものが存在しないのではないか、というくらい働き詰めだ。今日も雨竜は休日だったものの、戴天は社内調整後の決裁のために出社をしていた。
     この決裁が終われば、ほんの少し戴天のスケジュールに余裕が出る。それを見越して明日は戴天の休日を作った。戴天は休日を渋ったが、このままでは何連勤になってしまうか分からないので、何も予定は入れませんと宣言したところでやっと了承してくれた。
    「ただいま、雨竜くん」
     靴を脱いでリビングへとやってきた戴天が雨竜に一声かけると、そわそわとした様子でそのまま部屋のある2階へと上がって行った。
    4743

    りま!

    DOODLE※①②を先にどうぞ!
    雨竜くんが一度行った3人での食事会を経て、宗戴のその後を見守る話
    駆け引き編は宗雲目線。続きます。

    ↓軽い設定
    •宗雲
    やんわり戴天が好き。深い仲に戻れれば良いと思っている。

    •戴天
    宗雲のことは許していないと思っているが、それは高塔の者として許されないという固定観念から来ていることに気づいていない。

    •雨竜
    どちらのことも大好き!
    兄達よ和解せよ③〜駆け引き編〜「ありがとうございました。……では、また」
     そう言いながら車に乗り込む戴天がこちらを見た。その表情がどんなものだったか、戴天は分かっているのだろうか。
    (では、また……か)
     戴天にとってはただの挨拶だとしても、彼の口から出た言葉であればそれを理由に何とでも言える。宗雲はつい緩んでしまいそうになる口元を手で押さえた。

     リビングのソファーに座りラウンジの雑務を片付けていると、スマホのメッセージアプリの通知音が響く。アプリを開くと、雨竜から今日のお礼が届いていた。雨竜が居なくなったあとの様子が気になったのか、直接的な言葉こそないものの、気になる様子が伝わってきて苦笑いする。
     同じ家にいる戴天には聞かずにこちらに聞いてくる気持ちはなんとなく分かる。ひとまず、こちらは嬉しかったと伝えられたこと、ただそれを戴天がどう思っているかは分からないことを伝え、最後に家に帰った戴天の様子を聞いておいた。
    2666

    りま!

    DOODLE※お出掛け編を先にどうぞ!
    雨竜くんが一度行った3人での食事会を経て、宗戴のその後を見守る話
    2人きり編は戴天目線。続きます。

    ↓軽い設定
    •宗雲
    やんわり戴天が好き。深い仲に戻れれば良いと思っている。

    •戴天
    宗雲のことは許していないと思っているが、それは高塔の者として許されないという固定観念から来ていることに気づいていない。

    •雨竜
    どちらのことも大好き!
    兄達よ和解せよ②〜2人きり編〜 雨竜が去り、カフェの店内に宗雲と戴天だけが残されている。雨竜のことを呆然と見送るしかできなかった戴天は、中途半端に浮いたままだった腰を再びソファーへと降ろした。
    「何か私に用事でもありましたか?それとも雨竜くんの前ではできないようなお話でもあるのでしょうか」
     戴天にとっては、宗雲と話さなければいけない用事も無ければ、何もないのにお喋りを楽しむような関係でも無かったから、今の状況がまるで飲み込めない。
    「いや、特にそんな話は無い」
     宗雲からの返答に戴天は訝しげな目線を向ける。
    「私もあなたに用はないのですが……」
     そう言う戴天に視線も向けずに宗雲は落ち着かない様子で手元のアイスコーヒーの氷をストローでかき混ぜている。カラカラと氷同士のぶつかる音が静かな店内に響く。グラスの表面についた水滴をコースターが音もなく吸いとっていった。
    2359

    りま!

    DOODLE雨竜くんが一度行った3人での食事会を経て、宗戴のその後を見守る話
    お出掛け編は雨竜目線。続きます。
    ※8/9ちょっと内容修正して再アップしました

    ↓軽い設定
    •宗雲
    やんわり戴天が好き。深い仲に戻れれば良いと思っている。

    •戴天
    宗雲のことは許していないと思っているが、それは高塔の者として許されないという固定観念から来ていることに気づいていない。

    •雨竜
    どちらのことも大好き
    兄達よ和解せよ①〜お出掛け編〜「兄さん、日曜日の予定なんですが……」
     スケジュールの擦り合わせが完了し、今日も暑そうですね、なんて雑談をしている折に雨竜が切り出した。目の前に座っている戴天は朝食を食べる手を止めてこちらを見る。今週の日曜日は戴天と雨竜、揃っての休日だ。雨竜が珍しく習い事が夕方からだということで前々から出掛けようという話をしていた。
    「どうしました?」
     なかなか続きを話し出さない雨竜を見つめ、戴天が静かに問いかける。
    「あの、その日なんですが……宗雲さんと出掛けたいんです」
     突如出てきた宗雲の名前に、戴天は危うくカトラリーを落としそうになったのか、ぎゅっと手に力が入ったのが見えた。
    「3人で行きたいところがありまして。朝はそこまで早くはならないので、いつも通り内線で……兄さん?」
    3958

    related works

    recommended works

    りま!

    MOURNING・嘔吐(体調不良)表現があります
    ・宗雲=叢雲の設定
    ・宗雲(叢雲)は高塔の一族でありながら高塔の隠された秘密を暴く側の派閥の生まれで、子供の頃から秘密を探っており、旧タワエンは探っていたのがバレて解散したという特殊設定(ですがあんまり関係ない)
    •戴天がヒスり、宗雲が少し暴力的かも
    •宗戴ですが糖度は低め
    欠けた月(前編) 広い屋敷の庭に面した縁側で、あなたは花の茎をパチンと花鋏で切り、花器に生ける。それを私はとても嬉しそうな顔をして見ている。できたぞ、と言って完成した作品はとても私の心を踊らせた。

    「ねぇ叢雲、もう一度お願いします」
    「戴天は本当に花を生けるのを見るのが好きだな。仕方ない、もう一度だけだぞ。ただし、」

     そう言ってあなたがこちらを見た瞬間、ゾクリと悪寒が走る。あどけない顔をしていたあなたが、立派な大人に見えた。まるでこちらを責め立てているような。

    「対価が必要だ。お前の隠していることを教えろ」

    「──ッ!」

     目が覚めるとそこは見慣れた自室で、戴天ははぁと短く息をつく。もう何度も何度も見た夢。幸せだったと同時に嘘で塗り固められたあの頃。全てが嘘だったとしても、優しさだけは確かにそこにあったと、今でもそれだけを大事に抱えている。
    6665