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    曦澄ワンドロワンライ第三十五回。お題「手紙」です。投稿遅くなってすみません。タイム30分オーバーかな。 閉関中の藍曦臣へ江晩吟が宛てた手紙です。開催ありがとうございます。
    毎回読んでいただき感謝しています。

    #曦澄ワンドロワンライ

    #曦澄ワンドロワンライ
    eiChengWangdrooWanglai.

    文に託した四文字の言葉貴方は今も金光瑶がいない狭間で生きる気力を失ったかのように生きているのですか?
    閉関中の藍曦臣に文を届けてほしいと、藍啓仁から文での依頼があった。

    「元気ですか?体調はご無事ですか?」

    そんな簡単で単調な言葉だけでは済まされない。
    藍曦臣が心の中に背負った傷は深くて誰も癒すことができない。
    との事で藍啓仁のお目にかかったのが江晩吟だった。
    元気ですか?
    貴方は今も哀しい表情をしているのですか?
    その言葉を文に託す。

    『体調はどうか?一日三食食べているのか?眠れているのか?』

    誰でも書けるようなうわべだけの単調な文字を連ねても藍曦臣の心には届かない。
    江晩吟が書きたい、藍曦臣の心の内を知りたいのはうわべだけの文字ではない。
    江晩吟は何枚もの紙を丸めては捨て、筆を持つ手が震えて、墨汁が紙に滴り落ちたらまた、丸めては捨てるを繰り返す。
    手短でもいい。
    己の思いや感情を文に表現しよう。
    これを書いたら貴方はどう思うのだろうか。

    『会いたい』

    伝蝶令ではなくて文に託す。
    たった四文字の言葉。
    貴方の姿がみたい。
    貴方の表情を知りたい。
    今の貴方は文さえも受け取ってくれなさそうだけど。
    顔を一目みるだけでいい。
    言葉は交わさなくていいからと。
    たった一言の想いを文に記して届けた。
    数日後。
    江晩吟が送った藍曦臣宛の文が雲深不知処に届く。

    窶れた表情をした藍曦臣は江晩吟からの手紙を一通めくる。

    『会いたい』

    という四文字の言葉に江晩吟はどんな意味を込めたのだろうか。
    心配してくれているのか。
    同情しているのか。
    憤慨しているのか。
    誰かからの依頼なのか。
    意図は分からない。
    藍曦臣は大量に送られてきても読み返すことなく破り捨ててきて誰にも返事を送らなかった。
    江晩吟にだけ文を返す。

    『ご都合がつく日に雲深不知処に来てください』

    という言葉を添えて返信する。
    どんな理由であれ。

    『会いたい』

    という言葉に希望を持つことができた。
    一人ではないと感じることができた。
    まだ自分を必要としてくれる人がいることに、藍曦臣の目から一筋の涙が流れた。
    どの文もありきたりの内容で、侮辱した内容もあった。
    理由も知らずに文の内容は、様態は大丈夫なのか?なぜ金光瑶を刺した?等
    胸に突き刺さる言葉ばかりの中に、会いたい。
    という言葉で江晩吟の優しさが表現されていた。
    なぜ会いたいなのかはわからないけれど。
    江晩吟なりの不器用な優しさ。
    貴方に会うためにもう一度、生きてみようか。
    また、命がすり減る日々もあるとは思うけど。
    傷付いた心の傷は簡単には癒えないけれど。
    一日一日を、日常を取り戻しながら生きてみようかと。
    貴方に会える日を励みにして一日を生きてみようと思います。

    ***

    『会いたい』

    江晩吟は自分の執務が終わってから雲深不知処を訪れた。
    藍曦臣は四文字の言葉を受け入れてくれた。
    どんな想いで受け入れてくれたのか。
    寒室の部屋に伺う前に藍啓仁と挨拶を交わし、藍曦臣に会いに行く。

    「沢蕪君、会いに来た」
    「江宗主、 お待ち致しておりました。ご足労おかけしてすみません」

    寒室の襖を開けると、薄暗い部屋の中に微笑みを失った、藍曦臣の姿。
    これが、藍曦臣の素顔で微笑みなど社交辞令に過ぎない。

    「会いたかったのは本当の貴方の姿だ。心の傷を癒すのには時間がかかる。だから、会いたいという言葉だけを文に書いた」
    「…江宗主…」

    藍曦臣は涙を流しては、江晩吟の身に纏った服に片手でしがみついては溢れ出てくる涙を止めることができなかった。
    一人で抱え込んで辛かった。
    誰かの傍で弱音を吐き出したかった。
    江晩吟が会いに来てくれて、胸のつまりのしこりが降りた気がした。

    「思い切り泣け。胸なら貸してやる」

    会いたいという気持ちは涙に変わり、哀しさからようやく会えた嬉し涙へと変わっていった。
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    PROGRESS続長編曦澄5
    あなたに言えないことがある
     机上に広げられているのは文である。藤色の料紙に麗しい手跡が映える。
     江澄はその文をひっくり返し、また表に返す。
     何度見ても、藍曦臣からの文である。
     ——正月が明けたら、忙しくなる前に、一度そちらにうかがいます。あなたがお忙しいようなら半刻でもかまいません。一目、お会いしたい。
     江澄はもう一度文を伏せた。手を組んで額を乗せる。頭が痛い。
     会いたい、とは思う。嬉しくもある。それと同じだけ、会いたくない。
     会ったら言わねばならない。先日の言葉を撤回して、謝罪をして、そうしたら。
     きっと二度と会えなくなる。
     江澄にはそれが正しい道筋に見えた。誰だって、自分を騙した人物には会いたくないに決まっている。
     江澄は袷のあたりをぎゅっとつかんだ。
     痛かった。痛くて今にも血が吹き出してきそうだ。
     だが、現実に鮮血はなく、江澄の目の前には文がある。
     いっそ、書いてしまおうか。いや、文に書いてはそれこそ二度と会えなくなる。もう一度くらいは会いたい。
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     まだ、日は 1610