足りない甘味は君で満たしていつもよりタイトな撮影に向けて節制生活を送ってる。風真が作る食事はヘルシーなのに美味しくてとても助かってる。
「でもお前、甘味が恋しいって顔してる」
「うっ……バレました?」
「バレバレ。顔に出過ぎだろ」
食事は文句無しに美味しい。けれど、甘味は別ものなのだ。仕方ないだろ。そんな会話をしてたら余計に甘いものが食べたくなる。餌を前に待てと言われたワンコみたいにうーっと唸ってしまう俺を見て風真は軽く肩をすくめた。
「まぁ、あんまり我慢し過ぎも良くないし、ちょっと待ってろよ」
そういうといそいそと何か作り始めた。ボウルに卵を割り入れる。
「カザマさ、その片手で卵を割るの難しくないの?いつもやってるケド」
「慣れだよ、慣れ」
七ツ森もやればすぐに出来るようになると思うぞなんて言いながら、卵を溶いて純ココアを入れて混ぜている。何を作るんだろと思っていると風真は意外な物を引っ張り出してきた。
「オートミール?」
「これなら罪悪感へるだろ」
コーヒーミルで砕いて粉状にしたそれをボウルに入れて、蜂蜜と少量のサラダ油を入れてまた混ぜる。
「蜂蜜も本当はもっと入れたいし、バターも使いたい所だけど、今回は我慢な」
「うん」
牛乳で伸ばした生地に謎の粉(聞いたらベーキングパウダーだと応えてくれた)を入れて混ぜた物を型に流し入れてレンジに入れる。程なくして、チョコレートケーキみたいな香りが広がって俺は思わず喉を鳴らした。
「ケーキっていうか蒸しパンな」
「うまそう」
見るからにふわふわのそれは、口にするとしっとりと濃厚にココアが薫る。
「カザマ、これ美味しい!」
「満足いただけたようでなによりです」
俺の言葉に嬉しそうに笑う風真の顔が何よりも甘くて全部満たされた気持ちになった。