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    無名@本物

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    無名@本物

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    ふポ!ふポ!うおおおおおおああ!!!!!!!!(※血沢山!)

    「あんたなんか生まれてこなければ良かった」
    それが母の最期の言葉だった。
    青色の瞳、魔法と呼ぶにはあまりにも暴力的な力、半分流れる異国の血。「穢れた血」と罵倒され、「悪魔」と恐れられ、奴隷のように扱われる毎日に自分が生まれてきた意味を見出せなかった。
    彼女と出会うまでは。

    ーーー

    「こんな所で何をしているの?」

    胸まで伸びた栗色の髪、風をはらんでふわりと揺れる真っ白なワンピース。大きなまん丸とした赤い瞳が私を見つめる。

    「わっ…!」

    突然現れたその人物に驚き尻餅をつくと、少女は私に向かって手を差し伸ばした。

    「大丈夫?」

    黒く汚れ傷だらけの自分の手と差し伸ばされた健康的で綺麗な手を交互に見、私は彼女の手を借りずに立ち上がった。好意を無下にされたにも関わらず彼女は気にした様子もなくその手を下ろす。

    「あなたも迷子?」

    私が首を横に振ると彼女は「ではどうしてこんな所にいるのか」と聞きたそうな顔で首を傾げる。

    「ここ、私の家、だから、」

    舗装されていない剥き出しの地面には幾つものゴミ袋が転がり周囲には不快な匂いが漂う。手入れされていない雑草達は今にも崩れそうなトタン小屋を覆い隠さんばかりに乱雑に生えている。ゴミ捨て場と形容した方が相応しいその場所は父が私に与えた「家」だった。

    「わっ、私、私みんなに嫌われてるから、だから、あなたも、あんまり私に、近づかない方が、いいよ」

    こんな粗末な物を自分の家だと紹介した事が恥ずかしくなり、聞かれてもいないのに言い訳のような言葉を口走ってしまう。しかし彼女は嫌悪する訳でも、蔑む訳でもなく、にこりと笑顔を浮かべこう言った。

    「私と一緒だね」

    綺麗に笑うその表情はまるで人形のように愛らしい。この汚れた場所にあまりにも不釣り合いなその存在に目が離せなくなる。

    「私の名前はコンシー。フー・コンシー。また来るね」

    コンシーはヒラヒラと手を振るとクルリと背を向け屋敷へと帰っていった。


    コンシーはその言葉の通りそれから毎日私のところへやってきた。
    宝石のようにキラキラと光る砂糖菓子、ワクワクと胸が躍るような物語、どこか遠い国の美しい風景の写真。コンシーが与えてくれるものはどれも見たことのないものばかりだった。

    「どうしてあなたは右目を隠してるの?」
    「みんなが怖がるから」
    「どうして?」
    「私は悪魔だから。コンシーは私のこと怖くないの?」

    花のような甘い香りが鼻先を掠める。コンシーが私の手を握り笑う。

    「怖くないよ、あなたは悪魔じゃない。だってほら。私と一緒、温かい」

    毎日綺麗な洋服に身を包んでやってくる彼女はきっとどこかの貴族の子供。私と一緒にいるのもただの気まぐれかもしれない。それでも願ってしまう。この夢のような毎日がずっと続けばいいと。

    (明日はお花を摘んで来よう。きっとコンシーも喜んでくれるはず)

    その日の夜、私は今までで1番穏やかな夢を見た。綺麗なお花畑をコンシーと手を繋いで歩く、そんな穏やかで幸せな夢。

    ーーー

    屋根を叩く強い雨音でハッと目を覚ます。その瞬間視界に猛烈な違和感を感じる。
         
    (どうして”両目”が見えているの?)

    「片目だけ青色なんて気持ち悪い」父にそう言われてからずっと包帯で右目を隠してきた。そうずっと、寝る時でさえずっと、だ。

    「やっと起きたか」

    何が起きたのか確かめようと体を起こすと声がかけられる。

    「お父さん」

    言おうとした言葉は腹に強い蹴りを入れられ最後まで形になることはなかった。

    「お前ごときが俺のことを父と呼ぶな!!穢らわしい!!」
    「ごめんなさッ…」

    父は何度も何度も塵を踏みつけるかのように私の身体を蹴り上げると、しばらくして満足したのか動きを止め息を整える。

    「お前の母親を殺したあの時にお前も殺しておけば良かったと、俺はずっと後悔していたんだよ。だけれどあの時の俺の行動は間違っていなかった!!!!」

    声を荒げ目を爛々と輝かせながら私の顔をガッと掴む。

    「お前のその目だ。お前のその不揃いな瞳。片目ずつで色が違うなんて気味が悪くて仕方が無いがこの世の中には物好きもいるらしい。お前の目を買い取りたいと言ってきた奴がいるんだ。しかも破格の値段で!!!!周りに不幸を振り撒くだけの役立たずのお前が生まれてきた意味を最期に俺が作ってやったんだよ!!!!!!!!」

    異様に興奮した状態の父が更に言葉を続けようと大きく息を吸い込んだ瞬間、ゴッという鈍い音共にその頭が床に転がる。赤黒い液体が床を染め上げていく。

    「おと、さん、?」
    「助けに来たよ」

    生臭い血の香りに混ざる甘い花のような香り。暗闇の中に真っ赤な瞳が揺れる。激しい音を立てて落ちた雷の光が彼女の手に握られた血に濡れた大きな鎌を映した。

    「おいで」

    彼女が赤い手を差し出し、ふと自分の手を見ると父の身体から溢れ出した赤が私の手を汚していた。

    (私と、同じ)

    掴んだその手は酷く冷たく私の体温を奪っていく。
    外に出ると空は厚い雲に覆われ大量の雨粒を落としていた。手を引く彼女の栗色の髪が雨を纏いながらふわりふわりと宙を舞い、クルリと私の方を振り返る。

    「ねえ、そういえばあなたの名前は?」
    「名前…」

    両親が、周りの人間が私に与えたものなど何一つなかった。もちろん、名前も。

    「ない、よ」
    「そう!なら私が付けてあげる!」

    「あなたの名前はティアン!青金石(ティアンチンシ)!」

    「青金石(ティアンチンシ)…」
    「そう、だってあなたのその瞳、宝石みたいでとっても綺麗」

    コンシーが私の目をじっと見つめて優しく目を細める。
    彼女はまたクルリと前を向いて歩き出す。揺れる白のワンピースに付いた血液がまるで真っ赤な花のように咲き誇る。

    神様

    きっとあなたが私の神様

    「あなたと出会うために私は生まれてきたんだね」

    そう言うとコンシーは小さく笑い声を漏らし私の手をギュッと掴む。
    降り続ける雨が2人の血を流して水溜りを赤く染めた。


    ーーー
    雨の描写はかきてさんのツイをお借りしました
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