夏嵐■■AM10:00■■
大きな窓に容赦なく打ち付ける雨粒と風の音で、大寿はゆるゆると瞼を開けた。この天気を見て、三ツ谷は何と言うだろう。誕生日、今年も雨だねと眉を下げるか、それとも。まだ覚醒しきっていない頭で想像して、自然と口の端が上がる。
当の三ツ谷は、台風の奏でる音で起きる気配もなく、大寿の腕の中ですやすやと眠っている。起こさないように、自分達の身体をそっと毛布で包み直す。何も身につけていない肌の上を薄手の毛布がさらりと滑る感覚が心地良かった。
三ツ谷は存外暑がりなので、夏の間は目覚めると大寿から離れてしまっていることが多い。昨晩は寝る前にひっそりこっそりエアコンの温度を20度まで下げたから、大寿の思惑通りにこの時間まで大人しく腕の中に収まっている。おかげで最高の誕生日の始まりだ。
10937