第43回。お題「毒」毒でも盛っていっそ自分を殺してしまえたらいい。
殺せ…殺せ…と誰かが囁いている。
誰が囁いているのかは分からないが、目の前にいる奴を殺せというわけなのか。
閉関明けで情緒が定まらないまま、夜狩の応援に来たのだが、邪祟以外の奴を殺せ…と言われても誰を殺せばいいのやら。
目の前に居るのは…金凌。
なぜ金凌を殺さなければならない。
金凌を殺して咽び泣き怨みに怒り狂う三毒聖手をみたくはないのか。
人を二度と殺したくはない。
金光瑶を刺した時と同じ過ちは繰り返したくはない。
同じ過ちを繰り返すくらいだったら毒を盛って自害した方が良い。
生きていてもなにも感じることはないのだから。
朔月で邪祟を何体も切りつけていく。
その度に邪祟から呪文に呪われた様に、殺せと言われている。
呪文を払いのけるかのように、邪祟を刻んでいく。
朔月よ…私は今まで朔月を殺める道具に使ったことはあるだろうか…。
金光瑶を朔月で殺めてしまったから、己は閉関してしまったのか。
毒薬があれば何度も自害しようと試みた。
毒薬は誰も処方してはくれなかった。
朔月…裂氷…答えを出してくれないか。
なぜ生きなければならないのか。
まだ宗主として虚勢を張らなければならないのか。
私は三毒聖手みたいに強くはない。
邪祟を切り刻んだ朔月から鉛色の血が滴り堕ちる。
これで終わりにしよう。
誰も殺したくはないし殺される姿を見たくはない。
惨劇には目を瞑る。
三毒聖手が私に毒を盛って殺してくれたらいいのにと。
ふっ…と呆れて自嘲する。
「沢蕪君、おい、しっかりしろ」
誰かが私の名を呼ぶ声がする。
あぁ…三毒聖手の声だ。
私に毒を盛って殺しにきてくれたのだね。
貴方の雲夢の次に大切な金凌は殺してないから大丈夫。
さぁ…私に毒を盛って殺してくれないか。