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    Hoopono41030595

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    Hoopono41030595

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    綺伝の勢いで書いた小夜×歌仙。
    少しだけ綺伝のネタバレを含みます。

    【小夜×歌仙】愛すること「いい……桜だ。見ごろというにはちょっと遅いが、散りゆく姿も美しいね……」

    歌仙は、珍しく縁側にひとり座り、桜吹雪の庭を眺めていた。
    熊本での任務が終わり数日が経過している。
    さすがに堪える任務ではあったが、へこんでばかりもいられない。次の出陣やら内番やらに精を出そうと、張り切っていたのだが、すべてほかの男士に取られてしまい、今はぼーっと庭を眺めていることしかできなかった。
    「皆が思うほど、ダメージを受けているわけではないのだが……」
    ひとり呟いてみる。
    それに、もし心にダメージを負ったとしても、それは日々を忙しく過ごしていればいつかは忘れてしまうだろう。
    そのほうがきっといい。こうして考える時間が多い程、考えなくてもいいことを考えてしまうのだから……。

    「歌仙には……その時間が必要なんだと思うよ……」
    歌仙のひとりごとに、答える声があった。歌仙は振り向くと、その小さな男士に優しい微笑みを投げかける。
    「お小夜……」
    「お茶と、お団子を持ってきました」
    手に持った盆を傍らに置き、小夜はすとんと歌仙の隣に腰を下ろした。
    「歌仙はそうやってすぐに力づくて物事を解決しようとする。記憶だって、そうやって力づくて頭の片隅に追いやろうとするのは、よくないと思います」
    小夜は、ぼそぼそと小さな声で、しかしはっきりと歌仙に告げる。
    「耳の痛いことを言うね。でも、じゃあ僕に、あの戦いの記憶をずっと胸に、痛みとして抱えたまま過ごせっていうのかい?」
    「それを……痛みだと、感じているのなら。覆い隠すよりも認識した方が、痛みは早く消えます、それに……」
    「それに……?」
    うつむく小夜に、歌仙は少しだけ首をかしげる。
    「その痛みを……僕も一緒に背負いたい……」
    小夜の言葉に歌仙は驚いたように目を見開いて、そしてそれから柔らかな笑顔を見せた。



    風が、さやさやと桜の花びらを振りまいている。
    歌仙が、その口を開いたのは小夜が持ってきた茶がぬるくなり、桜の花びらが入り込むほどの時間が経過した後だった。

    「ひとを愛するっていったい何なんだろうね……」
    ぼそりとひとりごとのようにつぶやかれた言葉に、小夜は何も答えなかった。
    「一度、心の底から愛した人を、心の底から憎むことなんてできるのだろうか……。僕にはわからないよ」
    歌仙はまっすぐ前を向いたまま、縁側に置かれた小夜の手にそっと自分の手を重ねた。
    「僕はお小夜のことが好きだ。愛しているよ。でも何かボタンの掛け違いが起こって、僕は小夜を憎むことがあったりするのだろうか……。もし、そんなことが起こるのかと思うと……僕は恐ろしくてたまらない……」
    「歌仙……」

    歌仙の目からはぱたぱたと涙が流れ落ちた。

    「あの世界の忠興さまのように……かつて愛した人を殺したいほどに憎み、心が壊れてしまいそうになるほどに……愛する……僕の中にもあのような鬼が潜んでいるのだろうか……」
    誰かを愛さなければ、あのように変容することはないのだろう。でも僕は、もうお小夜を愛してしまっているんだ。
    いつか、あのような事態になってしまうかもしれないんだ……。
    そんなことは考えたくない。だからずっと考えないようにして生きていこうと思った。
    だって考えればこうして、女々しくも涙が流れてしまうことがわかっていたから。

    それまでじっと聞いていた小夜が、ぽんぽんと膝を叩き、歌仙の肩を抱き寄せた。
    「膝……どうぞ……」
    「膝を……どうするんだい?」
    ぐすぐすと鼻をすすりながら、歌仙が問いかける。
    「膝枕……気持ちが落ち着いて疲労が回復するのだと、桑名さんから聞きました。豊前さんのお膝ほど寝心地はよくないと思うけど……」
    小夜はそういうと、歌仙の頭をぐっと抱き寄せるようにして、膝の上に置く。
    歌仙は「わぁ」と声を上げたが、そのまま横向きに寝転がるようにして小夜の膝に頭を預けた。
    「寝心地、いいですか?」
    小夜が歌仙の顔を覗き込む。
    「うん、思った以上に安らげるね……君の顔を下から見上げるというのは、なかなかない体験だ……」
    小夜は恥ずかしそうに少し笑うと、すいっと涙にぬれた歌仙の頬を拭った。
    「僕も歌仙が好き……。だから、どんなことがあっても歌仙のそばにいられるように、歌仙の気持ちが変わらないように……頑張ります」
    歌仙は小夜の膝の上で泣き笑いのような不思議な表情をした。
    「そうだね……努力は必要だ。素直に言葉で気持ちを伝えよう。そうすればきっと僕たちはいつまでも一緒にいられるはずだね」

    ありがとう……

    小夜の着物が歌仙の涙で少し濡れた。そんなことも構わず、小夜は歌仙の柔らかな髪をゆっくりと撫でつづけた。




    「おい……」

    ふいに後ろから声をかけられて、小夜はあたふたと上半身を動かした。
    膝の上では歌仙が眠っている。
    しかも声をかけてきたのは
    「大俱利伽羅さん……」
    歌仙の天敵といってもいい。こんな無防備な姿を見られたとわかれば、きっと歌仙はいい顔はしないだろう。
    それだけに、小夜は歌仙を隠そうと頑張った。が、それも小夜の小さな体では無理なことである。

