夢の○枕 後に三ツ谷は、先の出来事をこう語った。
「人間、限界まで寝ないと本当に恐ろしい。あれは自分であって自分じゃなかった。」
「何カッコつけてんだ。馬鹿が極限の状態で更に馬鹿になっただけだろうが。」
「付き合ってからこんなに悪口言われたの初めてなんだけど。」
――
三ツ谷が、このままでは間に合わないとアトリエに篭って1週間。メッセージに既読が付かなくなった頃合いで、大寿はアトリエに突撃した。
三ツ谷は物事や人に対して思慮深く、決して自分のペースを超える無茶はしないが、服についてはそのタガが外れてしまう。最低限の食事と睡眠だけを取り何日も机に齧り付いて、一心不乱に服と向き合う。
案の定、今回も大寿がアトリエに着くと、見事なドレスを纏ったトルソーを前に三ツ谷が満足そうに最後の仕上げをしていた。
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