    そんな様子をくみ取ってか……声をかけた大俱利伽羅はふんと小さく鼻を鳴らすと、ばさりと一枚の毛布を投げてよこした。
    「まだ夕方は冷える。こんなところで寝ては風邪をひく」
    それだけを言うと、大俱利伽羅はくるりと踵を返し、立ち去ろうとした。
    「あ、あの……大俱利伽羅さん……」
    「わかっている。別に誰にも言わないし、俺も何も見ていない」

    よほどつかれていたのか、歌仙はまったく目を覚ます様子もない。
    小夜は大俱利伽羅のその言葉にホッと胸をなでおろし、受け取った毛布をゆっくりと歌仙にかけてやった。

    「ありがとう……」

    散りゆく桜が、夕日に照らされている。
    そろそろ夕餉の支度が始まることだろう。
    小夜は、歌仙の頭を優しくなでながら、美しい庭をずーっと眺めていた。



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    Replies from the creator

    Hoopono41030595

    MOURNINGくわぶぜの日りたーんに合わせて書いていたのですが、「美しい悲劇」で全て吹き飛んだので、出しそびれた。
    キス魔の豊前くんと、キスするタイミングがわからない桑名くん。
    加減がわからず暴走する桑名くんが大好き。
    桑名江はキスがしたい【くわぶぜ】「おけーり、桑名。今日も畑楽しかったか?」
    ニコニコの笑顔で、豊前が両手を広げて胸に飛び込んでくる。
    僕はそれを、両手を広げて受け止める。
    「うん、いっぱい収穫したよぉ」
    僕が、豊前の身体を引き離すようにして声をかけると豊前は満面の笑顔で「そっか、よかったな」と言いながらその唇に優しくキスをした。


    これは大広間での出来事。


    夕食前のひととき、歓談するもの、テレビを見るものなどたくさんの刀剣男士たちが集う大広間での出来事だ。

    キスをする僕たちに、びっくりするもの。冷やかしの声を上げるもの。にこやかに微笑むものなどその反応はさまざまだが、豊前は、そんなことは全くお構いなしのようだった。

    まあ、僕も豊前のかいた胡坐の膝に、頭を乗せようとしているわけだし、僕たちが恋人同士だということを知らない男士はこの本丸にはいないわけだし、日常の後継だといわれればその通りなのだが……。
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    DOODLEラクガキ、になるんかな。これも
    診断メーカーで出た
    『おうせ本丸のくわぶぜのBL本のタイトルは「シーツの波間で待っている」で、帯のフレーズは【 身体だけでも愛して欲しかった 】です。』をちょっぴりと

    ぶぜの「存在感すごいのに、何だか希薄」という雰囲気やばい…
    目を覚ますと…背後から緩やかな寝息が聞こえて来た。
    「…………」
     そうだな。夜明けがくるにゃあまだ早い。
     ふわりとあくびをつきながら…俺はその場に起き上がる。
     腰に回っていた桑名の腕が、へたりと敷布の上に滑り落ちた。



     昨夜の事は全部覚えている。
     呑んで。酔って。

    「自分の事なのにさ、俺は自分が今…本当に在んのか。正直わかんねぇんだ」

     言葉が零れる。

    「確実なのは、俺という自覚を持つこの身体だけ。振るう本体だって…結局は主に与えられた仮初の器だから…」

     考える事すら億劫で…
     だけど気持ちかひどく逸る。

    「……布団敷いてくるから、少し休みなね?」

     ふわっと笑う桑名の声。
     いつものように優しくて……

    「大丈夫?立てるかい」
    「…………」
    「そんな風に見上げてくるだけじゃ、解んないよ」

     なぁ。この戦が終わって…
     俺たちが全て本霊のもとに帰るとして。
     だけど。
     もしも…俺の寄る辺が逸話だけであったのなら。

    「わり…確かに深酒しちまったみてぇだ」
    「うん」

     当たり前のように桑名が俺を抱き上げる。
     多分…立てないと判断してなのだろう。
     善意 1247

    nanana

    DONE見えないものが見えるようになった🏍の話。
    まだくわぶぜ付き合ってはいない。
    ミュ本丸の話ではないですが、少しだけミュの設定お借りしてます。
    雨落つ庭(くわぶぜ)1.

     ゆめうつつで聞く雨音は鈍くどこか柔らかい。初夏の朝、ましてや雨降りの朝は少し肌寒く、豊前はつい先日薄手にした毛布をしっかりと被りなおす。明けたはずの梅雨が戻ってきた、最近の天気はそんな感じだ。もっとも、やろうと思えば審神者の力で季節さえも操れるこの本丸仮想空間では四季などそんなに意味もないのかもしれない。世の中には常春の本丸もあるという。絶えることなく桜花が降り続くというのに、いつまでたっても満開の桜が咲き続けるのは一種の狂気だ、と思ってしまうのは移り行く四季を愛するここの主に影響されたせいなのかもしれない。
     水分を含んだ空気が起き抜けの眠気を加速させる。どうせ今日は非番なのだこのままもう一度眠ってしまうのも良いかもしれない。人の身を得てからというもの、二度寝と言うものは非常に気持ちが良いものだと知ってしまったのだ。その気持ちよさと走り出したい気持ちを天秤にかけて前者を選んだ。雨で外には出られないのだし、今日はもうのんびり過ごそうと布団に体を完全に預けた。
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